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レビュー『ヘルスケア・イノベーション』:ヘルスケア業界の入門書

 この記事では、私の読んだ書籍『ヘルスケア・イノベーション』の感想をお伝えしたいと思います。(後半は私の脱線した話もあります)

 この本を読もうと考えたきっかけは、今年6月~8月で大阪府高石市の「ヘルスケアビジネスオンライン研究会」に参加したことです。共著の小野さんが高石リビングラボの運営に関わっておられ、この書籍のことを知ることができました。

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1.本の概要

 この本では、ヘルスケア=健康増進に関する産業の動向や、新しく事業参入するにあたっての基本的な情報が紹介されています。ビジネスコンテストに関する情報、科学的根拠(エビデンス)の収集の仕方、事例紹介などが紹介してあります。

 主に、ものづくりやITで一定のスキルがある人や業種が、ヘルスケア産業に参入する際に必要となる考え方について、分かりやすく説明してあるように感じました。紹介してあったHPをこちらにもリンクしておきます。

2.まちの健康づくりの立場で感じること

 私自身、健康増進について行政の保健師さんのお話を聞いたり、地域住民向けての講話をするなどして健康の課題を知っている反面、ものづくりやITなどのスキルはありません。自分が事業者側として活動する立場でないので、あまり自分ごととして読むことはできなかったように感じます。書籍としては理解できますが、自分自身に照らし合わせると、少し遠い世界のようにも感じました。

 しかし、ヘルスケア業界にこの書籍に説明してあるプロセスを踏んで参入を目指す企業が多くあることをイメージすることができました。こうした企業のことを知ることは、今後コラボしていくために大切だと感じました。

 住民に近い立場で活動をしている私としては、新しく挑戦を始める企業と手を組んで実践することができれば、ヘルスケア業界全体を盛り上げ、地域を健康にすることができると思います。まだ発展途上のヘルスケア産業には、企業と住民とをつなぐための通訳のような存在は必要だと感じています。私が参考にさせてもらっている高石市は「高石リビング・ラボ」住民に企業のモニターになってもらい、企業の成長に貢献しているということです。

 勝央町でも同様の取り組みができるよう、アンテナを張って企業と連携できるようにしたいと思います。ビジネスコンテストやベンチャー企業は斬新で今までにない提案をしています。こうした業界の情報をインプットすることを心がけておきたいと感じました。

3.ちょっと脱線した話:これからのポイントは「マインドセットをどう変えるか」だと感じた

 まだヘルスケア業界は事業としては収益化に課題があったり、社会的な機運が盛り上がっていないなどの課題があります。国の保険制度との兼ね合いでインセンティブが働きにくいという構造的な問題もあります。事例として数社紹介してある企業はまだ発展途上といった感じで、これを他業種の方が読んで可能性を感じるか、というとまだもやもやした感じは否めない感じがしました(私などが評価するのは大変おこがましいのを承知ですが)。

 書籍の中で、大企業こそがリスクをとって参入するべきだという言葉がありましたが、市場が成長していない段階で大きなリスクを負うことも難しいため、「タマゴが先か、ニワトリが先か」というような状態にあるように感じます。おそらく、大企業が本気になればという著者の期待の表れなのだと思いますが、現状はまだ過渡期でしょうかね。

 その理由はなぜかと考えると、「健康経営」という言葉がやっと我が国でも浸透してきましたが、まだまだ新卒採用、終身雇用、自己犠牲賞賛、残業は頑張っている、という一時代の成功体験に基づいた”非ヘルスケアカルチャー”は根強いと私は感じています

 そもそも、仕事は何のためにするのか、健康を犠牲にしてまで仕事をする必要があるのか、という根本に立ち返ると、本来ヘルスケア業界の裾野はとても広いのではないかと感じています。健康で、幸せな暮らしをするために仕事をするという訳だと思いますが、それをなかなか公言しにくいのが日本のカルチャーだと思います。仕事を例に出しましたが、これは、教育、住宅、スポーツ、すべてとのものとリンクすることと思います。「からだに心地よい=幸せ=自分らしい」という考え方が広がると、可能性を大きく感じます。

 ここで、2020年10月に狂犬ゼミで学んだ宮崎県新富町の「こゆ財団」さんことを思い出しました。ここでは「well-beingの追求」を単なるスローガンでなく、企業、行政と一緒に地に足をつけて進めています。

個人の幸福度の向上やwell-beingの追求こそが重要。すべては一人ひとりの幸福のためにあり、あとのことはぜんぶ「手段」でしかないと思っています。
(こゆ財団代表理事 齋藤潤一氏)

 このようなカルチャーのある地域をつくれるようにすることが、まちづくりの立場でできることのように感じます。先駆的なスキル、コンテンツを持った企業が「ここでトライアルしたい」と思わせられるような地域づくりを目指したいものです。お読みいただき、ありがとうございました。

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