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スコットランド議会選挙で投票する

今日5月6日はスコットランド議会選挙の日で、全国各地で投票が行われています。スコットランドは昨年参政権を拡大し、現地在住の長期滞在の外国人や難民にスコットランド議会選挙と地方自治体選挙での投票権を与えることになりました。

私もスコットランドに来て14年になりますが、今年初めて参政権を得て、今朝娘を保育園に送る途中に投票してきました。

スコットランド議会の議席数は129で、スコットランド独立を目指すSNPが過半数を確保するかが最大の注目点となっています。SNPが公約にコロナ禍終息後の独立を巡る住民投票の開催を含めたためです。

SNPが実際過半数を獲得するかどうかは、各社の世論調査によれば極めて微妙で、SNPの獲得議席の予想は50台から70超えまでと大きくぶれています。ただSNPが第一党となり政権を組むことは確実視されており、過半数を取れなくても同じく独立支持派の緑の党と連立することで、独立支持連立政権を組むことは可能とみられています。

そうなるとスコットランド政府はSNPの公約通り、イギリス政府に住民投票開催の要求をすると思われますが、首相のボリス・ジョンソンはかねてから住民投票開催は認めないと公言しており、しばらく住民投票の開催は行われないとみてよいかと思います。SNPは要求が拒否された場合、最高裁に持ち込んで法的に争う姿勢を見せていますが、どうなるでしょうか。

こういったこともあり、今回のスコットランド議会選挙は世界的な注目を集めていますが、ひとつ気を付けておきたいのは、日本のメディアで誤解を招く記事が出てくるだろうということです。過去の記事で示しましたが、スコットランド独立は「イングランドとスコットランドの歴史的対立」、「民族精神の覚醒」、「北海油田の利権」とはあまり関係がないので、その辺を強調している記事は注意して読んだほうがよさそうです。

また日本語の報道の多くは経済面に焦点を絞りがちですが、独立を巡る有権者の姿勢を決めるのは必ずしも経済だけではないということも重要だと思います。「これといった産業のないスコットランドが独立するのは自殺行為だ」とか、「経済的に自立してやっていけないスコットランドに独立できるはずがない」というのはかなり偏った観点と言わざるを得ません。

経済ももちろん重要ではありますが、独立を巡って有権者を動かしているのは、誰がスコットランドをどのように統治するのか、スコットランドをどのような社会にしたいのか、という問い、価値観でもあるというように感じます。スコットランド独立運動を理解するためには、経済だけではなく、最終的にスコットランドがどのような政治、どのような社会を目指し、どのような国になるべきなのか、という包括的な観点が必要であるように思われます。

2016年のBrexit投票で突き付けられたのは、有権者にとって大事なことは経済だけではなく、一見経済的には理に適わないことでも、有権者にとっては重要な問題があり、それが選挙や住民投票の勝敗を決することもある、ということでした。スコットランド独立問題がBrexitと同じだとは言うわけではありませんが、経済重視の観点では理解が限られるということは共通しているかと思われます。

スコットランド議会選挙の開票は日曜まで続きます。どのような結果になるでしょうか。注意してみていきましょう。





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