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なかほら牧場発、これからの食と農を考える①

岩手で中洞式山地酪農をされてながら、未来に伝える食と農についての提言をされている中洞正さんの連載コラムが始まりました!

日本食と牛乳

日本には縄文、弥生の昔から伝統的な食文化があったはずです。当地北上山系の昭和30年代前半までの食生活を「縄文文化の末裔」と表現した研究家がおります。
数千年にわたるコメ、雑穀、野菜、海藻、小魚を中心にした食生活がそれでした。
そこには仏教文化の影響もあり、牛乳などの畜産物は食文化の中にはありませんでした。
今「国民総半病人時代」といわれ、欧米型の食生活への反省の兆しが現れ、伝統的日本食が見直されつつあります。このような中でこれからの日本食文化はどうのようにしなければならないか?その中で牛乳をどのように位置づけるか?が大きな問題だと思われます。

今までのように学校給食で子どもの頃から強引に飲ませるような消費のあり方は、もう通用しません。
また、安ければ何でも良いという食生活は今後続くと思えません。
牛乳のある基本的食卓をイメージしてみれば、ご飯にみそ汁、納豆、魚、野菜のお浸しの片隅にコップ一杯の牛乳があるという感じでしょうか?
肉食も週に一回か二回程度のぜいたくな夕食の食卓を飾る程度で良いのではないでしょうか?
それをどのようにして国民に定着させるかは別として、基本的には牛乳の消費量は国内で取れる草の量で生産の上限を決めるべきだと考えます。当然生産量は減ります。それで牛乳の価格が上昇しても、消費者は理解してくれるはずです。
フレッシュな牛乳は、現在海外から輸入することは不可能なわけですから、国内で生産する牛乳しか消費できないのです。国内供給量が少なくなれば価格が上昇することは当然です。

昭和30年代以前の食生活の中で、牛乳は滋養豊富な健康飲料として評価が相当高かったはずです。その後、工業的にあまりにも大量生産が進みすぎ、安い牛乳が生産者の経済を圧迫し、消費者には不健康な牛から生産された不自然な牛乳が届けられるようになり、牛乳の評価が下がったわけです。
今こそ牛乳の評価を復権させなければなりません。
消費者から本当に支持される牛乳は、健康的な牛から生産された自然な牛乳であるはずです。消費者が安心して飲める自然な牛乳ですと、消費者の評価が高まり、価格も当然上がります。

中洞正さんはこの春、写真家の安田菜津紀さんとの共著『おいしい牛乳は草の色』(春陽堂書店)を刊行されました。
効率優先の酪農ではなく、牛に無理のない自然な放牧を普及するのが使命であると考え、牛と人と自然の持続可能な未来を目指している中洞氏が営む牧場の春夏秋冬の姿と、生きる言葉を写真とともにつづった一冊です。興味のある方はぜひお読みください。
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%97%E3%81%84%E7%89%9B%E4%B9%B3%E3%81%AF%E8%8D%89%E3%81%AE%E8%89%B2-%E4%B8%AD%E6%B4%9E%E6%AD%A3/dp/4394880033

中洞 正(ナカホラタダシ)
1952年岩手県宮古市生まれ。酪農家。
東京農業大学農学部在学中に猶原恭爾(なおはらきょうじ)先生が提唱する山地酪農に出会い、直接教えを受ける。卒業後、岩手24 時間 365 日、畜舎に牛を戻さない通年昼夜型放牧、自然交配、自然分など、山地に放牧を行うことで健康な牛を育成し、牛乳・乳乳を開始。設計・建築、商品開発、販売まで行う中洞式山地酪農を確立した。
著書に『おいしい牛乳は草の色(春陽堂書店)』、『ソリストの思考術 中洞正の生きる力(六耀社)』、『幸せな牛からおいしい牛乳(コモンズ社)』、『黒い牛乳(幻冬舎)』など。

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