夢枕に立たれる
薄ぼんやりしていて、嘘のようで本当の話、とはいい切れないのだけれど、私は過去に一度だけ夢枕に立たれたことがあります。ふんわりと嬉しくてどことなく儚い夢でした。「自分がその人に今一番してもらいたいこと」をしてもらったので、目が覚めても忘れられず、胸騒ぎが止まらなかった。その数時間後、その人はこの世の人ではなくなりました。
姉は霊感が強く、よくおばけが見えたと話して聞かせてくれました。私は霊感がなく肝が小さいため、半分信じないことにして、怖いと思うことから逃げていました。でも、姉の話の中で信じている怖い話が1つあります。ある日、姉が飼い犬の散歩をしていた時、向かいから歩いてくる男性の足元に、白くてふわふわした物が見えたそうです。ウチの犬は人間に対しては吠えないのに、すれ違いざま、その男性に吠えかかりました。その話を聞いて私は怖いと思うよりもまず「その人はスピッツを飼っていたんだ」と思ったのでした。「ふわふわしたスピッツのおばけ」を想像するとかわいいと思ったので、その話だけは信じることにしました。
私自身の霊体験と呼べるのは、薄ぼんやりした夢枕だけです。「ふわふわしたスピッツのおばけ」くらい「最後に会いにきてくれたこと」は魅力的で、信じることにしようと思っているのだと思います。人間、夢枕に立てるのだ、とそこはすっかり信じ込んでいるので、またその人と夢で会える事を願って眠りにつくのが毎日の日課になりました。