せうりく

高校を中退したことがある、すこやか人間です。 この世界への置き土産として、自由研究的エ…

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高校を中退したことがある、すこやか人間です。 この世界への置き土産として、自由研究的エッセイや、願望充足的小説を書きます。

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  • 週刊自室

    なるたけ毎週水曜日に私の自室からお届けする、こぢんまりとした思索と妄想のエッセイ。

  • ふゆのころ

    あのころの回想エッセイ。

  • みじかみじか

    みじかい小説たち。

最近の記事

#5 ツツジは置かれた場所で咲くというのに、お前ときたら【週刊自室】

 この間、精神科で薬をもらった帰りのことだ。  最近は睡眠生活の調子が良く、気分も優れた状態が続いていたため、チリチリと雨粒の描線が紛れるローコントラストな視界さえ、その日の僕にとってはさわやかな春の一場面だった。  自宅からクリニックまでの二十分程度の道のりは、普段ならそのほとんどが、舗装されて大地と隔絶した病的に安らかな道を訥々と歩いてゆくだけの実に味気ない作業でしかなかったが、その日は違った。  咲いている。  花が咲いているのだ。  心から喜ばしい意味で、道々に花が

    • #4 ネット構文は軽薄すぎて好きだし意味深長で草なんよ、という仮説【週刊自室】

       阿部寛はバカとブスを互いに排反だと思ってる説好き。  こんにちは、せうりくです。  今回は、この「〜好き」構文の話です。  こうして無為徒食の日々を送っているとYouTubeの魔の手から完全に逃れることはもはや難しく、作業(無為徒食のわりになにかしらの作業をしている)や休息(無為徒食なので毎日が休息)の背景として動画を流して環境音にする、という行為に走ってしまうことが往々にしてあります。今も流しています。  まあ私の現状はともかくとしても、今日では、どのようなチャンネ

      • #3 走れデスペナルティよしお【週刊自室】

        1  よしおには医学がわからぬ。けれども死に対しては、人一倍に敏感だった。  ある時、よしおが執行を担当した死刑囚・竹原ムービー銃はこう言った。 「こう、『ソナチネ』みたいな感じでさ、こめかみに銃口を当てて処刑してくれよ」  よしおは激怒した。  こめかみを銃で撃つ方法は、失敗に終わる可能性を孕んでいる。  銃口がそれてしまったり、銃弾が頭蓋骨に跳ね返されてしまう場合があるのだ。ヒトの頭蓋骨は、思っているより丈夫である。 「でたこいつ、アホですわ。殺す」  よし

        • #2 自殺の研究とは安楽死ボタンの錬金術である【週刊自室】

           生んでくれと頼んだ覚えはないそこのあなた、こんにちは。  生まれてきてしまったものは仕方がないと思っている私です。  まあ親だってこんな子を産むつもりはなかったでしょう。そう考えると親も被害者ですよね。こんな子で申し訳ない。  さて、今日は明るい話です。  明るいといっても、自殺についてのあれこれを書くつもりなのですが。  自殺という課題に当事者として取り組んできた(つまり死にたがりな)身としては、自殺とはより幸福な状態に至るための手段のひとつであって、それはいかにして幸

        #5 ツツジは置かれた場所で咲くというのに、お前ときたら【週刊自室】

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        記事

          二 不登園児は語らない(けど水鉄砲は好き)

           私は幼稚園が好きではなかった。  というか、家が好きすぎるあまり、外に出るのが嫌いだった。  少しずつ自他境界が見え始めた頃の私にとって、家というのは、自分をこの世界の全ての不安から守ってくれる唯一の場所だった。  家に居れば、何の心配もない。  その一方で、ひとたび家の外に出ると、いいようもない不安の霧が私をとりかこんだ。  家は私の母国だった。  家の外に一歩踏み出せば、そこはもうよその国だった。  私はこの母国に永住するつもりでいた。  ずっとここにいれば、衣

          二 不登園児は語らない(けど水鉄砲は好き)

          【掌編小説】大路の春

           食べられる雑草の本を購入した。  もう所持金は無いに等しいが、欲望に駆られて煩悩塗れの弁当を買ってしまうよりかは賢明な選択だったに違いない。  私は、まんまと弁当を購入した別の世界線の自分に哀れんで同情した。  それが自分にとってただ一つの、優越を覚える手段だった。  拾い物のパスケースを曲がらない程度に握り締め、どうして自分がこの力加減を知っているのか、思い出そうとする。  しかし出てくるのは、過去の私が漠然と抱いていた、いずれ自分にも訪れるであろう保障された未来、そ

          【掌編小説】大路の春

          #1 違法アップロードのスーパーノヴァ【週刊自室】

           本当にありきたりな話で申し訳ないのですが、私はYouTubeで好きな音楽に巡り会うことがときどきあって、そこからなんやかんやCDやDVDを購入することがあります。  YouTube Premiumには加入していないので仕様にうんざりすることも多いものの、YouTubeのおすすめ機能にはさんざん救われているわけですから、頭が上がりません。  はじめは「なに、ちょっと気になるけど俺はたったそれだけで動くほど軽い人間じゃないぞ」だとか考えておすすめを敬遠しつつも、あんまりしつこ

          #1 違法アップロードのスーパーノヴァ【週刊自室】

          一 安定世界神話

           「ふゆのころ」では、あなたにとって全くどうでもいい事柄のひとつであろう私のバックグラウンドについて、心底うざったいくらいに懐古していく。  私は、社会的な意味を持たない事柄が好きだ。  もしそんな私と同じように、あなたが利益的でないものごとをこよなく愛する方であるなら、もしかすればこの連載は、あなたにとってわずかながらでも極めて個人的な意味を持つことになるかもしれない。  そうであるなら、私にとって、それは至上の喜びである。  記憶の道のりを辿れる限りたどった先に見えて

          一 安定世界神話

          【ごあいさつ】せうりくと申します

           この記事にお手を触れてくださったあなた、はじめまして。  せうりくと申します。  メンダコのぬいぐるみが好きな、すこやか人間です。  私の名前についてですが、せうりくと書いてショウリクと読みます。  本名です。  本当です。  どうあがいても明らかな事実です。  もう覆しようがないです。  僕の出生届にはきちんと「古賀 せうりく」と丸っこい文字で書かれていますから。  ほんとうですから。  そう聞くと嘘くさいですよね。  そうなんですよ。  嘘なんですよ。

          【ごあいさつ】せうりくと申します