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鏡のなかの言葉(定期購読)

映画監督松井久子が編集長となり、生き方、暮し、アート、映画、表現等について4人のプロが書くコラムと、映画づくり、ライティング、YOGA等のワークショップ、そして編集長がお勧めする… もっと読む
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2020年11月の記事一覧

映画を見せる、広げる 03 『折り梅』100万人を祝う会の栞から

2004年の3月27日。前の回でも書いたように『折り梅』の観客動員数が100万人を超えた記念に、全国の『折り梅』応援団の人びと約250人が東京赤坂プリンスホテルに集まってくださって盛大なお祝いパーティーをしたとき、参加者の皆さんに配られた冊子があります。それを久しぶりに読みました。 そして、そこに書かれた全国各地の人びとの言葉に、たくさんの忘れていたことを 思い出しました。全国を旅して歩きながら、沢山の出会いに恵まれて、私の人生で一番幸せだった時期。いえ、私だけでなく、皆が映

LEONIEとマイレオニーの旅 03

2003年の2月。札幌で『ユキエ』を上映してくださった札幌女性映画祭の皆さんが再び集合して『折り梅』の上映会を開催してくれました。この3回目の表紙の写真は『折り梅』上映会の打ち上げ懇親会のときに撮ったものです。 私にとって自分よりも歳の若い札幌の女性たちとの出会いは特別で、この人たちのために、この人たちが喜んでくれるような映画がつくりたい…。そんな思いと動機もあって、イサム・ノグチの母親レオニーの物語を読んだとき、迷わず次の企画にと決めたのでした。 札幌モエレ沼公園を訪ねる

LEONIEとマイレオニーの旅 02

ドウス昌代さんの評伝『イサムノグチ 宿命の越境者』を読んで、母親レオニーの 物語を三作目にと思い立った動機は、高松と札幌という二つの土地に特別な思いがあったからでした。 庭園美術館のある高松とのご縁の深さは、『ユキエ』のコラムで書いていますが、モエレ沼公園のある札幌も、私にとっては「大切な人たちの住む、特別な場所」になっていたからなのでした。 『ユキエ』と『折り梅』、二本の映画で全国を歩きながらその土地土地で出会ったたくさんの「お友達」と呼べる人たちと、一緒に映画づくりをした

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稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.13

没後35年、伝説の画家 鴨居玲の絵に魂が震える 晩秋の日本庭園に囲まれて 没後35年を迎えた洋画家、鴨居玲の展覧会は現在『静止した刻』展が久留米市美術 館にて12月6日まで開催中だが、田園調布にあるみぞえ画廊東京店でも、約15点が 展覧され、孤高の画家の軌跡をたどることができる。 鴨居玲は1928年石川県生まれ。金沢美術工芸専門学校(現・金沢美術工芸大学)洋画 専攻科卒業。宮本三郎に師事し、早くから才能を認められるが、制作に行き詰まり 南米へ。1969年『静止した刻』で第

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LEONIE と マイレオニーの旅 01

世界中が思いがけない新型コロナに襲われて、海外に行くことばかりか日本国内の移動もままらなくなったいま、改めて思うのは、やはりあの日米を往復しながらつくった『レオニー』の映画製作は、奇跡に近い体験だったと思うのです。 企画を思い立ってから作品が完成して公開になるまで、7年半の歳月を費やして、マイレオニーをはじめ日米両国にわたり沢山の人びとの応援を受けて完成した映画『レオニー』。その、作品が完成するまでの長い旅を、思い出す限り少しずつ記していきます。 ぼくの物語を書くとしたら…

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自分史コラム:好きが高じてドラマは生まれる

みなさん「蕎麦」はお好きですか? 私はとにかく蕎麦が好きで、おそらく外食で一番食べているのが駅そばと言っても過言ではありません。ラーメンやハンバーガーに比べてはるかにヘルシーだし、安いし、できたら全国の「駅そばめぐり」をしたいほどです。 もちろんちゃんとした蕎麦屋も大好きですが、悩みは近くになかなかおいしい蕎麦屋さんがないこと。 郊外に住んでいる私のような人にとっては、車で行きたいというほどの蕎麦屋さんって実はあまりないのが現実ではないでしょうか。 そんななか、私が大好き

オンラインショップセレクション ひなた農園 06

少し前に、友人から「学校給食を有機野菜で作るのってどう思う?」と聞かれました。 その時の私は、「農家の視点から言うと、無農薬で野菜を作るのは難しく、給食に必要な分の野菜まで補うのはすごく難しいと思う。」と答えました。それから、気になって勉強していくと色々なことが分かってきました。 今回のコラムだけでは書ききれないので、少しずつ食や農業の現状についてお伝えできればと思っています。そして今回書くことは知らない方にとっては衝撃的な事もあるかもしれません。この事で怖がらすつもりではな

つれづれ日記20  怒れるマイノリティの憂鬱

マンション1階の生垣に椿の花が咲いた。 連日気持ちのいい快晴の日が続いて、例年ならまさにお出かけ日和、心晴々のはずなのだが、東京の感染者はついに500人を超え、菅政権の誕生から2ヶ月が過ぎて、私の憂鬱はピークに達している。憂鬱の原因の最たるものは、政治状況の サイレントマジョリティは、どこに行ったの?なんとなく、自分はサイレントマジョリティの一員なのだと思っていた。 そしてその言葉を、むしろ肯定的なイメージで使っていた。 ついこの間までは。 先日、ネットでその言葉の語源を

自分史コラム 京北マジカル・ミステリー・ツアー

「時代が変わる」とはよく聞く言葉ではありますが、これまで生きてきて、今ほどそれを実感する日々はありません。 私の場合は2011年の福島原発事故がとても大きな自分史の転機でした。 福島原発事故でばら撒かれた大量の放射性物質で関東一円が汚染されてしまい、「食べものの安全性」について考えなければならなくなったことは、人生を変えるのに十分するぎるきっかけとなりました。 その後「自分で食べるものは少しでも自分で作れるようになりたい」と畑を借りて自給率を高める生活を相模原に発見し、2

MomokaのYoga Lesson09

皆さん、こんにちは。 すっかり冬に向けて肌寒い日が続くようになりましたね。 先日のヨガビデオで行った太陽礼拝はいかがでしたでしょうか? 今回は、その太陽礼拝が少し難しかったと感じる方に向けて、座りポジションでの太陽礼拝をレッスンしていきたいと思います。 前半は身体をあたためて解すためのシークエンスを組んでおりますので、自分の今日の体調を1つ1つ丁寧に調べるようにしながら後半の座位での太陽礼拝まで続けてお楽しみください。

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稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.12

高橋アキさんの ピアノリサイタルに誘われた 斬新で豊穣なる美の世界 世界的に活躍するピアニスト、高橋アキをご存じだろうか。東京藝術大学を卒業後同大学院を修了。大学院在学中に武満徹作品でデビュー。1975年から『サティ ピアノ全曲演奏会』を夫で音楽批評家の秋山邦晴の企画により開催し、日本のサティブームを牽引。1980年アメリカの実験音楽を代表する作曲家モートン・フェルドマンに招かれ、ニューヨーク州立大学バッファロー校のアーティスト・イン・レジデンスに。1984年カリフォルニア

つれづれ日記19 親子って何だろう?

なんて素敵な、仲睦まじい家族の写真でしょう! この一枚はもちろんプロのカメラマンが撮ったものでしょうが、先日、このご家族のお宅にはじめてお邪魔した折、リビングルームの壁に飾られた写真にすっかり魅せられてしまいました。そして写真を眺めているうち、次第に胸の内に「親子って、家族って、いったい何だろう?」との思いが膨らんでいるのでした。 実は、この夫婦と二人の男の子は、本当の親子ではありません。 いえ、「本当の」という言い方は正しくないですね。もし血の繋がっている親子を「本当の親

「YUMIKOの映画玉手箱」09 ハリウッド映画の黒人女性たち①

2020年(第33回)の東京国際映画祭が開幕中です。(10/31~11/09)。あいにくのコロナ禍中での開催とあって例年より3割がた参加作品が少なく、今回はコンペティションもないそうですが、ともあれ困難の中を止めないで開催できてよかったと思います。 かつて素晴らしい国際女性映画祭があった 映画祭の期間中、初回から2011年まで24回にわたって「東京国際女性映画祭(旧カネボウ国際女性映画週間)」が同時開催されていました。日本で初めての国際女性映画祭を立ち上げたのは、故・高野

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稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.11

静嘉堂文庫美術館にて 『能をめぐる美の世界』の 幽玄なる空間に遊ぶ 田園都市線を二子玉川で降り、改札が一つの駅を出て近未来的な広場を抜け、右手へ歩くとバスターミナルがある。すぐ近くの4番に乗り、数個目が静嘉堂文庫。そこは、まるで北鎌倉から鎌倉へと続くような佇まいの景色が広がっていて、驚く。バス停から少し先を左折し鬱蒼とした山道を数分間登って行くと、静嘉堂文庫美術館が見えてくる。

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