本音
本当に言いたいことを言い、
本当に書きたいことを書く、
というのは、苦しいことなのかもしれない。
自分の本を書こうとして、そう気づいてしまう。
人から問われて答えるときには、
本音が出ないこともないけれど、
問われないのに本音を語るのは、むずかしい。
と言うより、問われなければ、本音さえ出て来ないで、
自分の本音が何なのかさえ分からない。
と言いつつ、ぼくは、テレビを見ながら、
いつも、文句を言っている。
テレビの中で語るコメンテーターの意見に、
あれやこれやの反論が、心の中に自然に出てくる。
一人の時は、心の中で言っているか、ひょっとしたら独り言のようにつぶやき続けているかもしれない。
そばに妻でも居ようものなら、その文句を次々に口に出してしまう。
そうする自分の気持ちの中には、
自分の思いを妻に聞かせて同意を得たいという意識や、
自分と同じように思わせたいという意識が働いているような気がする。
たぶん、きっと、そうなんだろう。
そのとき語っている自分の言葉は、本音なんだけれど、
その本音を、尋ねもしないのに、一方的に聞かされ続ける妻は、大いに迷惑だろうな。
と書いてみて、これからは、妻とテレビを見るときには、黙っているようにしようと思った。
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