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チコちゃんと既知ちゃんと未知ちゃん ~アウトプット戦略~

1、チコちゃん

NHKの有名番組、「チコちゃんに叱られる」

あれ、面白いですよね。「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られるのがお約束。ハマる人も続出していると聞きます↓。

このラリー遠田さんの記事では、ハマる3つの理由が挙げられています。

1、番組の代名詞になるような「キャッチーな演出」がある。
2、番組全体が民放っぽい軽いノリで作られている。
3、そもそものテーマ設定が面白い

詳しくは記事を読んで頂くとして、この記事では、最後にこのようにまとめられていました。引用します(太字引用者)↓。

私たちは生意気盛りのチコちゃんに導かれて、新しい知の扉を開くのではなく、すぐそこにある日常を再発見するのです。彼女は、雑事に追われてあくせくしないで目の前にあるものを見つめ直す大切さを私たちに教えてくれているのかもしれません。

今回の記事は、この「すぐそこにある日常を再発見」することについて、考えてみました。

2、既知ちゃんと未知ちゃん

私たちは、身の回りのモノ、コト、ヒトのことを「知って」います。大人になればなるほど、色々なことが「分かって」います。

しかし、チコちゃんに言われるまでもなく、その「知っている」「分かっている」ことが、「知ったつもりになっている」「分かっているつもりになっている」ことなのも、うすうす気づいています。そこをごまかさず、ズバリ指摘するからこそ、チコちゃんも人気なのかもしれません。

すでに知っていることを、「既知」(きち)と呼びます。
これに対し、まだ知らないことを「未知」(みち)と呼びます。

この「既知」と「未知」をキーワードとして、デザインを通して、私たちにわかりやすく教えてくれる番組がありました。

NHKの「デザインの梅干」です↓。

番組の進行役は佐藤卓さん。「デザインあ」という子ども向けの教育番組にもかかわり、有名なところでは、あの「ロッテのガム」や「おいしい牛乳」などのデザインを手がけたグラフィックデザイナーさんです↓。

番組の第1回目では、バーバーポール(理髪店の目印のサイン)などを取り上げて、日常に溶け込んでいる「既知」のものについて「未知」であることを説明し、日常生活のいたるところにデザインやデザインの考え方が存在することに気付かせてくれました。

番組内の佐藤卓さんの言葉より引用します(太字引用者)↓。

人間は、人間特有の知覚世界をもって生活していて、その主体として発想し行動している。言うなれば、あらゆる生き物はみな、独自の環世界を作りながら、その中に浸って生きている。主観である環世界に浸り込んでしまわず、そこから脱出できれば、新たな発想をつかむプロセスを手に入れることが出来ることに気づかせてくれる。

まあ、そうですよね。人間はどうしても「主観」にとらわれます。「環世界」に浸り込んでしまいます。いわゆる「自分の世界」です。

そこからいかに意識的に脱出するか。「オレ、ボーっと生きてるんじゃないか」「何となくわかった気になっているんじゃないか」という気付きを、いかにするか。新鮮な5歳の子どものような視点で、日常の物事を見ることができるか。

私は先日、「発想」について、いくつか記事を書きました↓。

いずれも、いかに「既知」から「未知」に到達するか、がポイントです。

佐藤卓さんは、このようにデザインについてまとめていました↓。

キーワードは「既知の未知化」。物を見る目を養っていくことが大切なわけだが、自分は何でも分かっていると思っていて、そう思うと、知りたい気持ちがなくなってしまう。デザインを学ぶということは、日常の生活のなかで、いかに知らないことばかりなのかと思うことから始まる

デザインのみならず、新しい発想をしたり、自分の能力をブラッシュアップしたりする際には、この「日常の生活のなかで、いかに知らないことばかりなのかと思うこと」=「既知の未知化」が重要だと思います。いわば、自分の頭の中に、ツッコミを入れてくれるチコちゃんを置いておいて、わかったつもりになっていることに対して「ボーっと生きてるんじゃねーよ!」と一人ボケツッコミするようなものです。

既知を、ちゃんと未知にする。
未知を、ちゃんと既知にする。

その繰り返しです。

3、アウトプットの流儀

そこで有用なのが「アウトプット」ではないでしょうか。

アウトプット。インプットの反対。外に出す。

私は先日の記事で、恐れずにSNS投稿などで、頭の中にあるもの(作品)を世の中に出そう、とオススメしました↓。

外に出すためには、まず、頭の中で整理する必要があります。次に、表現していく中で整理する必要があります。その「整理」の過程で、何となくあわあわして分かったつもりになっていることが、だんだんと結晶化していく。他人にわかるようになっていく。「こうすれば形になるんだな」と、自分の中で実感でき、形にするやり方が身に付いてくる。

ところが。

いざ外に出してみると、つまりアウトプットしてみると、受け手から意外な反応が返ってきたりします。

渾身の表現が伝わっていない。「え、そこですか?」という細かいところの食いつきが良かったりする。このあたりは、主観と客観の違い、自分では良いと思っていても、他人にはなんのこっちゃとなるところ。

※蛇足ながら、このあたりをテーマにして、塾の授業を題材にして、「たこのないたこ焼き」というnote記事を書いたりもしました↓。

アウトプットしては反応を見て、さらに良いものにしていく。インプットし直して再構築して、アウトプットしては計算違いをまた修正する。その繰り返しです。インプットばかりでは、「既知の未知化」はしづらい。もちろんアウトプットばかりでも難しい。バランスが大事ですね。

何千年も前に、中国の思想家の孔子はこう言ってます↓。

子曰く、学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)。
(口語訳)孔子先生はおっしゃいました。「学んで、その学びを自分の考えに落とさなければ、身につくことはありません。また、自分で考えるだけで人から学ぼうとしなければ、考えが凝り固まってしまい危険です」と。

インプットしてアウトプットして、さらにインプットする。未知を既知化して、既知を未知化して、さらに未知を既知化する。「学習する生き物」である人間にとって、このサイクルは不可欠です。

しかし、いつのまにか自分の世界に浸り込んでしまわないように、いつのまにか他人の考えをコピペするだけにならないように、気を付けるべきところなのかな、とも思います。

4、アウトプットの戦略

いかがでしたでしょうか。

今回の記事では「すぐそこにある日常を再発見」すること、既知の未知化インプットとアウトプットなどについて考えてみました。

アウトプットねえ、とても良いと思うんだけど、三日坊主で続かないよ…と内心で嘆かれた方は、この杉本和也さんのブログ記事が参考になりますのでぜひお読みください。アウトプット継続のヒントがたくさんあります↓。

最後に、せっかくグラフィックデザイナーが出てきましたので、デザインの漫画を紹介して、締めとします↓。

西野杏さんの「戦うグラフィック。」です。

他者であるクライアントからの要望の聞き取り、自分の中でのデザインの発想、さらに他者への説明と説得。インプットとアウトプット。グラフィックだけに「色々な」要素が詰まっていますので、ぜひ。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

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