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いろ衣都つむぎ ~作業療法としての絵~

わたしは毎日絵を描いています。
今は詩画集をつくるため、詩をつける絵を描いています。
絵を先に描いて、それに詩をつけます。色えんぴつ、パステル、水彩絵の具と画材はさまざまながら、資料などは見ずに思いのままに描いています。
絵を描くことは、心の負担にならない趣味でした。小さい頃から絵は描いていたけれど、40代の頃、精神科の閉鎖病棟へ入院していたときに、大好きな手芸を主治医から禁じられ(根をつめすぎるから)絵を描くことにしたのです。
わたしは72色の色えんぴつを持って入院しました。
病棟での一日は、それはそれは長いんです。
その長い一日のあいだに、わたしは絵を描きました。
窓から見える風景や、花の絵や妖精の絵などを描いて、お掃除の人や、患者さんたちに見せていました。
わたしも具合が悪いので入院していたのですが、絵を描いていると、不思議なことに心がすうっと軽くなるのです。わたしが描く絵はたいてい明るくて、絵を見せると、他の人もわあって、やさしくなるみたいに見えました。
冬の白山の神々しい姿を描いたときは、主治医まで、「ぼくもいま白山写真に映そうと思っていたんだ」と嬉しそうに言っていました。
絵画の力を感じました。
絵を描くのは、わたしのなかからアウトプットする作業だと思うのに、描いていると、わたしのなかにインプットされものがあると思いました。
きれいな流れが注がれてくる感じです。
わたしは退院後は、ミシンを買って、お裁縫に明け暮れる日々を送りましたが、これもまた、作業をすることで、わたしのなかにきれいなものが溜められていきました。
その後、写真に夢中になったり、羊毛フェルトで人形をつくったりしながら、わたしはわたしにできることを探しました。
そして、いまの事業所に入り、また絵を描き始めたのです。
絵を描くのは安らぎです。
あたたかな光がわたしのなかに宿ります。
だから、これが作業療法になっているのだろうと思います。
わたしのなかからわたしのなかへ、不思議なパワーが行き交うのが感じられて、その度にわたしは強くなる気がします。

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