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スマートシティ。スーパーシティ。どう違うのか?

2018年頃から、日本では内閣府主導で
「スーパーシティ構想」が進められています↓

「すっごい街、でしょうか?
でも、スマートシティと、どう違うんですか?」

…本記事ではこの違いを切り口に、
スーパーシティ構想について、書いてみます。

◆スマートシティ

『未来的な先進技術でしっかり管理された、
今までの街の課題を解決しつつも
ずっと持続していけるような、すごい街』

そんな定義のイメージがスマートシティ。
(日本の「ウーブン・シティ」や
「世界のスマートシティ」を書いた
以前の記事へのリンクは↓)

…だが、このスマートシティには
ある種の懸念が、ある。

2019年2月の有識者懇談会がまとめた最終報告より
引用してみましょう。

(ここから引用)

『これまで日本国内において、スマートシティや
近未来技術実証特区などの取組があった。
しかし、エネルギー・交通などの
個別分野での取組、個別の最先端技術の実証
などにとどまっていた』

(引用終わり)

つまり、スマートシティを目指す!のはいいが、
そこをゴールとしていては、
個別の「凄い技術、使えますよ」のレベルで
終わってしまうのでは…という懸念です。

じゃあ、どうすれば?

◆スーパーシティ

再び、2019年の最終報告から引用します。

(ここより引用)

『「スーパーシティ」は、
これらとは次元が異なり、
「丸ごと未来都市を作る」ことを目指す。

すなわち、
1)エネルギー・交通などの
個別分野にとどまらず、生活全般にまたがり、
2)最先端技術の実証を一時的に行うのではなく、
未来社会での生活を先行して現実にする。
3)その際、何より重要なことは、
技術開発側・供給側の目線でなく、住民目線で
理想の未来社会を追求することである。』

(引用終わり)

要するに、①生活全般に、②一時的でなく連続的に、
③住民目線で、丸ごと、未来の街をつくる!
と。

逆に言えば、
◆「ある部分に先進技術を使ってOKとはしない」
◆「一時期だけのブームに終わらせない」
◆「統治側の上から目線で勝手にやらない」

ということ、ですかね。
そして先行しているスマートシティには
ともすればこういう短所がある、と…。

(ここより引用)

『世界各国でも、未来都市の設計に向けて、
類似の問題意識での取組がなされつつある。

白地から未来都市を作り上げる
グリーンフィールド型の取組
(雄安、 トロントなど)もあれば、

既存の都市を作り替えようとする
ブラウンフィールド型の取組
(ドバイ、シンガポールなど)もある。

中国やドバイなどで革新的な取組が
先行しつつある一方、

トロントでは、住民の不安による
混乱も生じている。』

(引用終わり)

…こういう懸念が、あるんです。

どうしてもスマートシティを目標にすると、
「IT技術の進化の活用」という「手段」が
「目的」にすり替わりがち
ですよね。
そうではなく、スーパーシティ構想では
「住民にとって本当に良いと思われる
未来社会、未来の街を作るぞ!」を目指す。

◆トロントの混乱

では「トロントにおける混乱」とは
いったいなんだったのか?

スマートシティ化を進めたカナダのトロント。
「サイドウォークラボ」という会社が主導し、
多数のセンサーやカメラを街に埋め込みました。
そこから交通・騒音・エネルギー消費・人流などの
データを取得し、分析し、運用していた。

いかにもスマートシティですね。
ところが…。

「個人情報、だだ漏れじゃん!」
「こんな見張られている街、住みたくない!」


個人情報の扱いに、住民が反発したんです。
この結果、生活環境の充実や
効率的な都市運営が難航している…。

個人情報、プライベート情報の扱いと、
情報収集分析システムの発展は、表裏一体。
大別して、二つのタイプがあります。

◎オプトイン型:データ提供同意、許諾の意思前提
◎オプトアウト型:拒否を意思表示しなければ許諾

トロントではオプトアウト型にしたために、
「なんで勝手に情報を使うんだ!」と
反発が起こったそうなんです。

このあたりは、統治側と住民側との力関係、
住民の情報意識にもよりますが、
日本でも、勝手に情報を使われると
反発・混乱が起こることが予想されます。
だからこそ「オプトイン型」の開発、
住民が事前に納得して開発に参画することが必要。

内閣府では、この「住民の参画」について原則、
「市街地再開発:所有者及び
 借地権者のそれぞれ3分の2以上」
「区分所有権建替:区分所有者の5分の4以上」
「建築協定:所有者等の全員」など、
一定以上の住民・地権者が合意することを
都市開発の前提としている
、そうです。

◆スーパーシティ候補の二つ

ただ、そう考えてくると、
事前に住民への説明、住民の合意が必要なので
「どこでもいい」とはなりませんよね。

反発が起きないような
住民の多くが「スーパーシティになりたい!」と
強く願っている街でないと、難しい。

そんな街、あるんですか、ですって?
…これが実はあるんです。

2022年3月、日本政府は二つの街を
「スーパーシティ」の対象に指定しました。
「大阪市」と「つくば市」です↓

実はこれに先立ち、
「スーパーシティになりたい街、手を挙げて!」
的な感じで公募をしたところ、
31の街が手を挙げたんです。そこから二つ↓

大阪市は、何と言っても2025年に
「大阪・関西万博」がありますからね!
あの鮮烈なキャラ「ミャクミャク」の万博↓

科学技術発展への機運が高まっている。
「空飛ぶクルマ」「自動運転バス」を実証する!
と、でかい風呂敷を広げています。

一方のつくば市は、1985年に万博が開催された
根っからの科学技術大好きの街。
「選挙のインターネット投票」
「ドローンやロボットを使った自動配送」

などを実証することを目指しているそうです。

最後に、まとめましょう。

スーパーシティ。
この構想には、スマートシティの長所だけでなく
短所も見つめ、それを克服しよう、という
思いが込められています。

ただ、目標が大きいのはいいのですが、
実際の結果がどうなるかは、未知数。
「結局、普通のスマートシティじゃん?」で
終わってしまっては、あまり意味がない。

大事なことは、スマートとかスーパーとか、
その呼び名ではなく、

「いかにその街に住む住民や
訪れる来訪者・移住者が幸せになるのか?」を
実現できるか否か
、だと思います。

トロントのように、良かれと思って
やったことが逆効果、ということもあります。
また、日本のこれまでの都市開発の中には
「失敗事例」もたくさんあるのです。
地域事情や歴史、住民感情も、千差万別…。

それやこれやを踏まえつつ、いい感じの
その場所に合った街をつくっていくこと。

そのことこそが大事だと思います。
読者の皆様は、どう思われますか?

◆参考までに、政府(内閣府)が作った
『「スーパーシティ」で実現する私たちの暮らし』
動画へのリンクを貼ります↓

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