【無観客トレーニングマッチの振り返り、そしてJ1リーグ再開の対戦カードが決まった今、思うこと】
7月4日(土)、ついに明治安田生命J1リーグが再開する。
初戦はホーム埼スタで、昨年の王者である横浜F・マリノスとの対戦が決まった。
僕ら浦和レッズは、リーグ再開の3週間前にあたる6月13日(土)に、埼玉スタジアム2002で無観客によるトレーニングマッチを経験することができた。
この日、選手として何を感じたか?を、少し振り返っておきたい。
まずは「感謝」を伝えたい
まずは、新型コロナウイルスの猛威が収束しない状況の中、試合ができる環境を用意してくれた運営の皆さんやスタジアム関係者の皆さん、そしてチームスタッフに感謝を伝えたい。
僕らは「慣れないね」「難しいね」と簡単に言うだけだが、管理する方々は、あらゆることに気を配って準備しなくてはいけないだろうし、すべての準備も普段の倍の時間がかかっているだろう。
日頃の練習の時から、本当にありがたい存在だと感じている。
5月の終わりに「表現する場」の大切さという記事の中で書いたけれど、あらためて、サッカー選手として自分を「表現する場」がピッチの上で、その環境があることの幸せを感じた時間だった。
同時に、埼スタの芝を踏むまでの準備段階で色々な点に気を配らなければならないなと痛感した。
3~4ヶ月ぶりの「プレー感覚」について
何から伝えようか迷うが、まずはプレーの面から振り返っていきたい。
練習試合の1週間前だっただろうか。
チームから「今週末に練習試合があるぞ」と言われ、準備を進めてきた。
とはいえ、これまでの公式戦のように、週末の日程から逆算して準備するなどの余裕は全く無かった。
どちらかと言えば、対人プレー練習がようやくできるようになった状況だ。
全体的に、試合の入りは悪かったと思う。
個人の感覚では、3〜4ヶ月ぶりの試合にしては動けたかな、という感覚はあった。もう少し、鈍るかな?思っていたけれど。
ブランクを感じたのは、ゲーム全体の流れを読むという感覚。勝負事に対する勘が足りず、「ここで仕留めるぞ!」というところで仕留められなかったり、「ここは、絶対にファールになっても止めなければいけないぞ!」という場面で止められなかったり。
これから、もっと戦術を落とし込み、横浜F・マリノス戦に臨みたい。
「無観客試合」について
そして、無観客試合にも言及しないといけないだろう。
この「リモートマッチ」も、すべては新型コロナウイルスの感染予防対策だ。
僕が運営している『HISTORIA』というオンラインサロンの中で、メンバーの皆さんとのオンライントークでも話したのだが、スタジアムに入るところからいつもとは全く違った。
マスク姿でロッカールームへ入り、着替える場所も「密」にならないように。
全体のウォーミングアップ前に各自で体を動かすけれど、もちろんお互いの距離に配慮する。セットプレーのミーティングでもおなじ。
給水に関しても、どのボトルでも取れるわけではなく、自分だけのボトルを探さなければいけない。慣れてしまえば、という部分かもしれないが、いつもより準備に時間を多く取られた感覚がある。
そして、無観客試合の雰囲気。
自分は、「怖い」と感じた。
埼スタは、サポーターの圧とか、調子が良い時にちゃんと調子に乗せてくれる雰囲気がある。こういうスタジアムは、日本中を探してもどこにもない。
それが、僕らのホーム。
まず、試合前に、対戦相手に「サポーターの迫力」という強めの一手を出せない。自分たちで、気持ちをちゃんと奮い立たせなければいけないのだな、と痛感した。
さらに、試合中にチーム全体の集中力が欠けたり、緩んだりしたら、そのままズルズルと進んでしまうのではないか?という「恐怖心」が生まれた。
いつもの試合だったら、埼スタの雰囲気で、そしてサポーターの皆さんの歓声で、もう1度奮い立つことができるのに。
激励を込めた野次も聞こえてきて、自分たちがうまくいっていない時に「そんなプレーをしていたらダメだろ!!」と背中を押してもらえない。
これじゃあ、少し弱気か。笑
良い時も、サポーターの皆さんの声が無い、というのはとても怖い。
今が良い時間帯かどうかは、プレーしている選手が肌感覚で分かるもの。そして、レッズのサポーターも分かってくれる。
「いいぞ!!いいぞ!!」に似た声があると、僕らは勢いを増して、たたみかけるように攻めにいける。
今は、その良い流れがすぐに終わってしまう怖さがある。
そこに、みんなの反応がないから。
自分のプレーが「良いプレー」なのか?
サポーターの皆さんの反応があるから、プレーの自信が深まり、さらに良いプレーにつながっていく。その循環が、スタジアムに存在していたのだ。
なんて、「怖い」と感じているばかりを記してしまったが、この状況をどう工夫して改善できるか?と常に考えている。
「ゲームの流れを読む力」が鍵を握る
僕のポジションは、一番後ろから試合をコントロールする立場。
だから、自分のプレーもそうだけれど、より全体の流れを読んだり、ポイントをつかんだり、そういう点を今まで以上に気を使ってやっていく。
無観客によって、攻撃の勢いが単発になりがちなのは、相手も同じ。相手に勢いがある時間帯も、自分たちの頑張りで流れを引き戻せる可能性もあるということだ。そのためにも、「ゲーム全体の流れを読めるかどうか」が鍵を握ってくるはずだ。
ここから先、連戦になる。
ゲームをコントロールできるチームが強いと思う。
個々で流れを読める選手がたくさんいるチーム、
そして、ブレないチームが強いと思う。
浦和レッズは、そうならなければいけない。
今は、チームコンセプトを、もう1度落としこんでいる段階。
チームが持っている力を難しい状況でも発揮するためには、チームとして立ち戻るところ=「芯」の部分の共有が大切だと思う。
もっと戦術を詰めていかなければいけないし、徹底しなければいけない。
このトレーニングマッチで明確になった課題に対して、しっかりと準備して、チームでも見直してやっていきたい。
まず、リモートマッチで始まる。
それを、どう乗り越えるか。
試合ができない自粛期間は、プレーする以外に自分にどんな価値があるのか?を考えながら実行してきたが、これからは試合がある。
自分のプレーを見てくれた人に、勇気や感動を届けたい。
そういう「表現する場」があってこそ、自分はサッカー選手でいられる。
アスリートでいられるのだから。
2020.6.16 鈴木大輔
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