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シロクマ文芸部 勝手に参加作💞

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小牧幸助さんのお題に従って書く『シロクマ文芸部』参加作を集めました! 140字、2000字の短編、4000字の短編、俳句、短歌などなど。 サクッと読めるがじわる、お買い得スルメの… もっと読む
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記事一覧

「花吹雪ゆく春空の――」ヒスイの春短歌+シロクマ文芸部

『花吹雪ゆく春空の階段を 駆け上がる髪ひとすじの影』ヒスイ (はなふぶき ゆくはるそらの かいだんを かけあがるかみ ひとすじのかげ) 少女というのは、 ある日突然、大人になるもので。 この不思議さは、友人たちを見ても感じていたのですが、 今回、 つくづく感じいることがありました。 姪の澄。 大学生になりました。 いっきに、大人びてきました。 話すことはもちろん、声の使い方や笑い方にまで、 大人の匂いがしてきました。 なんとなく、寂しいような。 でも、同志を得たような

「きらきら風車は、姉の愛情の風に乗っていた」ヒスイのシロクマ文芸部

風車がキラキラまわっていた。 うちの実家に。 ……シュールだ。シュールすぎる風景だ。 なんでキウイフルーツ棚で、メタルチックな風車がクルクルしてるんだ? 思わずじーっと見ていたら、姉がため息をついた。 「あのね、ハトが来るのよ」 「へえ?」 一瞬、姉がどうかしたのか、と不安になったが、話はすぐにわかった。 「ハトがね、うちの庭に来るの。  でね、ハトって、いちど『お気に入りの場所』って決めたら、絶対に出ていかないんですって。  で、パパがハト除けを買ってきたのよ」

「僕の時刻表は『非固定式』」ヒスイの#シロクマ文芸部

『変わる時刻表』を眺めて、僕は駅でため息をついた。 「ああ、やっぱり…朝みた時間と変わってる…いったいどの列車に乗ればいいんだ? 明日は会社があるってのに」 思わず青い空を見あげる。 満開の桜がひらほらと散り始めていた。 薄ピンクの花びらが、僕の右足のギプスにふわりと着地した。 「ちぇっ、この足さえ動けば車で帰れるのに」 政府が『変わる時刻表』を施行してから4年がたつ。 電車やバスなどの時刻表が勝手に変わるシステムが導入され、公共交通機関の到着時間は全く信用できなくなっ

「桜色花冷かおる嘘をつく」ヒスイの春俳句・シロクマ文芸部

「桜色 花冷えかおる嘘をつく」ヒスイ (さくらいろ はなびえかおる うそをつく) 『花冷えのウソは桜色』150字の恋物語 「咲良(さくら)のウソって、すぐにわかるよね。かわいいな」 晴彦(はるひこ)は笑って言う。 彼にとってウソはコミュニケーション。何の罪悪感もない。 だから平気でそんなことを言う。 私は言い返す。 「晴彦のウソはわからないよ」 「ウソなし男だからな」 ひゅっと花冷えの風が吹く。晴彦の耳は桜色。視線の先には桃子がいる。バレていないと思っている二人が

「卒業の朝に舞い散るーー」ヒスイの春短歌+シロクマ文芸部

「卒業の朝に舞い散る紙吹雪   初恋後悔あおぞらにじむ」ヒスイ (そつぎょうのあさに まいちるかみふぶき  はつこいこうかい あおぞらにじむ) 今日はちょっと定型からはずしてみました。 ついでに公開時間は間に合わず(笑) もういい、いいんだ! 作ることに意味がある! 卒業式の日って、ほんとうにすがすがしい気分になります。 すくなくとも、ヒスイはそうでした。 学校が大嫌いだったから(笑) もう決まった時間に家を出て、 皆と同じ制服を着る生活をしなくていい、とわかっただけで

「この恋は湯煎いらず」ヒスイの毎週ショートショートnote

「レトルトの語源って、しってる?」 昼のホームパーティ。夫は隣に座る私の親友、純子に言った。 「語源?」 「オランダ語でretor。『加圧過熱殺菌をする釜』のことなんだ。そこから転じて、日本では密封・長期保存食品を言う」 「物知りね」 純子の肩が夫に近づく。夫は避けようともしない。 見せつける目的の媚態と、見られていることすら忘れた平常心が、ソファの上にある。 あざとい小芝居を、私はひんやりと眺めている。 加圧され、過熱された恋は二人のあいだで、湯煎されている。温度が

「閏年あまる一日を剪りとりてーー」ヒスイの春短歌+シロクマ文芸部

「閏年あまる一日を剪りとりて  母の暦へひそと貼り足す」ヒスイ (うるうどし あまるひとひを きりとりて  ははのこよみへ ひそとはりたす) 本日は、小牧幸助さんの #シロクマ文芸部 に参加しています。 ヒスイママの病状は かなりいい感じです。 先月から始まった抗がん剤が イイ感じで働いてくれているのでしょう。 もともとワガママな母は もう抗がん剤に嫌気がさしていて、 「休薬期間を3週間にしたい」だの 「あのドクターは、私の病状より抗がん剤の効き具合が気になるみたい」な

「チョコレートぎんがみ剥がす爪の先ーー」ヒスイのシロクマ文芸部+冬短歌

「チョコレートぎんがみ剥がす爪の先  北風に乗せ『あいしてる、かも』」ヒスイ はい。 小粋でポップな恋愛小説家、ヒスイです。 恋愛、というものは はかなくて、 風に飛ばされてしまいそうでいて、 でもチョコレートの銀紙をむくほどの 強さと確かさを持っている。 風向きの変わる直前、その一瞬に、 『愛しているかも』という声が聞こえたら。 『かも』の部分は 聞こえなかったことにしましょう(笑)!! オトコっつーのは、ですね。 感情を言葉に乗せるのが、苦手です。 ニガテって言

「青写真ざくと破りしーー」ヒスイの冬短歌&理系男はなんでも実証したがる日記(笑)

「青写真ざくと破りし如月の ゆき新しく東へ香る」ヒスイ (あおじゃしん ざくりやぶりし きさらぎの   ゆきあたらしく ひがしへかおる) 本日は、小牧幸助さんの #シロクマ文芸部 に参加しています。 締め切りが 23:59まで伸びたので、何とか滑り込みました。 今日の短歌は最後の、「東へ香る」が、言いたかったことです。 今ごろは、受験生が最後の追い込みですね! ヒスイはちゃんと受験したことがないので、この時期のニュースなどで受験生の様子を見ると、なんとなく羨ましい気す

「布団からのぞく雪白まろやかにーー」ヒスイのシロクマ文芸部

「布団からのぞく雪白まろやかに   姉の気配が母に似てきた」ヒスイ (ふとんから のぞくゆきしろ まろやかに   あねのけはいが ははににてきた) 今日は久しぶりに、短歌を作りました。 つくるというか、 この感情をおさめる形は、 短歌がいちばんいいかな、というかんじです。 短編にするには、ヒスイの感情の網目がやや粗すぎて、 俳句にするには、ひろがりがあって 詩にするには、軽さがありすぎた、っていうかんじです。 まあ、感覚的な事なので ヒスイにもよくわからないのです(笑)

「ポケットから、純白の優しさ」ヒスイのシロクマ文芸部

「雪化粧はロマンチック……なんて言ったやつは、雪に困ったことがない奴だ!!!」 私は力まかせに枕を投げつける。でもホテルの枕はふわふわで、壁に当たっても、ほよんと落ちるだけだ。 隣のベッドでスマホを触っている夫は、 「しょうがねえ。雪で高速もクローズだ。ほれ、チョコアイスでも食え」 「アイスなんかいらない! ママの体調がよくないのに!」 腹立たしくて、思わず涙が出た。 週末に予定どおりスキー旅行へ行け、というのが父、姉、夫の意見だった。 三人とも、私が母の病でへこみきり

「売上は、ママからの最後のキス」ヒスイのシロクマ文芸部

本を書く。本を売る。 それがママの天職だ。 2年前、私がまだ中学生の時に書いた小説が賞を取り、爆売れした。 以来、ママは流行作家。 いまも編集さんと打ち合わせ中みたい。帰宅した私は部屋の中をのぞく。 ママは、ベッドの上で微笑んでいる。 なぜ笑えるの? ママの人生は、病のせいで、残り時間が見えてきつつあるのに。 そんなママを放っておいて、パパは相変わらず会社を作ってはつぶしてる。借金をつづけているのに。 なぜ最後まで編集さんに指示を出すの? 私より本が大事ってこと? 私に

「新春の影を踏み踏み、夫ゆく」ヒスイのシロクマ文芸部♡

「新しい服って好きじゃねえんだよなー。何か、体にフィットしないっつうかさ。古いもんの良さ、ってのがあるだろが」 新年、いちにちめ。 どしょっぱつから夫は機嫌が悪い。 私が新しい下着一式を用意したからだ。 もちろんこっちも、元気に言い返す。 「新年だから、下着くらい新しくするもんなの」 「メンドクセー」 「新品だよ。心がパリッとするでしょ」 「メンドクセー」 「元旦は箸も新品、おせちも新品。餅だって新品だよ」 「新品の餅ってなんだよ。あー、メンドクセー、餅やこう。おまえ、

「ただ存在するだけでいい。マルチカラーのありがとう」ヒスイのありがとう日記

ありがとう、という言葉が 気づいたら口から出てくるようになりました。 おはよう、や、おかえりより、 ありがとう、を言う機会のほうが多い。 そんな日々になりました。 PCをポチ、ッとつければ たくさんの優しい言葉に もう感謝しかない。 ありがとう、という言葉の中に 「ふがいないヒスイで、ごめんなさい」 とか 「もうちょっと休みますけど、よろしくです」 とか、 「キンドル本の作業、まったく進まねえよ!  やっぱりヒスイには、金を積んでの外注がお似合いさ……ふっ」という ハー