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デス・ストランディングと地図遊び

久しぶりにゲームを購入した。PS4のゲーム。

購入したのは、「デス・ストランディング」というゲーム。世界でも有名なゲームクリエーターである小島秀夫が作ったゲーム。

先日髪を切りに行った時に、店員さんに「どんなゲームをしているんですか」って聞かれて、このゲームの説明をしようとしたけど、洗髪されつつ、顔に被せられた布切れ越しに、フガフガ息を漏らしながら説明するのも何だし、そもそも容易に概要すらも説明しにくいゲームだ。

ともかくこのゲームは、伝説の運び屋であるサム・ポーター・ブリッジズが各都市が分断された状態にあるアメリカを、さまざまな物資を運び届けることで、再び一つにつなげていく物語なのである。

荷物を運ぶゲームではあるが、人と人がつながっていくことや、その人たちのドラマ、苦労をしてやっと目的地にたどり着いたときの達成感などが面白さのポイントなのだが、小島氏も語っているように、とにかくプレイしてみないと面白さは伝わらないほど、これまでにない新しいゲームと言えるかもしれない。

個人的に感じたこのゲームの一番の楽しさは、“自分で歩く”ということになるかと思う。
今僕が読んでいる新田次郎の「孤高の人」のエピソードにも出てくる、主人公の加藤が同郷の先輩である新納に教えられた“地図遊び”と、このゲームが重なる部分がある気がした。
実際に自分が歩き回った道を、帰ってから地図の上に赤鉛筆で引く。自分が実際に歩いた軌跡を振り返り、またその道々を取り巻く地形を思い返し想像する。これがとても楽しい遊びに思えてくるし、実際楽しいに違いない。

“地図遊び”という遊びが、作中にのみ登場するものなのか、実際にそういった遊びがあるのか、はっきりとはわからないが、自分が歩いた地図の上でその土地々々のことを想像しながら、歴史や文化に思いを馳せることができる、そんな楽しみ方は確実にこの世の中に存在している。

また僕の趣味である登山をした際に使用した地図アプリなどは、自分が歩いたルートを地図上に残しておいてくれるので、登山後に酒を飲みながら自分の軌跡を見るのも登山の楽しみのうちの一つとなっている。

話は少し逸れるが、海外にはGPSデータをもとに3Dプリンターで登った山や地形のレプリカを作成してくれるサービスもあるようだ。これも今どきの楽しみ方でもあり、思い出の残し方ではないだろうか。

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Image: Nicetrails

話を戻すと、デス・ストランディングも地図を頼りに荷物を運んでいくため、地図上には自分が歩んだ軌跡を確認できることはもちろん、目的地までのガイド(ライン)を引くこともできる。
だから地図遊びと同様に、自分が歩んだ軌跡を見ながら、「ああ、ここには大きな崖があったな」とか「この川沿いを歩いている時にものすごい雨(時雨)が降って大変だったな」など、そうやって思い出を振り返ることができるゲームでもあり、この点においてはプレイをしてみないと到底理解できない面白さなのである。

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デス・ストランディングは、そういった言葉では表現しづらい楽しさを、上手にゲームの中に落とし込められた完成度の高い作品だ。
あの加藤が先輩と遊んだ地図遊びは今から100年ほど前のことだが、その一方でデス・ストランディングという最新のゲームを通じて、ひとり、地図遊びをしている僕の方こそ「孤高の人」なんだと。

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