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「名言との対話」8月15日。出口裕弘「長いことフランスは、超難解な言語理論を世界に向けて発信してきた。そのあげく、こういう“人生”を満載したナマでしゃれた作品が書かれ、あらためて世界に発信される。それがたぶん、この国の底力というものなのだろう」

出口 裕弘(でぐち ゆうこう、1928年8月15日 - 2015年8月2日)は、日本の作家、フランス文学者。

旧制浦和高等学校で理科から文科甲類に転科。同学年の澁澤龍雄(後の龍彦)と知り合う。東京大学文学部仏文科卒業。

1962年9月、パリ大学文学部に私費留学した。1963年、フランス語専任講師として一橋大学に赴任。1970年から教授。1977年から1978年まで、ソルボンヌ大学に国費留学。フランス第2帝政期の詩と小説の研究、現代思想の紹介につとめる。1992年退官。

1997年には、旧制浦和高校時代の親友だった澁澤龍彦との膨大な書簡を基にした「澁澤龍彦の手紙」を発表。2007年「坂口安吾 百歳の異端児」で伊藤整文学賞、蓮如賞を受賞。2015年、86歳で死去する。

著作に「ボードレール」、訳書にジョルジュ・バタイユ「内的経験」、小説に「京子変幻」「東京譚」など。

「生誕の災厄」という著書には、「精神科医の著作なら、患者の言葉しか私には興味がない。評論の場合は、引用部分だけだ」「どのような種類のものであれ、成功は例外なく内面の貧困化を招く。私たちにおのが正体を忘れさせ、人間に限界があるという痛苦に充ちた意識を、私たちから奪い去ってしまう」など、醒めた言葉が多い。

「ビールの最初の一口―とその他のささやかな楽しみ」(フィリップ・ドレルム翻訳:高橋 啓 出版社:早川書房)の書評では、「人生は自分の映画を撮っているから、車のフロントグラスがスクリーンになり、カーラジオがカメラになることだってある」という言葉を紹介し、「長いことフランスは、超難解な言語理論を世界に向けて発信してきた。そのあげく、こういう“人生”を満載したナマでしゃれた作品が書かれ、あらためて世界に発信される。それがたぶん、この国の底力というものなのだろう」と語っている。国力というものは実は文化力に多くを負っている。フランスという国の魅力と底力はそこにある。そのことを出口裕弘は教えてくれる。

高校時代以来の40年間以上にわたる澁澤龍彦との交遊は「澁澤龍彦の手紙」を生み、その渋澤に自宅で紹介された三島由紀夫への傾斜は、「三島由紀夫・昭和の迷宮」という本を生んでいる。この3人は魂でつながっている仲間だったのだ。

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