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カンボジアとベトナムで路線バスに乗ってみる(カンボジア・ベトナム徘徊記④)

 海外旅行に行くと問題になるのが現地での移動手段である。これは日本でもそうだがタクシーというのがぼったくりの温床で信用できないのはどこの国に行っても変わらない。ドバイのタクシーはきちんとしていたが、それ以外の国でまともなタクシーというのに遭遇するのはとても難しいと思う。
日本のタクシーも信用できなくて、那覇で乗ったタクシーは遠回りした挙句に「今カード使えないんっすよー」などと言ってきた。その場で警察を呼んでやろうかと思ったが時間がもったいないのでやめておいて、その代わりに1500円くらいの会計に1万円札を出して「今これしかないから。お釣りはきちんと全部出してね」と言って降りてきた。あとから考えたらクレジットカードの規約違反としてカード会社にチクるのが効果的だったなと思うのだが、日本のタクシーもこのようにひどい有様である。
 ただ、特に東南アジアの国ではこの状況は改善しつつあるのが現状で、その切り札となったのがライドシェアである。日本ではタクシー利権によって骨抜きにされてしまったライドシェアだが、タイ・マレーシア・カンボジア・ベトナムなどでは非常に信頼性の高い交通手段として重宝している。アプリから車を呼んだら30秒で車が決まり2分後にはもう車に乗り込んでいるという圧倒的な利便性と、車内でお金のやり取りをする必要がないという安全性から東南アジア旅行の必需品と言っていいのがGrabである。日本にもタクシーを呼べるGoなるゴミアプリ使い勝手の悪いアプリがあるが、その利便性は比べるべくもない。路面電車と新幹線くらい違うものである。
 ちなみにカンボジアのGrabはトゥクトゥクを呼べる代わりにバイクを呼べず、ベトナムとタイのGrabはトゥクトゥクを呼べない代わりにバイクを呼べるようになっている。マレーシアは車しか乗っていないのでよく知らないのだが。特にカンボジアのトゥクトゥクは料金が車の半分くらいしかかからないので重宝した。バイクはベトナムで試してみたが、あまりオススメはしない。低い目線で車の間を縫うように走って行くのでこれはこれで面白かったし私は好きだが、万人にオススメできるものではないと思う。
ただ、いつもGrabではつまらないのでたまには路線バスに乗ってみることにしようと思い立ち、カンボジアとベトナムで路線バスに乗ってみた。これはその記録である。結論から先に言っておけば、IT技術のおかげでバスに乗るハードルはほとんどないも同然であった。

ホーチミンの渋滞もなかなかに激しい。

路線バス乗車記:カンボジア編

 まずはカンボジアの路線バスである。プノンペン市内はGrabが外国人にとっては一番使い勝手の良い移動手段だが、それ以外にあまり使いやすい公共交通は発達していない。バンコクやクアラルンプール、シンガポールのようにメトロがあるわけではないので公共交通はGrabか路線バスか、ということになってしまう。ただ、路線バスの運転手は英語を理解しないことがほとんどであるし、行き先表示もクメール語なので外国人には全くもって理解不能であり、外国人観光客からは敬遠される乗り物になっているのが現状である。
 と思っていたら、City Busというありがたいアプリを発見することができた。このアプリは、どの系統のバスがどこを通るのかという情報とバスの位置情報が表示されるようになっている。これとGoogleマップを突き合わせて、行きたいところの最寄りのバス停がどこかを調べればバスでの移動ができるというわけだ。シンガポールのSingabusと似たようなものである。

 バス停でバスを待っていると、大量の車とトゥクトゥクに交じってバスが走ってくる。系統の番号が付いているので自分が乗りたい番号のバスが来たら手を挙げればいいだけだ。おそらく手を挙げないと通過すると思う。日本のバス運転手のように気が利く運転手ではないので、手を挙げるというよりは手を振るくらいのことをしないと止まらないかもしれない。ま、逃したところで後続がすぐに来るので大した心配はいらない。
 乗車料金は1回1500リエルである。1リエルが0.036円くらいなので54円ほどで乗れる計算だ。料金は運転手横の料金箱に入れるシステムで、お釣りは出ないので注意が必要である。リエルがなければ米ドルでも払えるが、そうすると1ドル入れることになるので3倍近い運賃を払うことになってしまう。リエルはその辺の店で買い物したらお釣りとして渡されるので、バスに乗る前に1500リエルゲットしておいた方が良い。ただ、500リエル札というのを滞在中に一度も見なかったので、2000リエル払うつもりでいるのが一番だと思う。2000リエル払ったところで72円なので、正直言ってどうでもいい価格差である。
 ドアは一応ついているが、ドアが閉まるより前にバスが動き出すし、バスが止まるより前にドアが開く。慣れればどうということはないが、発進も乱暴なので乗り込んだら速やかにお金を料金箱に投入し、空いている椅子に座った方が良い。運転手の態度はお世辞にもいいとは言えず、TikTokを見て爆笑しながら運転していたりいなかったりする。これに関してはそういうものだと思ってそれを楽しむのが良いと思う。私が乗ったバスの運転手はまさにこれで、バス全体に響く笑い声を上げながら運転していた。なかなか面白い人である。
 乗車したら地図を見ながら現在地を把握し、目的地のバス停が近づいたらブザーを押して知らせるようになっている。この辺は日本と変わらない。ドアは前後についているがどちらから乗ってもどちらから降りてもいいようで、近い方のドアを開けてくれた。降りるときにお礼を言うのがカンボジア流らしい。

真面目に運転しているようだが実は…。

路線バス乗車記:ベトナム編

 さて、次はベトナムでの路線バス乗車記である。CityBusと似たようなvBusというアプリがあるのでそれを使えば簡単だ。vBusはCityBusよりも進んでいて、出発地と目的地を入れると徒歩を含めたルート検索をすることができる。どのバス停から何番のバスに乗る、というだけではなくて料金やそのバスが何分ごとに来るかまで表示されているし、現在地からそのバス停までの行き方も位置情報と共に地図上に表示されるのでとても重宝した。このアプリを使えないなら家から出ない方が良い、というくらいには使い勝手が良いアプリである。ただ、vBusが対応しているのはホーチミンとハノイだけで、ダナンはDanaBusという別のアプリが展開されているのだが、DanaBusの方はあまり使い勝手が良くない。

 バス停でバスを待っていると遠くからバスがやってくるので、手を挙げて止めるだけだ。カンボジアと同じである。ただ、料金の払い方は違っていてベトナムのバスには車掌が乗っており、お釣りがきちんと出てくるようになっている。バスに乗り込んで椅子に座ると車掌がやってくるので、車掌に運賃を払ってきっぷを受け取るという仕組みである。料金は路線によって違っていて、5000ドンだったり6000ドンだったりする。外国人がぼったくられるという話も聞いていたのだが、そんなことは全くなかった。ベトナム人は日本人と似た真面目で勤勉な性格で、外国人だからぼったくっても気づかないだろう、という考え方はしないようだ。カンボジアの「外国人から取れるものは取ってやろう」という精神とは対照的である。もしアプリで事前に調べた金額と違ったらその時に聞けばいいと思う。ただし、車掌も運転手も英語はほとんど通じない。

この運転台は土足禁止らしく、車掌は必ず靴を脱いでから上がっていた。

 運転マナーはベトナムの方が明らかに良い。もちろん交通量は多いしバイクはいつもチョロチョロ走り回っているのだが、無理な運転はあまり見なかったし、運転手がTikTokを見ながら運転しているということもなかった。発進も停車も丁寧(もちろんドアが閉まる前に発車するのだが)で、安心安全である。特に子どもや老人が乗ってきた時には着席まで待ってあげる運転手が多く、丁寧な印象だった。
 目的地が近づいたらブザーを鳴らして知らせるというのも変わらない。バスが止まる前にドアが開くのもカンボジアと同じだ。慣れればバスが止まる前に降りることもできるようになった。こうなるとバス停でバスが止まることはなく、減速して通過しているようなものである。インドの列車も駅で止まることはなく減速するだけだと聞いたことがあるが、それと同じようなものだ。

次回予告・ベトナム統一鉄道の旅

 そんなわけで私はプノンペンでもホーチミンでもバスを乗り回していたのだが、アプリのおかげで迷わず移動することができた。もちろん、バスは待ち時間も歩く時間もあるので決して短時間で移動をできる移動手段ではないし、Grabを使ったところで大した金額ではないのだが、私は別に急いでいるわけではないのでちょうどいいのである。言葉は通じなくても意外と何とかなるし、乗り間違えても歩けばいいだけなのだから、海外旅行の時には積極的に路線バスを使ってみるというのも面白いかもしれない。どうもハノイ市内からノイバイ国際空港までも路線バスで行けるらしいので、帰国の際には使ってみようかと思っている。

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