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【DX】デジタルは変革を起こす魔法の粉ではない

DX = Digital Transformationも定義が定まっているようで定まっておらず、使っている人、使われ方によって揺れがあるように思います。その中でも、影響力があり、ある程度、信頼性がおける定義といえば、以下二つが代表的なものと考えられます。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(経済産業省: 「DX推進指標とそのガイダンス」より)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(経験、体験)の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
(IDC Japan)

経済産業省の「DXレポート2」を見ましたが、「DXの本質は企業文化の変革」と書かれており、「企業文化の変革ができない企業は、デジタル競争の敗者となる」と書かれていました。

そういう側面もあるかなと思いながら読みましたが、デジタルという言葉に対する、ビジネスモデルだったり、企業文化だったりの因果関係がクリアではない、とも感じました。

そのため、個人的にもう一度、腹落ちのために考えていました。以前から英語の意味を調べるときに、Googleでイメージ検索で調べてみるということをよくします。日本語に訳すと同じ意味になる言葉で、文脈としてどちらを用いるのが適当か考えるときなどです。今回は"Transformation"でGoogle検索をしました。代表的なものは、このイメージです。

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青虫がさなぎになり蝶になる、とか、種子が発芽して芽になる、とか、つまり同一の個体(有機体)が姿・形を変えることを指しているように見えます。

企業のトランスフォーメーションはデジタルによってのみ起こるのか?

これを企業に当てはめると、文書の電子化のようなアナログのデジタル化(デジタイゼーション)がデジタルトランスフォーメーションのはずはありません。また、RPAやAIなどを用いていたとしても、それがプロセスの効率化にとどまっていた場合は、これもデジタライゼーションとして括られる範囲で、デジタル"トランスフォーメーション"ではないはずです。

一方で、トランスフォーメーションに成功した企業として有名なのは、フィルムメーカーから、医療機器、化粧品など多角化に成功した富士フイルムです。確かに富士フイルムは数十年前と比較すると、企業体としてトランスフォーム(変身)しています。ですが、それは必ずしも”デジタル”によるトランスフォーメーションではありません。

元々はフィルム主体のメーカーであった、富士フイルムやコダックは、デジタルカメラの登場という、デジタル製品による破壊的イノベーションにさらされました。それが社会全体で起きていたデジタルトランスフォーメーションの渦から発生した一つの事象として、とらえることはできます。

そのような中、片方(コダック)は衰退し、富士フイルムは企業のトランスフォーメーションによって生き残ったわけです。

こうした事実をとらえると、経産省のDXレポートもそうなのですが、昨今のデジタルやIT業界、また関連メディアから喧伝される言葉は、危機感を煽る方向が間違っているように感じます。

産業や社会全体に対して影響しうる、デジタルを用いた破壊的イノベーションが絶え間なくといっていいほど発生しているのは事実です。産業や社会がデジタル技術を触媒としてトランスフォームしている姿をとらえて、デジタルトランスフォーメーションということは違和感はありません。

また、それによって今までマーケットで主導的位置にあった企業が、存続の危機に立たされるケースが増えているのも事実でしょう。しかし、それを克服する手段が、すべからく企業におけるデジタルトランスフォーメーションというのは、どうにも同意できません。

企業で必要なトランスフォーメーションから逆引きをしてデジタル戦略を推進せよ

考えてみれば以前から経営戦略に従属する形で、例えばIT戦略があり、人事戦略があり、SCM戦略があり、という風に使われてきました。一方で、デジタルトランスフォーメーションは、トランスフォーメーションに対してデジタルが主になっているようなきらいがあります。

デジタルが企業を構成する要素として存在感を増しているのは事実ですが、ここではデジタルではなく、トランスフォーメーションが主であるべきだろうと思います。

だからといってデジタルを軽視していいわけではありません。トランスフォーメーションを起こすための枠組みのなかで、重要なビルディングブロック(構成する要素)の一つであることは間違いありません。

ただし、言い換えれば、ビルディングブロックの一つでしかないので、デジタルが魔法の粉で、それだけで企業のトランスフォームができるわけではないということです。

産業や社会のデジタルトランスフォーメーションにされされている企業は、企業において必要なトランスフォーメーションから逆引きをして、デジタイゼーション、デジタライゼーション、またそれに合わせて企業文化やビジネスモデル、プロセスの変革を戦略的に起こしていく必要性があります。


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