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【会いたい人を、撮りに行く。_#011】タイ野菜農家・サタポン夫妻

サタポン農園の隣町に最近できたタイのお寺にて


■サタポン農園

茨城県に、ちょっと変わった農家がある。
タイ人の旦那さん(サタポンさん)と、ラオス人の奥さん(シーサアットさん)が経営している「サタポン農園」である。

日本国内では、「後継者がいなくて畑を維持できない農家が、『畑を放置しておく訳にもいかない』」という理由で、使いたいという人に安価(時に無料)で畑を貸し出しているケースが多いという。

サタポン夫妻も、10年ちょい前に同じように畑を借りて農業を始めた。
理由は、当時夫婦で経営していたタイ料理店で必要な野菜を、安定して手に入れるためであった。パクチーやホーリーバジル、東南アジア独特のインゲンやナスや空心菜などなど、現地の味を再現するために重要な野菜が、なかなか日本では手に入らないので、「それならば栽培しよう!」と始めたのだという。

「採れたてのタイの野菜が売っている!」という噂は徐々に関東近県で広がり、いつの間にか、<毎日の農作業の後、夜にワンボックスカーで都心部の何か所かを巡回し、収穫したてのタイ野菜を販売する>という独特な営業スタイルが定着した。

関東近郊で営業するタイ料理をはじめとする東南アジアレストランにとっては、このサタポン農園のサービスは非常にありがたいものであった。
その近郊に住む東南アジア系住民も、喜んでそこで野菜を買っている。
更には、どこかで「タイ野菜の移動車販売がある」と聞きつけて買いにくる日本人客もいるという。
深夜にもかかわらず、サタポン農園の移動販売車が到着すると、たくさんのお客さんが列をなすらしい。

■一日農業体験!

友人である<移民の食文化を紹介するYouTuber>Hiro Kayくんが、サタポン夫妻の知り合いになっていたので、お願いして2021年に「一日農業体験@サタポン農園」に参加させてもらった。
ご夫婦が「どれくらいの広さなのかよく分からない」という広大な農地を、ママとママの娘さんの案内でパトロールし、パクチーやらタイインゲンやらタイナスやらレモングラスやら、たくさんの野菜の収穫に参加させてもらった。

めちゃ広大な農園を4人でパトロール♪
東南アジアな野菜をたくさん採ります!

そしてお昼には、いちばんの楽しみであった、「サタポン農園採れたて野菜を使った、ママお手製のタイ料理&ラオス料理」である!
めちゃ美味しかったです!
本当に感動しました!!
(パパの料理もめちゃウマなのですが、この日はママが作ってくれました♪)

いちばんの楽しみの、ママの手料理!
サタポン野菜満載の、ガパオとグリーンカレーを頂きました♪


採らせてもらった野菜をたくさん頂いて帰っての料理も、めちゃ楽しかったです!

家では、タイ野菜のパスタを作ってみました♪


■ママの誕生日会!

茨城県幸手市に、2年ほど前にできたワット・プッターラーム

今回は、「日曜日にサタポン農園でママの誕生日会やるよ!」と誘って頂き、またHiro Kayくんの車に乗っけてもらって伺うことになりました!
しかし直前に「誕生日会は土曜日にする。日曜日は隣町のお寺でソンクラーン祭りに行くよ♪」との突然の連絡が!
急遽目的地を変更してお寺に向かうことに!
実の娘さんまで翻弄されるトリッキーで大らかでマイペンライなママの大らかさとスケールのデカさがチャーミングです♪(ママはラオス人ですが!)

…ということで、幸手というエリアに一昨年できたという寺に集合。
昼頃には何十台もの車が駐車場を埋め尽くし、たくさんのタイ人や近隣の日本人たちが集まり、様々なタイ料理が炊き出され無料で振舞われていた。

美味しそうなタイ料理がたくさん炊き出されています!


サタポン農園の採れたてパクチー山盛りのスープや、鶏肉の煮込み、牛肉の揚げたのとか、めっちゃ辛いのもあったけど、餅米と一緒に美味しく頂く。
タイ人のオバサンもオジサンも、お姉さんもお兄さんも、子供たちもお坊さんも、みんな大らかで優しく笑顔で、とても穏やかな空気に満ちている。
たくさんのタイの人たちと、その知人か近所の日本人家族たちもちらほら来ているようで、タイ料理を一緒に楽しみながら交流しているようで素晴らしい。

仏さんに献上する花を担いだ女性たちが、陽気に歌い踊りながらお堂へ入っていきます♪
そしてご本尊に向かって礼拝。


思うに、故郷を離れ異国の地に働きに出て、長くその地で暮らす人々は、最初は衣食を安定確保するために必死になって働くのだろう。
そして、ようやく衣食が足りてなんとか安定して暮らしていけるようになると、今度は「心の拠り所」を求めて、仲間内でお金を集めて故郷から僧侶を招聘し、お寺を建立するんだろうなと思う。特に生活の中で仏教の占める部分が大きなタイの人たちは、そういう思いが強いんだと思う。

そういう人たちが、自分たちで作った寺で、タイ暦の新年を祝い、みんなの健康や生活の安寧を祈念する場は、やはり穏やかで優しい空気の流れるステキな空間でした。(水掛けは本場ほど激しくはありませんでした!)

■移民として日本に来た、パパさんとママさん

建設労働者として来日して何十年もキツイ仕事を頑張り続けたパパと、ラオスからの政治難民として日本に亡命し日本語を覚え、真面目にコツコツと働き続け女手ひとつで子供たちを育てたママの、「かなりヘビーな人生を歩んできてるから、ちょっとくらいのことではビクともしないけど、果てしなく大らかで、そして穏やかで底抜けに明るく優しいキャラ」と相まって、茨城県のタイ寺で、とても爽やかな気持ちを堪能させてもらいました。

サタポン農園のパパさん・ママさん、美和さん、そして同行したHiro Kayくん・PanSq先生、そしてお寺でいろいろとおもてなししてくれたタイ人の皆さん・僧侶の皆さん、どうもありがとうございました。
新しい年が皆さんにとって、さらに素晴らしいものになり、皆さんと地域の住民の皆さんが、仲良く楽しく過ごしていかれることを祈ります♪

またサタポン農園に遊びに行きますね。
今回もありがとうございました!

Hiro Kayくんが、パキスタン人のケーキ屋さんで特注したケーキをプレゼント♪
パパとママを描いたイラストをパネルにしてお贈りしました♪
(サタポン移動販売ワゴンを背景に)


<参考文献と、その周辺のマニアックな展開>
★ 室橋裕和_タイ人もざわつく、「行列のできる」茨城産パクチーの秘密
https://news.yahoo.co.jp/feature/1789/
…Hiro Kay君がサタポン農園を知るキッカケとなった、2020年8月のジャーナリスト室橋裕和さんの記事です。農園と移動販売の様子が詳しく紹介されているので、ぜひ読んでみてください!
※Hiro Kay君はサタポン農園を紹介するNHK WORLDの番組を、この後すぐに作りましたが、Hiro Kay君が室橋さんを始めて知ったのもこの時で、その後二人は何度も一緒に北関東移民ツアーに赴き、その様子は室橋さんの最新作(↓下記)に詳しく書かれています!!

室橋裕和_「北関東の異界  エスニック国道354号線」

★ Hiro Kay_東京都と神奈川県と茨城県でラオス料理を知るための10皿

…Hiro Kay君がNHK WORLDの番組を作った後、サタポン農園のママさんの手料理に啓発されて書いたnote記事がこちらです。東京・神奈川・茨城のラオス系レストランで食べれるラオス料理を、マニアックに紹介しています!

★Youtubeチャンネル『Ethnic Neighborhood』

…Hiro Kay君は、<移民の食文化を紹介するYouTuber>であり、その主戦場が、Youtubeチャンネル『Ethnic Neighborhood』です。各地に点在する移民街を訪問し、故郷の料理や文化を継承して暮らす人たちの様子を紹介しています。取材対象がたくさんあるため大忙しで、サタポン農園はまだこのチャンネルでの番組化はされていていませんが、いつか取り上げられる筈! 「日本国内で気軽に訪問できる異文化」としての移民街を楽しく紹介しているコンテンツがたくさんあるので、ぜひ覗いてみてください♪
(海外ロケしているのも何本もあり、それも面白いです!)