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もう甲子園未勝利とはいわせない ~2024年 霞ケ浦VS智辯和歌山~

霞ケ浦高校が悲願の初勝利。
まさに快挙…!

智辯和歌山も二連続本塁打で追いつくなど
さすがの意地と打力、素晴らしいチームでした。
「これはもう負ける…?」と何度も
私も画面越しに観戦しながら思っていましたが、
すべてをはねのけ勝利を手にした…。

本記事では2024年8月13日に行われた
「霞ケ浦VS智辯和歌山戦」を振り返ります。
茨城県代表VS和歌山県代表。

何と言っても特筆すべきは、
霞ケ浦の先発投手、市村才樹(2年)投手の
「すっごい山なりのスローカーブ」
「打ってもなかなか前に飛ばない」
という
緩急自在のピッチングではないでしょうか。

80キロ台のゆる~いスローカーブです。
ストレートでも120キロ台。
X(旧Twitter)上では
『令和の星野伸之』という表現が見られた。

星野伸之(ほしののぶゆき)さんは
北海道旭川市出身の技巧派左腕です。
非常に細身、最速130キロのストレート、
80キロ台のスローカーブや、フォークなどで
プロ通算176勝を挙げた方。
阪急(オリックス)と阪神で活躍しました。

◆梨田昌孝さん
「あまりにも速く感じて金縛りのようになった」
◆初芝清さん
「伊良部より星野さんのほうが速い」
◆清原和博さん
「星野さんのストレートが一番打ちにくい」
◆桑田真澄さん
「ストレートがめちゃくちゃ速く感じる」

並みいる打者にその緩急自在の
ピッチングを評価された投手でした。
おそらく智辯和歌山の打者たちも
同じように感じたのではないか?


すご~く緩~いボールの後のストレートは
120キロ台でも速く感じる。
そう、投球は緩急が大事!

事実、あの強打の智辯和歌山打線が
何と「7回まで0点」に抑えられていた。
強打者を前に、
飄々とポーカーフェイスを浮かべて
ドロンと落ちるカーブを淡々と投げる。
しかも、あの大甲子園のマウンドで…。

実は私は茨城県予選ですでに
彼のピッチングを知っていましたので、
「市村投手は甲子園でも市村投手だ」
何だか嬉しくなってしまいました。

…ただ、智辯和歌山にはアレがあります。
そう、魔曲「ジョックロック」

これは高校野球ファンにはお馴染みで
実況のアナウンサーも口に出すほど有名。
この応援曲が甲子園に流れると
智辯和歌山が逆転する!という代物。

事実、8回、市村投手がつかまる。

すでに100球近く投げていました。
なんと『二者連続ホームラン』を被弾!
一気に3-3の同点に
追いつかれてしまったのです。

あの低反発バットで。あの緩~い球を。
二発とも同じような弾道でレフトスタンドに
パッカーンと持っていかれた。
智辯和歌山の鬱憤も晴れた。

「…ああ、これで智辯和歌山ペースだ。
調子が良すぎたから継投の時機を逸した。
『強豪相手に頑張ったね』
というよくあるパターンでは…?」

私は大騒ぎの智辯ベンチを見ながら
暗澹としてしまいました。

…茨城県代表で有名な高校と言えば
やはり『常総学院』だと思います。
昔は、故木内幸男監督の采配光り、
『木内マジック』とも呼ばれた。

取手二高の監督時代には
桑田・清原のPL学園を粉砕。
かの有名なダルビッシュ投手も
木内マジックの前に敗れた。

◆『夏の甲子園で勝てるのは常総学院!』
◆『他の高校が出ても遠足になるだけ!』

そう酷評された時代も多かったんですね。
事実、2023年に土浦日大が
ベスト4に躍進するまでは、なかなか
茨城県代表は上位まで勝ち進めなかった。

霞ケ浦も同様でした。
そもそも、とにかく茨城県予選を
突破するのが難しい。
どこかの高校に戦力が集中せず、
強豪が本当にたくさんいるんですよ。

常総学院、土浦日大、藤代、明秀日立、
水戸商、鹿島学園、常磐大附属、つくば秀英…。

暑すぎる中で強敵相手に勝ち抜いて、
疲労困憊、甲子園ではなかなか結果が
出せないのがこれまでのパターンでした。

特に霞ケ浦は通称「シルバーコレクター」
県予選での準優勝が多かった。
2023年も9回まで3対0で勝っていたのに
土浦日大に逆転され、県予選で準優勝。
夏の甲子園がするりと手の中から逃げた。

この一年間、悔しい思いで
ナインも高橋監督も過ごしてきたと思います。
第三野球部でいう『悲運の黒潮商業』…。

甲子園に出たことはあるが、未勝利だった。

…その悔しさ、昨年の先輩たちの無念、
いや、これまで積み重なってきた
「怨念」とも言うべき執念が、
市村投手の次の投手に乗り移ります。

眞仲唯歩(3年)投手。

「後輩が打たれたなら、
先輩が抑えないといけない」

彼は、気迫のピッチングを続けた。
考えてもみてください。
魔曲ジョックロック、強打の智辯和歌山。
市村投手の投球だからこそ押さえてきた。
でも、二本塁打で流れが完全に変わった。
これは、ふつうなら逆転される空気です。

それを見事に切り抜ける。抑える!

9回裏と10回裏は圧巻でした。
後攻めの智辯は1点取ればサヨナラ勝利。
圧倒的に有利なんです。
特に10回裏はタイブレーク、
「無死一二塁」から始まります。
送りバントと犠牲フライ、
またはスクイズ成功で試合終了…。

それが眞仲投手、送りバントをさせない!
スリーバント失敗に追い込む。
私、思わず声が出てしまいました。
目頭も熱くなった。

「予選での水戸商の応援も凄かったので」と、
激闘の県予選の経験を活かし、
相手の魔曲「ジョックロック」にも、
吞み込まれなかったのです。


ベンチの様子も、何度も映し出された。
先ほど二本塁打を被弾した
市村投手の顔も映し出されていました。
「先輩、頼みます、お願いします…」
という心が痛いほど分かりました。

11回表。ついに均衡が破れる。

2点を追加、5対3。
打ったのは二人の対照的な投手を
見事過ぎるほどリードしてきた
片見優太朗(2年)捕手でした。
そして眞仲投手、自らも打った…!

11回裏。1点は失ったものの、
彼はその1点だけに失点を抑えた。
5対4。薄氷の勝利。
霞ケ浦が欲しかった甲子園初勝利…!
真っ先にベンチから
くしゃくしゃの笑顔で飛び出したのは、
そう、あのポーカーフェイス、
先発した市村投手なのでした。


最後にまとめます。

本記事では、2024年8月13日の第三試合、
「霞ケ浦VS智辯和歌山」の様子を
私の備忘も込めて書いてみました。
素晴らしい試合を観ました。
ありがとうございます。

熱中症で倒れた選手がいたり、
エラーも多かったりしたのも
気になるところですので、
次戦でもコンディションを整えて
奮戦していただければ、と思います。

霞ケ浦の高橋監督の言葉で締めます。

「まさかこんな試合が
できると思ってなくて…。
本当に勝っちゃうんだ、と思いました」

飾らない本音だったと思います。
私も同感でした。
両チームとも本当にお疲れさまでした!!

※智辯和歌山(智弁学園も使う)の
ジョックロックについてはこちらの記事を↓
『魔曲』

※市村投手は5日前から
ジョックロックを聴きながら寝て
対策をしていたそうです↓

※『もうシルバーコレクターとは言わせない』
2024年県予選優勝後に霞ケ浦について書いた
こちらの記事もぜひどうぞ↓

前回の2023年は、いまロッテで活躍している
木村優人投手を中心としたチームで
県予選準優勝でした。
2024年のチームは、その素晴らしいエースが抜けて
キャプテンも何度か変わるなど
決して最初から強いチームではなかった。
それが、徐々に一致団結してカバーし合い
チーム力で勝つチーム
へと変わった…。

ぜひ次の霞ケ浦高校の戦いぶりにも
ご注目いただけましたら幸いです。

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