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20240330 ポルノグラフィティ19th Live Circuit〜PG was't built in a day〜 感想(Part3)

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17曲目 空想科学少年

僕が大人になる頃には」と歌っていた青年が大人になった。今の「科学の世界」はどうだろう?
可愛らしいシンセの音に乗せて紡がれる痛烈な風刺。約20年前の晴一が「空想」した皆同質の人間となる未来。今、そんな時代に近づいてはいないだろうか?
人間がロボットになることはないが、SNSのアカウントはいつでも消して人間関係をやり直せる。アバターを使えば「同じ顔」。いや、今はAIイラストで他人の「」を横取りする人まで現れている。約20年前の曲ながら、いやだからこそ、2024年の我々に突き刺さる歌詞である。
ポルノグラフィティの歴史からも語ろう。この曲は2枚目のアルバム「foo?」に収録されている曲である。アルバムで数えれば、先ほどの「オレ、天使」と同期である。長くファンに愛されてきた。
大人に」なってから改めて演奏されるこの曲に、「明日」を知った彼らはどんな思いを込めたのだろうか。そう考えながら聴いていた。

18曲目 ハネウマライダー

ライヴでは定番の曲だ。皆が一斉にタオルの準備をする。圧巻の光景である。
大抵の客は最新のタオルを持って来るが、過去のライヴのタオルを持参する者もいる。私もその一人だ。
一色ではない観客席を見渡すと、ポルノグラフィティが築き上げてきたライヴの歴史が見えてきた。この光景もまた、一日にして成らないものである。
他の誰かと、例えば君と」の「」の部分は、毎回ライヴ会場全体を指す言葉に置き換えられる。この歌詞の続きは、「触れ合った瞬間に、歯車が噛みあって時間を刻む。」である。ライヴを含むポルノグラフィティの活動全ては、2人だけでは「歯車」を回すことができない。ファンがいるからこそ、「時間を刻む」のである。そんな思いを、ライヴを重ねるごとに気合いが入る「」の部分から感じられた。
ポルノグラフィティよ、我々ファンは「途中じゃ降ろ」されない。ずっと後ろで「とばせと煽る」から。

19曲目 アポロ

会場の盛り上がりの高まりは止まらない。デヴュー曲、「アポロ」。「PG was't built in a day」のその礎とも言える曲だろう。
背後のモニターには、過去のライヴ映像が映し出される。そして目の前にいるポルノグラフィティ。彼らの留まることを知らない成長を際立たせてくれる。
今回は珍しく、昭仁がサビを会場に歌わせる場面があった。当然みんなこの曲は知ってるでしょ?と言わんばかりの自信に満ちあふれた煽りだった。コロナ禍で歌えなかった悔しさを発散させるためだろうか?それともポルノグラフィティの始まりを皆で体感するためだろうか?どちらにせよ、最高の演出だった。
声が枯れるまで、いや枯れても観客は歌い続けた。「生まれるずっとずっと前」にポルノグラフィティがデヴューしていた観客もいたかもしれない。最近ファンになった者も昔からのファンも、皆が揃って名曲を歌う様は感動的だった。
今まではポルノグラフィティも「ビジョンが曖昧」な時期があったかもしれない。しかし、そんな時期はもう過ぎた。ポルノグラフィティのビジョンは、ファンという確固たる照準を定めた。

20曲目 サウダージ

昭仁のアカペラから始まる。以前のライヴでもこの始まりだったが、相変わらず素晴らしい歌唱力である。会場全体が昭仁の声の虜になる。
「サウダージ」発表当初と比べて大人になった昭仁の哀愁、色気、力強さ。その声に鳥肌が止まらなかった。彼の進歩は止まらない。
ポルノグラフィティの人気はなおも加速し続けている。SNSにより若者の間で再び流行したこの曲は、カラオケのランキング上位をキープし続けている。「THE FIRST TAKE」内での「サウダージ」の演奏も話題を呼んだ。
もしかしたら、こうした出来事を契機としてこの会場へと足を運んだ若者もいるかもしれない。ポルノグラフィティは過去から続くファンにももちろん支えられているが、最近のファンも取り込んでさらに大きな存在となっている。
「THE FIRST TAKE」を意識したと思われる昭仁のアカペラから始まるこの演出は、そうした新しいファンに向けたものなのかもしれない。ポルノグラフィティは一日にして成らず。過去と現在と、そして未来へとつながるファンの力によって建設されていくのである。

21曲目 オー!リバル

「サウダージ」や「アゲハ蝶」といったポルノグラフィティの曲調は「ラテン調」と評されることも多い。その系譜とも言える曲が「オー!リバル」である。原点回帰、と言ってもいいだろうか(デヴュー曲やそれ以前の曲は全くラテン調ではないのだが……)。
最後も、会場皆で歌える曲を用意してくれた。やはりこのライヴの一つのテーマに、「コロナ禍の夜明け」があるのではないかと私は考える。はじめの4曲から始まり、何度も挿入される皆で歌う場面。そして最後にこの曲。ようやく何の規制も無しに皆で歌える喜びをポルノグラフィティ本人たちはもちろん、会場も噛みしめることができた。
普段より多い声出しに枯れかけていた私の喉は、それでも全力で叫んだ。会場皆も同じだっただろう。これこそが「呼びあう Soul&Soul」か。
全力で叫びきり、多幸感に包まれたライヴは一時幕を閉じた。

22曲目 アゲハ蝶

アンコールの声が鳴り響く。「ポルノ」の3文字。文字にすると少し恥ずかしいが、会場のファンはそんなのお構いなしだ。手拍子と共に叫び続ける。
昭仁と晴一が出てくる。昭仁が「お前たち卑猥な3文字を叫びよって……。そんなに気持ちいいか!?」と聞くと、ファンたちは大歓声で答える。
コロナ禍以前は当たり前だったこのシーン。やっと戻ってきた。本人たちもきっと嬉しかっただろう。

アンコールに入ったが、サポートメンバーは出てこない。2人だけの「アゲハ蝶」だ。いつも以上に晴一のコーラスがはっきりと聞こえた。
ギターと歌声だけで観客を惹き付ける2人。あまりにも頼もしい姿だった。
コーラスの箇所に入る。とうに枯れているはずの喉を絞り出して観客は歌う。共にコーラスできるのは久しぶりのはずなのに、ファンの一体感は全く変わらなかった。これもまた、ポルノグラフィティが築き上げてきた、一日では決して成らなかった後継であろう。

23曲目 ジレンマ

「ラスト!ジ!レンマ!!」
ポルノグラフィティの夜はまだ終わらない。昭仁と晴一のスタミナは切れることなく、全力で観客を沸かせる。
会場を縦横無尽に駆け回る昭仁。「最後一つは教えて…」「あげません!!」とユーモアも交えながら歌う姿に、25周年を迎えるボーカリストのの余裕を感じた。
晴一はMCでこう言った。「君たちが(ポルノグラフィティ)ここまでやらせた、と言うのもあるからね?頼むよ!?」と。ポルノグラフィティというバンドは、彼ら2人による一方向の力で成り立っている訳ではない。ファンの応援によって成り立っているのだ(彼に言わせれば、「成り立たせている」と言ったところだろうか)。
その言葉を思い出しながら、会場を見渡す。大勢のファンが、全力で乗っている。ポルノグラフィティに「もっと行け!」と言わんばかりの勢いだ。もちろん。私もその勢いの中の一つだ。
その日最高の盛り上がりを見せた会場は、ポルノグラフィティという船を全力で押す風となっていた。昭仁はMCで言った。「順風満帆」だと。その「順風」とは、きっと我々のことである。

昭仁が跳ぶ。「ジレンマ」の最後の一音が終わった。
ポルノグラフィティの2人からは、やりきった表情が感じられた。その表情にもう迷いはない。だってファンがいるから。「四十にして惑わず」というテーマのライヴを約10年前に行ったが、現在の2人の瞳や言葉からはもう迷いは無くなったように感じられた。
それがファンのおかげだと、本気で言ってくれるポルノグラフィティが大好きだ。

今回のライヴでは、「コロナ禍の夜明け」と「迷いの消えたポルノグラフィティ」を感じられた。
ライヴの規制は無くなり、ポルノグラフィティと我々観客は一体となって歌うことができるようになった。その喜びを噛みしめさせてくれた選曲であった。その思いは、Part1でも述べた昭仁の「やっとみんなで歌えるね!」の一言に込められている。
ポルノグラフィティは紆余曲折を経て成った。正に「PG was't built in a day」である。ここまでの道は一日にして成らなかった。ポルノグラフィティはこれからも続き増築していく。もう迷いはない。「順風満帆」だと胸を張って言えるまでになった。今までのポルノグラフィティの歩みを噛みしめるとともに、25周年を迎える今後のポルノグラフィティへのさらなる期待を感じた。

晴一は最後にこう言った。「頼むよ!」彼らのファンとして恥じない人間になろうと決意を固めた。
昭仁は最後にこう言った。「次会うときまで、元気でね!」お世辞にも元気とは言えない日々を過ごした私の心に、この言葉が響いた。
勝手かもしれないが、私は2人と固い約束を結んだ気がした。私自身もまた、「一日にして成らず」。明日への一歩を、ポルノグラフィティと共に歩み、「自分」を建設していく。
いつか、「順風満帆」と胸を張って言えますように。

追記

ポルノグラフィティの礎を築いた元メンバー、Tamaのことを2人は忘れていない。
少し恥ずかしそうに微笑む3人は、雑誌撮影などでは見せない自然な柔らかい笑みである。
全ては因島に住む3人のロック好き少年たちの夢物語から始まった。そして月日は流れ、ポルノグラフィティは建築され続けてきた。
ポルノグラフィティよ、永遠なれ。因島のロック少年3人の友情よ、永遠なれ。

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