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「三国志」というお話には
三人の象徴的なリーダーが登場しています。
※正史の三国志ではなく「三国志演義」を
イメージして書いています。

①魏(ぎ)→曹操
②呉(ご)→孫権
③蜀(しょく)→劉備

本記事では、
この3人(のイメージ)を対比させることで
リーダーの在り方を考えてみましょう。

(三浦 孝偉 さんの
『変わりつつある「理想のリーダー像」の話』
という記事に触発されて書きました。
コメント欄に三浦さんの記事へのリンクを
貼りますので、そちらもぜひ)↓

①曹操

「万能の天才」と言ってもいいですね。
頭はキレッキレ、武勇にも優れて、
詩文にも音楽にも才能を発揮する。
しかもモテる。

人事も柔軟で「唯才」、つまり、
才能さえあれば登用する。
儒教的な考えにこだわらずに、
人間の才能を活かすことを考える。

若い頃は「俺が俺が」で引っ張って、
部下の才能が育ってくると
しっかりと任せる度量も、ある。

有名な「赤壁の戦い」でも、
自分がリーダーシップを取りつつ
ことを進めて、
いざ負けても、全滅まではしない。
部下に助けられ、強国を立て直す。
致命的な敗戦にしない柔軟性もある。

圧倒的に「強い」リーダーです。
頼もしい。出世もできる。

②孫権

この曹操に対して、孫権はどうか。

もちろん自身の能力はあるんでしょうけど、
基本「部下に任せる」イメージです。

「赤壁の戦い」でも、前面に立って
曹操と戦うのは周瑜であって、
孫権自身が前線に
出ていくわけではないですよね。

孫堅・孫策から引き継いだ
3代目という意識が強いのでしょうか、
より「主君」という意識が、強い。
現場は、現場に任せる。

ただ、人材を集めて、
彼らの手腕を発揮しやすくする環境づくりは
曹操より優れているのかもしれません。

曹操は、「自分が何でもできる」
「創業者タイプ」でもあるので、
どうしても部下は曹操を意識しながら
(内心で恐れながら)働かざるを得ない。

孫権は、そこまでではありませんよね。

主君は主君、部下は部下。
ある意味、割り切っている。
だからこそ赤壁の戦いの周瑜のように、
あるいは彼の後を継いだ
魯粛・呂蒙・陸遜たちのように、
「名番頭」的な存在も、育ってくる。
もちろん、血縁・地縁的な
つながりも強いのでしょうけれど。

曹操とは違った形のリーダー、
「責任はわしが取るから
よきにはからえ」的なリーダー
です。

③劉備

さて、この二人に対して、
「三国志演義」では主人公格の
劉備はどうでしょう?

関羽・張飛との「桃園の誓い」にも
見られるように、
主君は主君なんですけれど
「仲間」「一味」というイメージですよね。

もちろん曹操のように官僚あがりではなく
孫権のように豪族の出、でもない。
徒手空拳から身を起こしていますから、
一代で仲間を増やしていくしかない。
そうなるとどうしても
「上に立つけど仲間」という感じになる。

この劉備軍団、時流に乗っている時は
勢いがありますけれど、
徐々に形勢が固まってくると
かなり脆い面が出てきます。

三国志のお話の中でも、
赤壁の戦いの前あたりなんかは
荊州の劉表の食客、
浮浪集団、いそうろう、ですからね。

それが「天才軍師」諸葛孔明を得て、
「蜀」を手に入れ、三国の一角を
担うようになる
…というのが
三国志演義のお話ではありますが、

曹操と孫権との対比でいきますと
「天才強権の曹操」「血縁地縁の孫権」に
当てはまらない、無頼・アンチな人たちを
糾合するための「旗印」になった、
とも言えます。

だから、山奥の「蜀」を狙った。
だから、「漢王朝の復興」を狙った。
だから、「漢中王」を名乗った。

いわば乱世の状況を自ら作り出したのです。
形勢が魏対呉の「二国志」に
収斂されていかないように、自らを
ジョーカー的な存在に押し上げて、
形勢を流動化させたのです。

劉備を主人公とするお話の中では、
「蜀」VS「魏」が、軸。
「呉」がジョーカーのような
扱いになっていますが、

実際は「赤壁の戦い」が
曹操VS周瑜(孫権)の戦いであるように、
ジョーカー的な存在なのは
むしろ劉備のほうなのです。

二国を争わせているうちに、
漁夫の利(どさくさ)的に蜀を手に入れ
三国が争う形勢にしてしまう…、
これがいわゆる「天下三分の計」ですが、

リーダー対比論的に言えば、
「曹操的な天才たちがいる官僚集団」
「孫権的な一族支配の血縁地縁集団」

これらにあてはまらないはぐれものたちに
活躍の場を与えてあげる、という
親玉的リーダー
なのではないでしょうか。

有名な「蜀の五虎大将軍」も、
関羽と張飛は義兄弟(創業メンバー)、
趙雲は浪人あがり、
黄忠は荊州出身、馬超は西涼出身、
いわば「寄せ集め軍団」、
「イレギュラーズ」の象徴なのですから。

…さて、ここまで三人を対比して
書いてきました。
まとめてみましょう。

①曹操…才能を愛する天才
②孫権…部下に任せる主君
③劉備…仲間を信じる親玉

いずれも、乱世の優れたリーダー、です。
良い悪いではなく、
それぞれが長所と短所を持った
味のあるリーダー像を持っています。

家柄や儒教的素養があれば出世する、
安定した漢王朝時代のリーダーではない。

曹操に負けて滅亡した「袁紹」ではない。
もちろん裏切りを繰り返し、
最後は部下に裏切られてしまった
「呂布」でもありません。

…ひるがえって見ますと、
現在の日本も「乱世」です。
これまでの常識や既成概念が
壊されています。

SNSなどの発達で
「旗揚げ(起業)」も容易にできます。
「コロナ禍」などの影響もあり、
「会社」「社員」という枠組みが
流動化しているのは、
三国志の幕開けを彩る
「黄巾の乱」に共通する部分があります。

いわば一人一人が「志」を持つ「一億志」
世界的に言えば
「70億志」といったところです。

そんな世界で、読者の皆様は、
どのようなリーダーを求めますか?
また、どんなリーダーになりますか?
曹操? 孫権? それとも劉備?

呂布や袁紹には
ならないほうがいいかな
、と思います
(呂布や袁紹ファンの方、すみません)。

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