「秘書は、きちんと成果が出せるポジション」経営者が語る、秘書という存在の重要性|HisholioインタビューVol.3 松村誠一郎さん
これまでは秘書さんにスポットライトを当ててきた『Hisholioインタビュー』、今回はなんと経営者の方にインタビューをさせていただきました。
編集長もこの日が初対面、しかもコロナ禍でのインタビューということでZoomを接続してのオンラインインタビューとなりました。
上司ってどんなこと考えてるの?そんな疑問が解消されるスペシャルインタビューです!
開発者から社長業へ
笹木:
松村さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!
まずは、ご経歴をお聞かせいただけますか。
松村:
こちらこそ、よろしくお願いします。
元々、大学では化学を専攻していまして、最初に入社した会社では研究開発の仕事を任されて研究室でコツコツと仕事をしていました。
でも、途中で「なんかちがうな……」と思い始めて退職をし、MBAを取得するためアメリカへ留学しました。
MBAに行ってきたら即「一流のビジネスマンになれる」と聞いていたんですけどね、そんなことはなくて(笑)。
帰国後はまずはビジネスの経験を積もうと外資系のコンサルティング会社に入社しました。
4年ほど在籍した後、事業会社での勤務を希望し外資系の医療機器の会社ヘ転職しました。その後も主に外資系の医療機器や製薬メーカーで勤務をしてきました。
笹木:
ありがとうございます。どのタイミングではじめて経営者をご経験されたのでしょうか?
松村:
数社目の勤務先で初めて「社長業」という仕事を経験しました。
その時には「全部自分で決めなきゃいけないんだ」ということと「全部自分で決めていいんだ」ということを強く感じましたね。
事業部長などとして勤務していた時は、上の人が決めてくれるという甘えがありました。でも、社長になると自分が最終責任を持って決めて、結果責任も自分が負います。その差は大きかったですね。
秘書は、経営者にとって極めて大事なファンクション(役割)
笹木:
なるほど。責任の重さの違いですね。
ところで、松村さんが最初に秘書さんをお持ちになったのはいつごろでしょうか?
松村:
コンサルティングファームを退職して、事業会社に入社した時です。
その時にはじめてアシスタントさんを付けてもらいました。1対1ではなく、1人で複数名の対応をしてくださるアシスタントさんが自分のことも対応してくれていました。
笹木:
アシスタントさんを持ってみての感想はいかがでしたか?
松村:
自分の時間を優先順位の高いことに使えるようになりました。アシスタントが付いてくれて圧倒的に違うと感じた部分はそこですね。
あとは、当時は社内のミーティングが多かったので、様々な部署とのやりとりがすごく多かったんです。自分より年上の事業部長さんたちとうまくやっていく上で、アシスタントさんがうまく立ち回ってくれました。
「この役員はこんなご経験を持っているので、こういうことは言わない方がいいですよ」「この事業部長はこういう話題に触れると喜んでくださいますよ」などというアドバイスももらった記憶があります。
笹木:
優秀な方だったんですね!その後もずっと秘書さんがいらっしゃるんですか?
松村:
そうですね。その後に勤務した会社ではすべて自分専任の秘書さんについてもらっています。やっぱり秘書は経営者にとって極めて大事なファンクション(役割)だと思いますので、どんな方についてもらうかは重要だと思っています。
秘書が大切であることの、2つの側面
笹木:
そこを掘り下げてお聞きしたいのですが、どういった意味で秘書さんは大事なんでしょうか?
松村:
社外に対してと社内に対して、2つの側面から考えられると思います。
まず、社外に対してはやっぱり秘書さんは会社の顔ですからね。どの企業でも経営者とアポイントを取ろうと思ったら対応してくれるのは秘書さんですよね。電話でも直接訪問したときにでも、最初の接点となる秘書さんで会社の第一印象は決まります。
会社の印象を良くするのも悪くするのも秘書さん次第と言ってよいかと思いますよ。
ちょっと話がずれますが、錚々たる経営者に会ってきた、ある大企業の営業の方にこんなことを言われたことがあります。
「松村さんの秘書さんはすごい人ですよ。大事にしたほうがいいですよ!」と、とても褒めてくださったんです。色々な会社を訪問する方というのは秘書さんの対応もしっかり見ているんだな、とその時に秘書さんの存在の重要性をしみじみと感じました。
笹木:
ちなみに、具体的にはどんなところがその秘書さんの評価のポイントだったんでしょうか。
それを知りたい秘書さんはたくさんいらっしゃると思います(笑)。
松村:
そうですね……。言葉遣い、相手に対する気遣い、いかに気分よくご来社いただくかなどを考えた、いわゆるホスピタリティの高さでしょうね。
笹木:
そういう部分はマニュアル化できないですし、教えることも難しいですよね。
そして、秘書さんを大事だと思うもう1つの側面はどんなところでしょうか?
松村:
1つ目は社外に対しての対応でしたが、2つ目の側面は社内に対してですね。
経営者にとって大事なものの1つに「時間」があります。いかに上司に優先度の低い仕事をさせないようにするか。秘書というのは経営者の生産性を上げるためのサポートを社内で最もできる人です。ただスケジュールを管理するだけに留まらず、例えば会議1つをとっても「そもそもこの会議は本当に必要なのか?」「1時間欲しいと現場から言われたが、本当に1時間が適切なのか?」など、そのぐらいのレベルまで踏み込んで考えらえるといいですよね。
また、秘書さんが社内のメンバーのことをよく熟知していれば、「この社員は話が長いのでミーティング時間をあえて短めに設定しておこう」などということも判断できてくると思います。関係性にもよりますが、すべて上司に確認するのではなく、ある程度の判断を秘書さん自身でもできるようになると上司は助かると思いますよ。
秘書は、きちんと成果が出せるポジション
笹木:
なるほど。秘書さんが自身の範疇で判断をしてくれば、経営者がより優先度の高いことに集中できるようになりますね。
松村:
そうなんです。普通に考えれば経営者は社内で1番人件費の高い人ですからね。その人の時間を有効的に使えるように調整するだけでも組織にとってのリターンはものすごく大きいと思います。
それに気づいている秘書さんは意外と少なくて、普通のことと思って毎日何気なくこなしているかもしれません。しかし、経営者の時給ってすごいですからね(笑)。
社長の1時間の無駄な時間を省いただけで、会社としてはすごいコスト削減に繋がることだってあり得るわけです。それをちゃんと算出していくと、秘書の存在が会社の利益や成長性に繋がるんだということが見えてくると思いますよ。
そういう意味で、秘書というのはきちんと成果が出せるポジションであり、会社への貢献もとても大きいはずです。
笹木:
秘書さんの励みになるお話だと思います!
他にも秘書さんを大事だと思う点はありますか?
松村:そうですね、経営者の生産性を上げることの他には、秘書さんというのは社内で経営者の窓口的な役割になりますよね。例えば、社員が社長の時間をもらおうと思ったら秘書さんを通しますよね。その時に、社員に対しても適切なホスピタリティを持って接することで、みんなが気持ちよく経営者との打ち合わせに向かえると思います。
ちょっとしたことかもしれませんが、休憩時間を取ってあげたり、打ち合わせの時間帯をちょっと工夫するだけで気分よく仕事ができたりするものです。そういう意味でもホスピタリティの高い秘書さんの存在意義は大きいと感じています。
逆に、秘書さん自身が注意をしなくちゃいけない点もありますよね。例えば、社内のメンバーから怖がられている秘書さんってたまにいますよね。「社長に話す前になんで私を通さないんだ!」みたいなことをしてしまっているようなタイプ。こういう方がいると社内のメンバーが経営者に話をする場面で変なハードルが上がってしまいます。
秘書は社内に対する影響力がすごく大きいポジションであるがゆえに、気を付けるべき点も大きいと思っています。
秘書とは、経営者の「良きリスナー」であり、重要な情報源
笹木:
確かに……。そういう秘書さんたまにいますよね。
ホスピタリティ以外で、松村さんが秘書さんに求める点はどんなことがありますか?
松村:
よく言われることですが、経営者は基本孤独ですからね。社内には経営者のディスカッションパートナーとして、経営企画やCFOという存在がいます。もちろん彼らは頼りになる存在なんです。ただ、そういう役職とは別に、秘書さんには経営者の「良きリスナー」、いわゆる「聞き上手なパートナー」としての役割も大事だと思います。
経営者だって時々は愚痴をこぼしたいですからね(笑)。
経営のことを話す実務的なパートナーではなく、メンタル的なパートナーとでも言いましょうか。そういった意味での役割は大きいと思います。
もっと具体的にお話しますと、例えば「最近なんとなく社内の雰囲気が暗いような気がする」などと感じることがあった場合。人事に依頼して「社内アンケートを実施する」というのも1つの方法です。
しかし一方で、経営者の秘書さんが社内に独自のネットワークを持っていて「どうやら工場の方ではこんな話が出ているようですよ」みたいに情報を耳に入れてくれるようであれば、それも有益な情報です。
笹木:
社内での情報収集はとても大切ですよね。
そういった優秀な秘書さんがいるだけで、会社全体が上手く回っているというお話もよく伺います。
松村:
優秀な秘書さんであればあるほど、そういった情報収集が上手だと思います。そして、経営者は情報源としての秘書さんを大事にしていると思います。
もちろん、情報の「質」というか「精度」は経営者側が判断をする必要があります。ただのうわさ話を報告しているのか、それともきちんとアンテナを立てて上司に有益な情報をキャッチしているのか。ただ、秘書さんとの関係性が長くなってくるうちに、そのあたりは我々も自然に感じ取れるようになってくるものです。
経営者自身が直接そういった情報を取りに行くというのは難しいものです。オフィシャルな「社内調査」みたいなもので吸い上げる情報ももちろん大事です。ですが、それと整合性が取れるような「現場の生の声」を拾い上げ、自分で咀嚼して、必要に応じて自然な形で上司に報告ができる秘書さんだと経営のパートナーとして重要な位置付けになってくると思います。
笹木:
溢れる情報の中で、上司にとって本当に必要なものを見極める力が求められてきますね。
松村:
言葉にしてしまうと簡単なようですが、これはなかなか難しいですよ。情報源の質やどれぐらい真実性が高い情報なのかなどと考えると、リスクは高いです。経営者に対して情報を上げるわけですからね。
やはり上司と秘書、お互いの信頼関係があってはじめて可能になることだと思います。
経営者の意思決定になんらか影響を及ぼせるわけだから、秘書というのはすごく大事な役割です。そして、経営者側もそのぐらいの意識を持って秘書さんと仕事をするべきだと思います。
笹木:
だんだん高度な話になってきましたね。秘書さんの在り方や判断能力が問われますね。
会社の状況も考慮したレベルの高い仕事
笹木:
ところで、秘書さんは経営のことや、社内のビジネスについて知っておく必要があると思いますか?
松村:
私は知っているべきだと思いますし、知ることができる立場にいると思います。
もちろん会社によって異なると思いますが、過去には重要な会議には秘書さんに同席してもらって、議事録作成を担当してもらっていたこともありました。きちんとした議事録を作るって意外と大変ですからね。そこまで求めるとなると、高い能力が必要になると思います。
ただ、そうなってくると、ほぼ経営者と同レベルの情報が秘書にも入ってくるようになりますよね。その情報をもってスケジュール調整をすると、ただ空いている時間に予定を入れていくような仕事の仕方とは変わってくるわけです。会社の状況を考えて、優先度をつけてスケジュールの提案することが可能になってきます。そうなるとさらにレベルの高い仕事になってくるのではないでしょうか。
笹木:
松村さんの秘書さんに対しての理想像は他にもありますか?
松村:
経営者の生産性を上げるために、ご自身で考えて提案してくれてそれを実行してくれるという方が理想ですね。大変だと思いますけどね!
秘書さんも会社組織というチームのメンバーです。例えば、社内メンバーが経営者に何か相談したいとき、いきなり相談する前にまずは一旦秘書さんに話を持っていってみる。
その時点で「その案件だったらこんなタイミングで、こんな風に持っていくといいですよ」とアドバイスしてくれたりすると、社内全体の生産性を上げる存在にもなっていると思います。
良い意味でゲートキーパーと言いますか、そんな役割を果たしてくれると組織全体としても理想的ですよね。
「秘書の評価が難しい」は、上司の責任逃れ?
笹木:
ところで、秘書さんたちがよく悩んでいるポイントで「評価」という話題があります。そこについてはどうお考えですか?
松村:
確かに仕事の特性上、定性でしか評価できない部分があり難しいとは思います。ただ、基本はやっぱりお互いに期首のタイミングで目標設定をすること、そしてそこをどう評価するのかをきちんと決めるというのが大原則だと思います。
もちろん、期首の目標設定の前には、秘書としてどのようなビジョンを持って仕事を作り上げていくのかというのを上司と秘書がともに共有しているべきだと思います。その上で「じゃあ今年はこの5項目にフォーカスしよう」などと分かりやすく決めることが大事なのでは。そこできちんとピントが合っていれば、問題ないはずです。それをやっていなくて「秘書の評価が難しい」と言っているならば上司側の責任逃れだと思いますよ(笑)。
笹木:
そうそう。確かに「秘書さんの評価で悩んでいる」という経営者はたまにいらっしゃいます。
松村:
そもそも秘書さんの業務をきちんと定義できている会社が少ないと思います。だから難しさがあるのかもしれません。
でもそれは「決め」の問題なのではないでしょうか。「これが秘書の仕事の内容です」「今期フォーカスしてもらうのはこれです」「だからここまでやってくださいね」「そしてその評価はこのようにしていきましょう」と決めればよいだけのことです。
難しいかもしれませんが、評価は定性的でいいと思います。例えば、「社員から『秘書さんのお蔭で社長との面談時間がすごく取りやすくなって、業務効率が上がった!』という声が増えてきた」とかそんなことでもいいと思います。定性的でいいから、社内で何をどう変えていくのかということを考えていけば評価はできると思います。
松村:
松村さんは秘書さんの評価はご自身でなさっているんですか?
松村:
はい。自分で評価しています。
でも、まだまだ構築中ですし、今はリモートでの勤務ということもありますので難しい面もありますしね。もちろん秘書さんとは対面で仕事ができるに越したことはないと思います。でも、ある程度密にコミュニケーションを取って、お互いの信頼関係を作るということを前提にすれば、リモートでも大きな不都合はないかと感じています。要はやりようだと思いますよ。
例えば、弊社は海外にたくさんの拠点がありますが、コロナ禍において海外出張が禁止されてしまい、各拠点の担当者と直接は会えていないです。でもオンラインでも顔を見ながらのミーティングを重ねていけばきちんとコミュニケーションが取れるものだとわかってきました。
1回も直接顔を合わせたことのない海外メンバーを評価して、配置していくこともできています。だからリモートでもやりようはあると思っています。そこを言い訳にせずにできることをやっていく前向きな気持ちが大事ですね。
笹木:
今日はありがとうございました!
上司側の視点で秘書という仕事についてお話しいただき、とっても有意義な時間でした。
秘書のみなさん、がんばっていきましょう!
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