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『アメリカ暮らしの素人投資-4: アメリカの年金口座について』

人生で大きな支出は何か?と聞かれたら何を思うでしょうか。3大支出は

「住宅資金教育資金・老後資金

です。この3つが大きいのはアメリカでもおんなじ。(ただし、アメリカの場合は、自分自身の学生ローンの返金や医療費も高額です。)

一般的に、住宅購入の頭金は購入価格の2割が目安と言われます。近い将来購入する予定ならば、マネーマーケットmoney market、2、3年後後ならば短期債ファンドshort-term bond fund、10年以上先ならば株と債券を組み合わせたバランス型ファンドbalanced mix of stocks and bondsに投資すべし、というのがMutual Funds for dummiesの著者のEric Tyson氏の意見。

アメリカの大学の授業料の高騰ぶりは激しく、大学費用を出せるのかと頭を痛める親も多いかと思います。私もその一人です。ですが、ここで大切なのは、

子供の教育資金よりも自分の老後資金を優先せよ!

ということ。なぜなら、まず学生ローンは組めるけど、老後資金のためのローンは組めないこと。次に、老後資金をためることは連邦税と州税の節税効果があること。さらに、子供は大学進学にあたり、奨学金や補助金を受け取れる可能性がありますが、親の資産が大きいと学資援助の補助は不要とみなされる可能性が高くなります。ですが、親の年金口座Retirement account内の資産は、補助金の必要性を測る上で資産の対象外とみなされることが多いからです。

もちろん親として、全額は無理でもある程度の授業料を負担してあげたいとは思うもの。そのためには州税の節税となる529プランをまずは使うべしと前述のTyson氏は言っています。(他にもオプションはありますが、まず何から始めるかといえば、529ということでしょう。)


というわけで、老後資金について!

勝たなくても負けないように投資するには

(1)分散投資を
(2)長期にわたって
(3)低コストで行う

ことが大切と「アメリカ暮らしの素人投資-2」で書きました。

長期的に投資をする上で、節税効果のある年金口座を活用することは非常に有効です。少額でもとにかく若い時から(あるいは若くなくても今すぐ)始めるにこしたことはありません。なぜなら長期になればなるほど「複利効果」が効いてくるからです。

利息には単利と複利があります。

単利:利息を元本には組み入れず、元本部分に対してのみ利息がつく。元本は預けた当初の金額から増えない
複利:預金から得られた利息を元本に組み入れて、利息がつく。そのため利息が出るたびに元本が増えていく

「複利効果」とは、利息を再び投資することで、利息部分が更なる利息を生み膨らんでいく効果のことです。長期になればなるほど、お金が働いて稼いでくれるようになります。単利に比べ、複利はグラフの右に行くと(つまり投資期間が長くなればなるほど)勾配の傾きが上がっていくのが上に貼り付けたグラフからもわかりますね!
 
税の控除があれば、税金として持っていかれる金額分も投資に回すことができます。

では、どのタイプの年金口座を使うべきか?

アメリカでメジャーなものは
401(k)(確定拠出年金)
IRA(Individual Retirement Account 個人退職口座)

です。

まずは401(k)について。

401(k)は、企業が福利厚生の一環として提供する制度です。
毎回給料から一定額が天引きされ、401(k)口座に振り込まれます(この積み立てをすることを「拠出する」contributeと言います)。積み立てる際、連邦と州から所得税の控除があります。口座内でその資産を運用し、リタイヤ時にはお金を引き出せるようになります。  

引き出しは59才半から可能になりますが、72才になったら(リタイヤしていない限り)引き出しを開始しなければなりません。また引き出し時に所得税がかかります。           

2021年の401(k)拠出金の上限額は$19,500(ただし50歳以上の場合は、$26,000)です。

401(k)の場合、多くの企業において、拠出した金額に対し一定額を積み増ししてくれます。この積み増しはマッチングmatchingと呼ばれ、会社が従業員に「ただでくれるお金」です。いくらまでマッチングしてくれるかはその会社の制度によりけりですが、それがいくらであれ、そのマッチング額が最大になるまで401(k)に拠出するのが最もお得となります。

ただし、会社が運用する制度なので、会社指定の証券会社を使わねばならず、かつ投資できる金融商品に限りがあります。「会社がいくつかファンドをご用意しましたので、そのなかから選んでね」という形になります。

次に、IRA(Individual Retirement Account)について。

IRAは勤労収入(や離婚相手からの扶養手当)があれば、銀行や証券会社などの金融機関に個人で口座を開くことができます。専業主婦(夫)でも、配偶者用IRAの口座を開くことが可能。

IRAには、主に
Traditional IRA
Roth IRA

と二種類あります。2021年のIRA拠出金の上限額は$6,000ドル(ただし50歳以上の場合は$7,000)です。

Traditional IRA: 積み立てる際、所得税の控除があります。運用は非課税。ただし引き出すときに税金がかかります。401(k)など勤務先の年金プランに参加しているかどうか、また年収によって、所得税の控除額が変わってきます。 72才になったら引き出しを開始しなければなりません。

Roth IRA: 積み立てる際、所得税の控除はありません。運用は非課税。ただし引き出すときには無税です。年収によってRoth IRAの拠出金の上限額が変わります。高所得者は利用できません。引き出しに年齢制限がありません。

一般的なお勤め人の場合、勤労所得があって拠出している時よりも、リタイヤした後のほうが年収が下がります。つまりリタイヤ後のほうが課税額が下がることになります。こういった場合は、Traditional IRAに拠出した時の節税額が、Roth IRAで引き出す時の節税額よりも多くなりますので、Traditional IRAに積み立てたほうが有利と言われます。

またIRAは、401(k)に比べ投資先の選択肢が多くなります。


では401(k)とIRAのどちらを使うべきか?

まず、会社が401(k)制度を持ち、拠出金にマッチングをしてくれる場合は、マッチング額を最大限もらえるように401(k)を活用することが大切です。「マッチング額=会社がただでくれるお金」だからです。

マッチング額を超えた拠出金については、投資したい金融商品次第です。401(k)で投資したい金融商品が見つかれば、拠出金の上限までするもよし。見つからなければIRAで探せばよいと思います。その際、投資で発生する手数料に注意を払うことをお忘れなく。また、どう投資すべきかは、おいおい書いていきます。

また課税条件などは、時々変更がはいります。詳細はIRS(Internal Revenue Serviceアメリカ合衆国内国歳入庁)のウェブページでご確認ください。


<英語メモ>
単利: simple interest
複利: compound interest
積み立てる・拠出する: contribute
積み立て金・拠出金: contribution

控除する(例:所得控除とは課税対象となる所得金額を減らすこと): deduct
控除(額): deduction

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