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鏡のなかの言葉(定期購読)

映画監督松井久子が編集長となり、生き方、暮し、アート、映画、表現等について4人のプロが書くコラムと、映画づくり、ライティング、YOGA等のワークショップ、そして編集長がお勧めする…
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2021年6月の記事一覧

稲木紫織のアートコラムArts & Contemporary Vol.26

2019年、33歳で早世した画家 黒坂麻衣さんの“最後の個展” スパイラルガーデンで開催中 「海辺の馬」 ほわ~っとした乳白色で、半透明のヴェールに包まれているような独特の色彩感。 どこか幻想的でノスタルジーを感じさせる、静謐な佇まいの絵を最初に見た時の感動は今も忘れない。後に親友となった画家、黒坂麻衣さんは惜しくも自ら命を絶ってしまったが、彼女の最後の個展『夢の中の風景』が、6月30日から南青山のスパイラルガーデンで始まった。 スパイラルガーデンの会場 本展は、遺作

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計算はできない。人生は梅にまみれながら進む【つくり手であること】

今の借家には、家の裏に人しれず小さな1本の梅の木があって、毎年よく実をつけてくれています。 通常、梅は、良くなる「表」の年と、そこそこしか採れない「裏」の年が1年ごとに交互にやってきます。しかし、この木と共に暮らして5年目にして、早くもそのカウントが分からなくなってしまいました。 たしか越してきて1年目は14〜15kgが採れて喜び、翌年2年目はほんの3〜4kg程度。そうか裏年だったんだね〜なんて言ってた記憶があります。3年目にはまた20kg前後が採れて、おぉこれぞ隔年結果!

なかほら牧場発、これからの食と農を考える②

コロナ禍で食料の安全保障に国民の関心が高まっている。 全国農業協同組合中央会(JA全中)は昨年11月に20代から60代男女2,500人を対象に調査した。その結果、対象者の約6割が食料安全保障に関心を持ち、そのうち7割の国民が国産食品を積極的に購入している事が分かった。 今般のコロナ禍で国民も食料の重要性を認識し農業の大切さに気付き始めたことがこの様な数字として表れたのであろう。 我が国の食料自給率は38%(2019年)と主要先進国の中で最も低い。この数字は農産物の輸入がなけれ

LEONIEとマイレオニーの旅14

ニューヨークからロサンゼルスへ5月のロサンゼルスは、街路樹に紫色の花が咲き誇る一年でいちばん美しい季節。日本ではもちろんのこと、ほかのどんな土地でも見たことのないジャカランダの木に薄紫の花(カリフォルニア・ライラック)が咲き乱れる時期にロサンゼルスにやってきたのは幸運だった。 昔、みうらじゅんさんが歌った『カリフォルニアの青いバカ』の印象が強いせいかロサンゼルスはいつも抜けるような青空のもと、深くものを考えない人の蠢く味もそっけもない町との先入観を持っていたし、ハリウッド映画

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自分史コラム 不思議な万病治療法 ②

世の中には、説明だけでは理解できないことばかり。 というよりも、そういったことがほとんどではないかと思う今日このごろ。 「コロナがまん延しているとあれだけメディアで煽っていながらオリンピック開催しちゃうの?」とか「安倍前首相が関与していたことが赤木ファイルでほぼハッキリしてるのに、なんで未だにお天道様の下を、しかも偉そうに歩いているの?」とか。 また、昨今の「ワクチン狂騒曲」においても、多くの人が自分の健康を損なうことへの恐怖と、メディアによる刷り込みの恐ろしさを感じます

LEONIEとマイレオニーの旅13

 映画『レオニー』の制作過程を記録するために過去の資料を繰っていたところ、事務所に残っていた写真ファイルの中に「マイレオニー」とファイル名がついた写真データが30枚ほど残っていました。今回はマイレオニーが結成されてから映画が完成するまでの写真をできるだけ時系列順にアップします。 マイレオニーはサポーターを募集するために、各地でさまざまなイベントを催しましたが、この写真は2006年9月22日に東京文京区と、2006年10月2日に横浜市あざみ野で行われた『折り梅』上映会のチケッ

ボーヴォワールが向き合った「老い」

 シモーヌ・ド・ヴォーボワールといえば、彼女の生涯の恋人ジャン・ポール・サルトルと並んで、戦後のフランスにおいて実存主義を掲げ活動した作家であり哲学者です。私も青春時代に、小説『招かれた女』や主著『第二の性』などを貪り読んで、「男女の性差は、単に生物学的なものでも運命でもなく社会的に構築されたものである」というジェンダー論の基本を学んだ、忘れることのできない存在です。あまりにも有名な『第二の性』に比べ、彼女が62歳の時に書いた『老い』を読んだ人は少ないかもしれません。  6月

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オンラインショップ・セレクション ひなた農園10(最終回)

少し書くことをお休みしている間に、春が来て梅雨になってしまいました。梅雨と言っても毎日猛暑ですが。 始めにお伝えしたい事があります。去年の6月から書かせていただいていたコラムですが、今回の号で最後にさせて頂くことになりました。短い時間でしたが、農家のお母ちゃんの独り言のようなコラムを見てくださりありがとうございます。今回は少し長い文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。 今年は息子が小学校1年生になりました。初めての小学校、新しいお友達、色々な事

なかほら牧場発、これからの食と農を考える①

岩手で中洞式山地酪農をされてながら、未来に伝える食と農についての提言をされている中洞正さんの連載コラムが始まりました! 日本食と牛乳 日本には縄文、弥生の昔から伝統的な食文化があったはずです。当地北上山系の昭和30年代前半までの食生活を「縄文文化の末裔」と表現した研究家がおります。 数千年にわたるコメ、雑穀、野菜、海藻、小魚を中心にした食生活がそれでした。 そこには仏教文化の影響もあり、牛乳などの畜産物は食文化の中にはありませんでした。 今「国民総半病人時代」といわれ、欧米

私が恋愛小説を書いた理由

なぜ憲法映画の後に、恋愛小説なのか? その理由を言い訳にならないように書くのは難しい。 いや、何を言っても言い訳と取られてしまうかもしれない。 創作者は本来、発表した作品のみで勝負すべきなので、これから書くことは 人に伝えるためというよりも、自分自身を振り返るものになるだろう。 アマチュアリズムが、アイデンティティー 映画監督の仕事を始めて25年が過ぎた。  その間に3本の劇映画と2本のドキュメンタリーをつくったが、それらはどれも「プロの仕事」というよりも、「アマチュアの仕

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稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.25

青柳いづみこ×瀬川裕美子 2台のピアノが紡ぐドビュッシー からストラヴィンスキーへ 定期購読している岩波書店発行のPR誌『図書』に、ピアニストで文筆家としても活躍する青柳いづみこさんが「響きあう芸術 パリのサロンの物語」というエッセイを連載されていて、いつも真っ先に読むほど愛読している。そこへ、友人のピアニスト瀬川裕美子さんから、2台のピアノでいづみこさんと共演すると伺い、ピティナ・ピアノ曲事典が主催する公開録音コンサート「ドビュッシーからストラヴィンスキーへ ~大気と大地

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こだわりが上手く語れない 【つくり手であること】

手元の辞書にはこうあります。 こだわり 【拘り】 他人はどう評価しようが、その人にとっては意義のあることだと考え、その物事に深い思い入れをすること。 おそらく、何においてもこだわりがない、なんて人はいないと思いますが、わたしは最近、自分のこだわりこそ上手く語れないなぁ、と思ったりすることがあります。 昨今エビデンスなる概念が幅を利かせ、なんとなく、感覚的なものへの信頼が失われているように思うのです。でも私のこだわりは感覚的で、且つ、好みの問題も大きいよな、と。 結局のと