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藤井風(日産ライブ“Feelin' Good”)風の時代に生まれるべくして生まれた存在

藤井風の日産スタジアムで行われたライブ“Feelin' Good”を拝見してきました。
今回、私は、初めて藤井さんのライブを拝見したのですが、多くの方が何度も落選しているというチケット争奪戦。
なぜか一次先行で、希望日の初日に普通に当たって、本当に幸運だったと思います。
初めて生ライブを拝見した藤井さんの印象は、やはり圧倒されるスケール感でした。
ラジオトークでも簡単に話していますが、あらためて記事にしました。



ライブレビュー


冒頭の客席からの登場は、多くの観客の予想を遥かに超えたものだったように思います。
例えば、好きで好きでたまらないアーティストのライブのチケットをやっとの思いで手に入れ、スタンド席に座ってワクワクしながらも、アリーナ席で無かったことに少し残念な気持ちがどこかにあったとしたら…(いやいや、スタンド席で十分なのですが)、自分の横に、その憧れのアーティストが普通に座っていた!!
なんて、素敵なことが、人生の中で、どれほどの確率で起きるでしょうか。
それだけで、奇跡のような瞬間が始まるのです。

少しでも近づきたい。
少しでも感じたい。
そう思って、ライブに参加するファンの気持ちに寄り添った彼の素敵なアイデアだったように感じます。
そして、気さくで、デビュー当初から全く変わらない岡山弁。
この岡山弁を聞くたびに、「ああ、風さんは、変わっていない」と安心する人がどれぐらいいるでしょう。

そんなファンの気持ちを受け止めるかのように、スタジアムの通路を堂々とゆっくり1人で歩いていく。
ニコニコしながら、堂々と歩いていく。
その風格だけでも、もう、彼が普通の人でないことをまざまざと感じさせるのです。
そして、中央に置かれたピアノ。
ピアノに座って、普通に弾き始めた「Summer Grace」
澄み切った音色がスタジアムの空間に響き渡って、スタジアムは静寂に包まれる。
非常に印象的なオープニングでした。

私は今回、初めて彼のライブにリアルで参加しましたが、私の席は、アリーナ後方席。
アリーナの後方だったのもあってか、最初、1曲、2曲は、音が反響して、正直、ちょっと聴きにくかったです。
その時、脳裏に浮かんだのは、4月に物議を呼んだAdoの国立競技場の音響問題。
野外ステージでは、特に、スタジアムのようにすり鉢状になっている場所の音響は、スタッフさんが非常に苦労するだろうなぁと今回、体験してそう思いました。
すり鉢状になっている分、普通のホールよりも音響が反響しやすい一面を持っているかもしれません。
「ああ、こんなふうに反響するのか」と思って、今日は、仕方ないなぁ、と諦めたのですが、いつの間にか解消されていて、全く残響を感じなくなっていました。
さすがですね。スタッフさんの努力を感じました。

藤井風の魅力はなんと言っても、圧倒的なスケール感です。
今回もそれを随所に感じました。
ラジオトークでも少し話したのですが、どんな場所でも、どんな状況でも、全く動じない、というか、「藤井風」というものがびくともしない、という印象を持ちます。
日本であっても、アジアであっても、欧米であっても、「ワシはワシ」という流儀を貫いていくところ。
マイペースで、彼独特のテンポ感を持っているところ。
これが、素晴らしいのです。

生で聞かせて頂いた歌声は、ゆるく怠惰で、たっぷりとしていて、非常に甘い歌声でした。
彼の場合は、豊かな声量と幅のあるソフトな響きが魅力的です。
その歌声が帯のように音を繋いでいくので、音楽のメロディーラインが非常に明瞭です。
バリトンの歌声は、やはりそれだけで非常に甘く心に突き刺さってきますね。
現代のハイトーンボイス全盛時代の中で、彼の歌声はそれだけ特別感があります。
大人の魅力溢れた歌声と言えるかもしれません。

私が印象に残ったのは、後半の『旅路』〜『満ちてゆく』です。
この曲は、2曲とも本来ならバラードで、しっとりと歌い上げていく楽曲なんですが、『旅路』は、今回、ライブバージョンというか、アップテンポのアレンジに変えてありました。
それが新鮮で、そこからの「満ちてゆく」が、一層印象的でしたね。

生まれるべくして生まれてきた藤井風の最大の魅力

アーティスト藤井風を語るとき、彼が持つ最強のコンテンツというものを意識せずにはいられません。
それは…

ピアノと英語です。

この2つのアイテムが、藤井風を最強のアーティストに押し上げているということは紛れもない事実だと私は感じています。

「風の時代に生まれるべくして生まれてきた」と書きましたが、「風の時代」というのは、それまで200年間、世界を支配してきた「土の時代」からの大転換と言われているものです。
「土の時代」
即ち、物や目に見えるもの、に価値のある時代から、
「風の時代」
いわゆる情報やネットなど、目に見えない実態のないものに価値がある時代。
この価値観の大転換が起きたのが、2020年12月末と言われています。
この価値観の大転換というのは、宇宙に配置された星の影響から時代を読み解く西洋占星術の考え方が根底にあると考えられますが、地球も宇宙の中の1つの星に過ぎませんから、当然、宇宙の法則や影響は受けていると考える方が自然でしょう。
その大転換が起きた2020年。
まさに世界的にコロナが猛威を振るった一年でしたが、この年に藤井風はメジャーデビューをしてきました。
「風の時代」に藤井風、なんて、名前でデビューされたら、もう、それだけで神がかっていると感じても不思議ではないでしょう。
そして、「風の時代」は、「土の時代」と違って、情報伝達も物事の進みも価値観の転換も、非常に早いスピードで行われる、情報化時代の始まりです。
そのスピード感に乗っ取り、さらに、CDのように目に見える音楽コンテンツから、デジタル音源という目に見えない音楽コンテンツへの急速な広がり。
そもそも、彼が注目されたのも、YouTube動画というネットコンテンツからですから、まさに、彼は「風の時代の申し子」とも言うべきアーティストであることが言えると思います。

藤井風の音楽そのものが洋楽

彼の音楽が他の多くのアーティストをスケール感で圧倒していると感じるのは、日本という国から、最初から飛び出していると感じさせるからです。

J-POPというものは、洋楽の影響を受けて生まれてきました。
即ち、J-POPの創世記のアーティスト達。大滝詠一、松任谷由実、山下達郎やサザンなどは、明らかに洋楽の影響を受け、音楽を作り出した世代であると言えます。
ですが、今、若者の洋楽離れが進んでいるのと同じように、20代、30代の若手アーティスト達は、洋楽の影響を受けていない人も多いと言えるでしょう。
藤井風は、幼少期から、ありとあらゆるジャンルの音楽が毎日、当たり前のように流れているという環境の中で育ってきました。
その彼が作り出す音楽には、日本の演歌も歌謡曲もジャズもロックもR&Bも、ありとあらゆるエッセンスが詰め込まれ、彼の中で十分に咀嚼され、新たな彼オリジナルの音楽として生まれ変わってきている、ということが言えるのです。

今回、彼のライブを拝見していて、客観的に感じたのは、「ああ、もう藤井風の音楽を聴けば、洋楽は必要ないなぁ」ということ。
彼の音楽がもう洋楽そのもの、という感じがしました。

アーティストが世界に自分の音楽を発信していくのに、必要不可欠な最強のツールであると感じる「ピアノ」と「英語」
この2つのツールを身につけている彼は、日本という国に留まる人ではない、ということを強く感じさせました。

日本語を話しながら、英語でメッセージを普通に交えていくグローバルな感覚と語学センス。
これは、今までの日本のアーティストの持ちえなかったものであり、音楽という国境や言語を超えていくコンテンツを補完する強力なアイテムを彼は、無意識に成長する中で身につけてきているのだ、ということを改めて感じさせたのです。

MCにみる人生哲学

今回、彼は、何度かMCの中で、「「どうせなんとかなります」「何かあっても、どうせうまくいくんです、最後には」という言葉が非常に印象的でした。

最後には、うまく行く、というのは、人生の成功哲学の1つの考え方でもありますが、彼が話すと、何の気負いもなく、「そのまま自然体でいればいいんじゃ」というメッセージにも聞こえてくるのです。

ファンに対して、「「みんなもライブに来てるつもりじゃろうけど、わしもみんなのライブに今日来てます」
「「あなたのネガティブを全て日産スタジアムの空に投げて帰ってください」
「ちょっと会いにいきます」

そんな言葉をファンに投げかける藤井風は、デビューした頃の彼の印象と寸分違わない。
どんなに欧米で人気を博しても、どんなに世界中でファンが存在しても、どれほどの大スターになったとしても、「藤井風は藤井風」
彼独特のポジティブな考えで、ファンを仲間と呼び、一緒に時代を歩いていこうとする存在です。

どんな時も、何が起こっても、自然体で、流れに任せていけばいい、必ず、最後には幸せになるのだから、というメッセージは、彼がどの場所にいても、世界的なアーティストになっても、根底に流れるものは変わらない、ということを強く感じさせました。

アジアツアーが発表され、どんどんスケール化していく彼のライブ。

出来たら、野外ではなく、アリーナかホールで、じっくりと歌声とピアノの音色を聴きたいと思いながら、会場を後にしました。

いつまでも耳の中に彼のバリトンボイスが残った夜でした。


青春出版社連載「人生を変えるJ-POP」の第一回に藤井風を扱いました。
まだ読まれていない方は、下記からどうぞ。



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