見出し画像

【Next Step】カスタマーマーケティングmeetup vol.8 プロダクト起点のカスタマーマーケティング

 皆さんこんにちは、Sansanの山田です。私の興味のあるSaaSの分野にカスタマーマーケティングがあり、カスタマーマーケティングmeetupというグループにたまにお邪魔させて頂いています。このグループのミッションは「カスタマーマーケティングの有効性の追求」ですが、このメインミッションの実現以外にも、カスタマーマーケティングの周辺領域において興味を持ったテーマを掘り下げることも行っています。

 活動内容としては登壇ベースのイベント(=勉強会)になることが多いのですが、4月22日(木)に8回目のmeetupをリモートで開始しました。下はそのイベント登録用のページです。

 今回のmeetupのテーマは「プロダクト起点のカスタマーマーケティング」です。カスタマーマーケティングは「カスタマーサクセスに資するマーケティング活動」のことです。一般認知としては既存顧客に対するマーケティング活動と思われているフシもありますが、カスタマーサクセスmeetupにおいてその定義をリライトしており、以後はその定義に基づいて本記事を読み進めていただければと思います。尚、この定義のリライトに関しては『カスタマーマーケティング、その本質と実践』をご参照ください。

米国でのProduct-led Growthの台頭

 そもそのなぜこのテーマでmeetupを開催するに至ったかというと、それは「米国でのProduct-led Growthの台頭」がその原因です。Product-led Growth(以降、PLG)とは、プロダクトを起点として(主に)SaaSの事業成長を促す方法で、2021年現在の米国SaaSで有効な手法の一つとされています。PLGについてはあまり日本語の情報ソースがないのですが、私が書いたものも含めて以下の2つが参考になります。

【解説】SaaSの新戦略。Product-Led Growthの全貌

兆速成長するスタートアップの凄い秘密:Product-Led Growthという名の成長戦略

 PLGは顧客獲得を含め、これまでプロダクトの外で行っていたさまざまな活動をプロダクトの中で行います。プロダクトを事業の成長ドライバーと位置づけ、ユーザーとプロダクト経由で多くのコミュニケーションを行うことが最大の特徴です。この思想を中心とした上でマーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどのビジネス活動もプロダクト中心に最適化されます。

 PLGはサンフランシスコでは有効性が立証されている成長手法の一つですが、日本での知名度は低く、一部のアーリーアダプタのみが活発に議論しています。実は私もその一人なのですが、あるときcmktのメンバーから「日本ではまだPLGの事例が出てこないけど、このテーマで議論できないかな?」というアイデアが出てきました。

 私が上記の記事を書いたのが2019年5月5日ですが、それから2年あまりが経った今でも、PLGで事業成長を加速させている事例は聞いたことがありません。

もしかしてあるかもしれませんが、少なくとも私の耳に入る程度には流布していません。

 日本でSaaSビジネスが活気づいてきたのは2016年ぐらいからだと記憶していますが、それまで主に活用されてきた成長戦略はPLGと対比して『Sales-led Growth(以降、SLG)』と言われます。日本でビックネームとなった多くのSaaSは主にSLGによって成長を遂げており、それとは明らかに異質なPLGを取り入れているベンダーはありません。むしろそれ以降に立ち上がったスタートアップ企業のほうが、過去のしがらみに囚われずにPLGを導入しやすいのですが、そのようなSaaSベンダーは未だ成長の途上にあり、明確な成功事例にまでは達していないのかもしれません。

カスタマーマーケティングにおけるPLG

 cmktでPLGをテーマに扱うことになったそもそもの発端はメンバーからの素朴な疑問でしたが、私達は「cmktでこれを考える意味」についても議論しました。

 上述したとおり、cmktの存在意義はカスタマーマーケティングの有効性を追い求めることであり、そしてカスタマーマーケティングはカスタマーサクセスマーケティングです。「顧客のサクセスを導くマーケティング活動とは何なのか?」この命題について向き合ったとき、PLGとカスタマーマーケティングはその手法に明確な違い(プロダクトドリブンかどうか)がありながらも、その根底に存在する思想にはさまざなま共通点があることにも気づきました。例えば以下などです。

- 顧客群を新規・既存で分離せず、全体のライフサイクルを通してサクセスに近づけること

- スケール感を求め、それを実現するために自動化を推進すること

- プロダクトの価値を最速で実感させること

- サービスにバイラリティの要素を組み込むこと

 カスタマーマーケティングとPLGは本質的に異なるものですが、それらを構成する要素をボトムアップで熟視した時、それらはカスタマーマーケティングの裾野を広げる活動に資すると判断し、私たちはこのテーマをcmktの分科会で取り上げることに決めました。そしてPLGをテーマにした勉強会の開催を模索しましたが、日本ではまだPLGを実践しているSaaSベンダーが少ないため、お手本となる事例を広く共有するには至らないという結論に達しました。

 しかしながら、「PLGそのものの事例は共有できなくとも、PLGを構成するさまざまな要素について前衛的な取り組みをしているSaaSベンダーは存在するので、まずはそれらのベンダーに話をしてもらい、PLGの活性化に繋げるための礎としよう」という話になりました。その構成要素とは以下です。

 1. トライアルモデルによる顧客獲得戦略

 2. インプロダクトコミュニケーション

 3. カスタマーサクセスによる最速の価値実感

 もちろんPLGを構成する要素は他にもありますが、比較的日本のSaaSベンダーに馴染みが深いこの3つを深堀りすることにしました。ただし、(時間の関係もあり)2.を上手く行っているSaaSベンダーを探し当てることができなかったので、今回のmeetupでは1,3のみを取り上げることにしました。

meetupの開催後に感じたこと

 同イベントで発表・議論された内容は下記にまとまっていますので、興味のある方は後ほどご参照ください。

 発表頂いたのは私の所属するSansanとLINE WORKS様の事例でした。LIVE配信を視聴された人の反応はなかなかのものでしたが、正直なところPLGの議論を活発化するきっかけになれたかというと疑問は残ります。

 イベント企画前から国内でPLGを実践している企業が少ないことは認識していましたが、国内におけるPLGの認知拡大・普及という観点でも「まだまだこれからだな、、」という感覚を持ちました。もちろん今回のmeetupに参加してくださった方々の多くはSaaS関係者であり、meetupのテーマ感に興味を持たれたからこそご参加くださったのだと思いますが、情報の発信側も受け手も、今以上に多くを学ばなければならないことを痛感しました。

ちなみに、今回の登壇者2名の発表内容はPLGを深堀りするまでには至りませんでしたが、
その発表内容はかなりの前衛性があり、インサイトも多かったです。

これからPLGの話をしよう

 今回のmeetupは有意義ではありましたが、本当の始まりはここからです。私たちカスタマーマーケティングmeetupは今回のイベントを振り返って、国内で芽生え始めたPLGの興味・関心をより大きなものへと温める努力をすることにしました。具体的には、国内でPLGに資する活動を行っている方々に同meetupに参加していただき、共に国内のPLG活動の解像度をクリアにしていきたいと思っています。そしてそのナレッジをSaaS業界全体にシェアし、国内SaaSの底上げへにつなげればと考えています。

 この記事を見られた方で、「ウチもPLGにトライしている」「実はこんな成果が出た」という事例をお持ちの方はcmktのfecebookグループに参加いただき、それについてシェアいただけないでしょうか。皆さんからの声を多く集め、第2回のPLGディスカッションに繋げられたらと考えています。それ以外にも「PLGについてこんな情報を持っている」という方も大歓迎です

画像1

 日本でのPLG認知はまだ始まったばかりです。私はカスタマーサクセスとSaaSに従事する人間として、このプラクティスを(純粋な興味から)是非深堀りしたいと考えています。そして皆さんとともに日本のSaaS業界の発見に微力ながら貢献できればと思っています。「私もやってみたい!」とお考えの方は、是非一緒に第2回のPLGディスカッションを一緒に作り上げて行きましょう。

議論に参加したい方

PLGの議論に参加したい方は以下の手順でコミュニティにジョインください。どなたでもお気軽にどうぞ。

1. cmktのfecebookグループに参加

2. 同グループに自己紹介するとともに、本記事を見て興味を持ったと宣言

3. 自社事例をお持ちの方はその旨を、単に興味があって議論されたい場合はその旨を説明


カスタマーサクセス 山田ひさのり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?