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「五番目の社会」というよくできたストーリーの功罪

Society 5.0。ソサイエティ 5.0!

内閣府作成

日本の政府はこの概念を主軸として、
「科学技術計画」を立てています。

2021年、令和3年、
「第六期科学技術計画」が立てられました↓

ここでは「Society 5.0」の概念を具体化する
「スマートシティ」「スーパーシティ」などの
プロジェクトに、多額の予算が下りています
(これらについてはリンクからぜひ)↓

本記事では、この「Society 5.0」について
深掘りしつつ、日本の都市について
考察してみたい、と思います。

「5.0」ですから「1.0~4.0」もある。
ちょっと長いのですが、これまでの
社会についての説明の文章を、引用します。

引用元記事はこちらです↓

(ここから引用)

狩猟社会(Society 1.0)とは、
農耕が始まるまでの社会を指す。
狩猟や採集を生活基盤としていた原始的な社会だ。

農耕社会(Society 2.0)とは、
田畑を耕し、小麦や米などの作物を育て
収穫していた社会を指す。
農耕によって人々が土地に定住し始めたとされ、
今日に至る社会基盤を形成したとされている。

工業社会(Society 3.0)とは、
機械製品の発展などに伴い、
工業化していった社会を指す。
主に産業革命以後の社会を指す時に用いられ、
企業文化の発達や
工業化に伴う大量生産が可能となり、
農業から工業へ社会構造が変化していった。

情報社会(Society 4.0)とは、
インターネットや携帯電話、
スマートフォンなどの普及によって
世界がネットワークで繋がった社会を指す。
それにより、世界のどこにいても
瞬時にあらゆる場所の情報を
知ることができるようになった。

このように、人間社会は
狩猟時代(Society 1.0)から
今日に至る情報社会(Society 4.0)まで変化し、
発展しながら社会を形成してきた
のだ。』

(引用終わり)

はい、この流れの中での「Society 5.0」つまり
「五番目の社会」というストーリーなんですね!

①狩猟社会
②農耕社会
③工業社会
④情報社会←イマココ!
⑤未来社会

歴史的な流れを、補足します。

①狩猟社会→②農耕社会のきっかけは、
弥生時代の「稲作伝来・普及」でしょう。
とはいえ、すぐ社会全部が変わったわけではない。
山には狩猟、海には漁に出る人も、たくさんいた。
『もののけ姫』的な、カオスの時代が長かった。

その②農耕社会が定着したのは、
江戸時代あたりでしょうか?
「田と米の取れ高」が、経済の基本。
でも、まだまだ農業以外に従事する人も多かった。

③工業社会は、江戸時代の半ばから少しずつ
発展していきましたが、大きく変わったのは
明治時代の「文明開化」の頃でしょう。

「富国強兵」「殖産興業」の掛け声の下、
欧米流の工業を直輸入し、工場ができていく…。
ただこれも、社会全体が変わったわけでない。
地方に行けば、やはり農村が主体だった。

③工業社会が定着し出すのは
戦後の「高度経済成長」あたりでしょうか。

農村から「金の卵」として都会に集団就職。
朝ドラの『ひよっこ』の世界です。
徐々に、少しずつ、農村から都市へ!
「おらこんな村いやだ」の上京物語。

そんな中で、④情報社会の波が
1990年代あたりから急激に覆っていきます。

パソコン、ネット、ケータイ、スマホ…!
農村だろうが都会だろうが、みんなスマホ。

そして次は「Society 5.0」なんですよ…!
というストーリーです。

…ただですね、私はこのストーリーを読んだ時、
「このように『一本道の直線ルート物語』だけで
社会の流れを一面的に捉えてしまうのは
ちょっと危険だな…」
と思ったわけです。

松本 淳 さんの「ストーリーの力」
記事で出てきた問題意識と、かぶります
(松本さんの記事もぜひ)。

私もお粗末ながら小説を書いたりして、
ストーリーを作っている身なので、
何となくわかるんですが。

ストーリーには「フィクション」が混ざる。
つまり「リアル」な都市や農村については、
この物語がそのまま当てはまるとは、限らない。

国レベルの『大きな物語』の流れとしては
この五段階発展論はわかりやすいのですが、

街レベルの、個別の『小さな物語』としては、
実際にはこの五段階発展を
経ていないところが多いんです。

…あえてフォローしますと、
私はこの「Society 5.0」ストーリーを
丸ごと批判したいわけではなく、

マクロでなくミクロに視点を変えてみれば、
違ったストーリーになりますよ、
と言いたい。

もう少し、詳しめに言います。
「街」というものは、

①②③④が「積み上げ式」「ピラミッド」で
形成されてきたものでは必ずしもなく、
①②③④がモザイク状に、パズル状に組み合った
「ジグソー」的に成り立っているのではないか?


例えば、農業になじまない海岸沿いでは
②農耕社会が必ずしも成り立たず、
①狩猟社会が長らく続いてきた中で、
いきなり工場が建ち「部分的」に
③工業社会になったのでは?
そういう漁村、いっぱいあります。

一方、商業が昔からさかんな都市では
そもそも①②が成り立っておらず
いきなり③工業社会になったのでは?
博多とか堺とかは、そんな感じでしょう。

他方で、つくばなどの「研究学園都市」は、
国策もあり、筑波山麓の②の農耕社会に、
④の情報社会を踏まえた都市が
どかんと建設され、万博まで行われた。

かと思えば外見は④情報社会になったとはいえ
中身は②農耕社会のままの町(村)も多い。
いわゆる「田舎」では
アナログの回覧板が、情報ツールとして現役です。

そう、①②③④の順のストーリーを
綺麗に経てきた街は、存外に少ない
んです。

そう考えますと、
「いま私たちの街は全部が④の段階です!」と
言い切れる街など、ほとんどない。
街の各地域によっても、違う。

①②③④のジグソーのピースが
複雑に組み合わさってできている状態…。
これが街、ととらえたほうが無理がない。

そう考えますと。

「次は⑤未来社会です」と言ったところで
そのピースがうまく凸凹に合わさるかは
まさに街次第、千差万別です。


どこかでうまくいったからって、
それをコピペして一律的に横展開しようとしても、
うまくはいかないんです。

画一的な⑤未来社会のピースを
無理やり当てはめようとしても、
かっちりとは当てはまらない。

もし「未来社会」を現出させるのであれば、
現在の街の「①②③④のピース」を見極め、
それぞれに合った「⑤のピース」を模索して
当てはめていかなければいけない…。


私は、そう思うのです。

さあ、読者の皆様の街は、いかがでしょうか?

①②③④のピースの混ざり具合は、
どんなものですか?
ガチガチの閉鎖的? それとも流動的ですか?

これからの日本社会は人口減、
「消滅都市」「限界集落」も増えます。

そんな中で、⑤未来社会のピースを
うまく凸凹に当てはめられそうですか?
…当てはめていくべき、なのでしょうか?

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