広告革命4.0 ついに未来の広告が動き出す 第三章:ブロックチェーンが広告を変える

第三章:ブロックチェーンが広告を変える


・第三のIT革命

第一章で述べたように、インターネット上にはさらに様々な広告媒体が乱立し、インターネット自体は、インフラとして機能しています。しかし、インターネットインフラ上の広告媒体はセキュリティ面や情報の信頼性の面で課題がありました。
例えば広告自体の問題以外にインターネット広告の仕組みを利用した不正広告が存在します。悪意を持った第三者が広告主になりすまし、狙ったWEBサイトに不正広告を仕組みます。不正広告が掲載されると、ユーザーがWEBサイトを訪問するだけで、コンピュータウイルスに感染してしまうのです。これをマルバタイジングといいます。有名大手のWEBサイトだからといって安心はできません。有名なサイトほど狙われやすいので、セキュリティに穴があれば、そのような広告を仕組まれてしまう可能性があります。今は対策が進んで、その様な被害にあったという話は聞かなくなりましたが、対策は後手後手となりやすく、イタチごっこの状況ですので、また新たな手口がでてきてもおかしくありません。
これらの課題を克服すべく、信頼性が向上した次世代インフラとして、ブロックチェーン関連の開発が急ピッチで行われています。
広告以上にセキュリティ管理が厳しい金融系の技術が続々とブロックチェーン上に登場していることからも、ブロックチェーンが信頼性の向上した次世代インフラとして位置づけられていることがわかります。これらの技術はフィンテック(Financial Technologyの略)と呼ばれ、金融技術と訳されますが、例えば、東カリブ中央銀行が世界初の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を導入発表するなど、世界各国の中央銀行が実用化に向け、仮想通貨(CBCC)の実証実験を行っています。すでにこの分野では、国家単位での研究開発が進んでいるのです。まさに「あたらしい経済」の幕開けです。
今後は様々な技術がブロックチェーン上で動き出すことでしょう。もちろん、現在インターネット上で動いているアドテク(Advertising Technologyの略)も今後は主戦場をブロックチェーン上に移すと考えられます。
第二のIT革命であるインターネットの登場から、第三のIT革命であるブロックチェーン技術の登場を経て、現在は革命真っ最中なのです。
このように、ブロックチェーンを活用した経済圏が急速に作られています。この、ブロックチェーン技術を前提とした未来の経済圏のことを『ブロックチェーンエコノミー』と呼びます。
その中で、広告革命4.0で形作られるシステムは企業情報送受信(=広告)インフラを担います。

まとめ

インターネットはセキュリティ面で問題がある。
その上を走るブロックチェーンなら信頼性を向上させられる。
ブロックチェーンを活用したブロックチェーンエコノミーが急速に作られている。


・そもそもブロックチェーンとは

今まで、さんざん登場してきた、ブロックチェーンですが、ここでは、改めてわかりやすくご説明します。
ブロックチェーンとは、ビットコインの中核技術として登場した分散型台帳技術のことで、チェーンのように暗号化された情報をブロック状に追記していきます。
ブロックチェーンの特徴としては、安全、中立、低コストの3つが挙げられます。
まず安全面ですが、ブロックチェーンでは、逆転の発送で安全性を担保しています。例えば、お宝を山に隠したとします。誰も在り処を知らないので、安全なように見えますが、場所を突き止められてしまうと、こっそりと盗まれ、取られたことにさえ気が付かないかもしれません。それに対して、お宝を誰でも見ることができるお山の頂上に置いておき、盗もうと近づいた段階で取り締まるようにすれば、盗まれにくい状態を保てます。具体的に説明すると、分散型台帳管理と言って、お宝の在り処が書かれた台帳を大勢の人たちで持っているのです。資産の移動は台帳に書かれている情報をもとに行われますが、お宝をこっそり別のところに移動させようと一部の台帳を改ざんしても、みんなが持っている台帳に書かれているお宝の在り処と一致しなければ、その情報は採用されません。これによって、中央集権的な管理者が存在しなくても、安全に取引を行うことができるのです。また、メインサーバーを持たないので、システム自体の障害への耐性という安全性も特徴としてあげられます。
中立性では、中央集権的な管理者がいないので、勝手にルールを変更してしまったり、一部に対してだけ有利な取引を行うなど、恣意的にシステムが運用される心配がないので、国や立場を超えて中立的に情報の取引ができるのです。
低コストの理由は、特定の管理者がいないので、管理料のような中間マージンが発生しないことが大きな理由です。その他、セキュリティ費用やバックアップ費用、障害時の復旧費用などが抑えられる点も低コストにつながっています。

まとめ

ブロックチェーンの特徴は安全、中立、低コスト。
ブロックチェーンは特定の人に有利に運用することは難しい。
ブロックチェーンは中央集権的な管理者が必要ない。


・暗号資産(仮想通貨)はおまけ

ブロックチェーンといえば、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)を連想する人も多いでしょう。
ビットコインの価格が急上昇して「億り人」と呼ばれる億万長者が何人も登場しました。これによって、ビットコインを投機の目的として売買する人が爆発的に増えました。
結果的にビットコインが注目され、その根幹技術であるブロックチェーンも人々の知るところとなりました。
良くも悪くもブロックチェーン技術を一般に広めてくれたのは、ビットコインの売買ということになります。
ものの普及というものは、人々の欲望に左右されます。ビットコインでひと儲けしようという人たちのおかげで、ブロックチェーンに注目が集まったのです。

ここで、昭和世代に戻って例え話をします。
昔、テレビを録画するためにはテレビに外付けでビデオデッキを買わなければいけませんでした。
このビデオデッキの出始めには、2つの方式が競い合っていました。ベータ方式とVHS方式です。
ベータ方式はVHS方式よりも小型で画質も良く、ベータ方式のほうが有利に思われました。しかし、結果的にどちらに軍配が上がったかといえば、VHS方式でした。その普及の一因と言われているのが、アダルトビデオの存在です。
当時アダルトビデオといえば、殆どのタイトルがVHS方式で作られていました。世のお父さんたちは、家族のためといいながら、心のどこかでアダルトビデオが見たい気持ちもあり、「どうせ買うならVHS方式を」とVHS方式を選択したことでベータ方式よりもVHS方式の普及が早まったと言われています。欲望が普及を加速したのです。

話を戻して、ビットコインを稼ぐためにマイニングという行為を行う、マイナーもたくさん出現しました。このマイニング、実は、ブロックチェーンにとって非常に重要な作業なのです。
ビットコインを例に上げると、ビットコインの情報が書き込まれるブロックチェーンに新たな情報を付け足すためには、毎回約10分間、莫大な計算をしなければいけません。この計算を最初に成し遂げた人(コンピュータ)に報酬としてビットコインが与えられます。これをマイニングといいます。マイナーは報酬のために、毎回、莫大な計算の競争をしているのです。
これがなぜ必要かと言うと、ブロックチェーンつまり分散型台帳に追記される、ビットコインの情報(未承認のブロック)は、文字通り世界中に分散して存在します。これらのブロックが一部改竄されたとしても、他の大部分が改竄されずに残っているので、多数決をとれば、改竄されたかどうか判断できます。これら多数存在する未承認ブロックのうち、どれが最終的に正しいかを承認する承認者を決めなければなりません。中央集権的に管理していないシステムでは、何らかの貢献をしたものを承認者として認めるルールが必要です。ビットコインの場合は、莫大な計算を完了したものを承認者とし、承認された新たなブロックがブロックチェーンに追加されます。このように仕事量で合意が形成される仕組をPoW(プルーフ・オブ・ワーク)といい、このような仕組みをコンセンサス・アルゴリズム(合意形成)と呼びます。コンセンサス・アルゴリズムはこの他にもたくさん存在するので、簡単に紹介します。
PoW(プルーフ・オブ・ワーク):先程ご紹介したビットコインが採用しているアルゴリズムです。セキュリティは高いですが、51%攻撃という問題を指摘されています。また、マイニングにかかる電気使用量が問題になっています。ビットコインの他、ビットコインキャッシュやライトコインで採用されています。
PoS(プルーフ・オブ・ステーク):ステーク、つまり暗号資産(仮想通貨)の保有量で、確率的に認証者を決めています。計算を必要としないため、認証までの時間が短くて済みます。PoSでは、ブロック生成を、マイニングではなくフォージングと呼びます。こちらも、51%攻撃の懸念があります。また、保有量が多いほど有利になるため、流動性の低下が懸念されます。イーサリアムがPoWからPoSに移行しました。その他、カルダノで採用されています。
PoI(プルーフ・オブ・インポータント):PoSが保有量だけだったのに対して、PoIでは、保有量や取引量、取引頻度などを使って重要度スコアを作成し、認証者を決めます。PoIでは、マイニングに当たる言葉はハーベスティングです。ネムに採用されています。(ネムは2019年7月のアップデートでPoS+を採用しました)
PoC(プルーフ・オブ・コンセンサス):コンセンサス、つまり予め承認者を複数決めておき、その大多数が認めた場合に、承認される仕組みです。ブロックチェーンの特徴の一つである、非中央集権という部分に反しているので、恣意的に運用される可能性がありますが、中央集権のデメリットよりも、信頼できる組織によって構成された認証者が決まっているため、認証スピードが早いメリットがあります。このメリットを活かし、金融機関間送金や即時決済が特徴のリップルが採用しています。
他にもいろいろありますので、興味があれば調べてみてください。
ブロックチェーンを使ってできることは、暗号資産(仮想通貨)だけではありません。日立製作所の研究開発グループが2017年に発表したブロックチェーンパターンブックによると、ブロックチェーンが得意なビジネス領域は次の十一に分類されます。

1、転売/又貸しの追跡
2、相互に調整可能な価値
3、流通経路の選択
4、異なる価値を混在させた価値交換
5、支払元と支払先の割り振り
6、目的外使用の制限
7、累積された価値の保証
8、一時的な与信
9、業界台帳のマッシュアップ
10、コミュニティ与信
11、最適化のための解体と再編

ここに示したように、今後進んでいくスマート社会において、トークンエコノミーばかりでなく、シェアリングエコノミーや物流のトレーサビリティなど、様々な用途でブロックチェーンが使われ、インターネットインフラ上に、さらに信頼性が向上した次世代インフラとして機能していくことでしょう。


まとめ

仮想通貨は台帳を追記するための動機付けに過ぎない。
台帳を記載するルールにはいろいろなものがある。
金融以外にも様々な用途でブロックチェーンが使われていくだろう。

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