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クラシック音楽のサマーフェス!【BLOSSOM MUSIC FESTIVAL】

2023年8月19日、アメリカミシガン州の自宅から3時間のドライブで今回のコンサート会場、Blossom Music Centerに到着。コンサートは19:00開演ですが、到着したのは16:30。到着後に気持ちのいい芝生で時間を過ごすことも考えて、早めに着くように行きました。駐車場は時間が早かったこともありスムーズで、多分事前に買った駐車券は意味なかったと思う。駐車場からは簡単なセキュリティーチェックとチケットのスキャンをして、食べ物、飲み物の店を過ぎるとすぐ会場となるホールが現れた。

Blossom Music Centerはオハイオ州クリーブランドの南に車で30分くらいの自然に囲まれた音楽施設で、夏は各種音楽の公演が開催される場所のよう。クリーブランド管弦楽団は6月までのシーズンを終えた後に、夏の本拠地として週末に何回かの公演を開催している。

そして、今回のプログラムは、ソリストに藤田真央さん(Piano)を迎えたチャイコフスキーのピアノ協奏曲で、絶対に外せないと狙っていたコンサートだった。私はまだ藤田真央さんのピアノを生で聴いたことはなく、映画「蜜蜂と遠雷」のサウンドトラックを弾いていた方だったという程度の認識だったが、ここで日本人ピアニストが来る、という一点において、聞きに行きたいと思った。

公演概要

8/19/2023, Sat, 7:00 pm, @ Blossom Music Center
The Cleveland Orchestra
Ryan Bancroft, conductor / Mao Fujita, piano


  • Entr'acte / C. Shaw (b. 1982)

  • Negro Folk Symphony / W. Dawson (1899-1990)

  • Piano Concerto No.1 in B-flat minor, Opus 23 / P. I. Tchaikovsky (1840-1893)  

会場周辺

一度会場に入れば、芝生で寝転ぶなり、各自持ってきた椅子やテーブル、テントからホールを見ながら、持ってきた食事やお酒とともに、演奏会を楽しむこともできるし、舞台近くの座席のチケットを買って本格的にクラシックのコンサートとして楽しむこともできる。開演前にはこの芝生がほとんど埋まっていた。
会場周辺には各種キッチンカーがあり、ハンバーガー、ピザ、ビール、アイスクリームなども入手でき、コンサート前に購入できる。私はハンバーガーを購入して近くのテーブルで本を読みながら食べて準備した。
なんと、会場全体を散歩していたところ、ついさっきまで舞台で打ち合わせをしていたらしい藤田真央さんが会場の奥から現れて、私の前を歩いて芝生の後方まで歩いて行った。さすがに人が多いエリアに来ると日本人が本人だと気づいて話しかけられていたが、気さくに応じておられ、会話の口調から穏やかそうな人柄を感じることができた。
会場周辺は当日は25℃程度で大変過ごしやすく、演奏が始まった7:00pmはまだ外も明るく、休憩後チャイコフスキーが始まった8:00pm過ぎまでには暗くなり、すっかり涼しくなっていた。

公演レビュー

クリーブランド管弦楽団を聞くのは今回が初めてで、どのようなサウンドなのか、ということも含めて興味があった。座席はピアノがメインのため、前方中央下手寄りを確保。全体のボリューム感は会場に対してちょうどよく、各セクション、音がバランスよく感じたし、木管楽器のソロが弦楽器の向こうにいるとは思えないほどクリアーに聞こえてきたのが印象的だった。
会場の音響も屋外であることを忘れるほどきれいな響きだった。周辺も人工的な騒音に乱されることはなく弱奏時に蛙の鳴き声が聞こえてくるのはご愛嬌。そよ風が吹くなか心地よく鑑賞を楽しめた。

Entr'acte / C. Shaw (b. 1982)

初めて聞く曲だったし、作者の年代から考えても現代の音楽であることは間違いない。10分程度のオープニングピースとしてちょうど良い曲。冒頭の独特のリズムをフルオーケストラの弦楽器のサウンドで楽しむことができた。ピチカートなどアーティキュレーションに変化をつけたり、木管楽器で旋律を聞かせたりと変化に富んだ面白い曲だった。

Negro Folk Symphony / W. Dawson (1899-1990)

これも音源など見つからず、初めて聴く曲だった。作曲のDawsonはアメリカ人の作曲家で、この曲は黒人に伝わる民謡をテーマにした交響曲ということだった。3つの楽章からなり30分程度の曲。
テーマとなる音楽は各種管楽器が奏でることが多く、また、金管楽器の重厚な響きが求められる場面もあり、吹奏楽とも親和性のあるように感じた。メロディーの受け渡しによる変化、リズムの変化なども聞き応えがあり、曲全体を通して飽きることはなかった。

PIano Concerto No.1 in B-flat minor, Opus 23 / P. I. Tchaikovsky (1840-1893)  

やはり、冒頭のホルンのテーマから迫力が十分で、直後に入る藤田真央さんのピアノの力強さ(先程の物腰柔らかな印象とは別人のよう)を聴くにつけ、名演となることを曲の冒頭30秒で確信した。オーケストラとピアノのバランスもちょうどよく、木管楽器がピアノと重なる旋律の息もあっていて両方とも聞こえる絶妙のバランスだった。オーケストラのTuttiに対しても負けることのない力強さで、オーケストラとピアノがお互いを高めながら演奏するという、協奏曲の醍醐味を感じられた演奏だった。曲中多くあるカデンツァも堂々としていたし、聴かせるメロディーは全て素晴らしかった。休みから弾き始めるときの所作が何か急に弾き始めるという感じが独特に感じた。第3楽章の最後まで一切緩むことなく駆け抜け、終演後は会場を埋めた聴衆からのスタンディングオベーションで何度もカーテンコールに応じていた。
1曲だけアンコールで演奏されたのが、ご本人のオリジナルなのかはわからないが、有名な「パガニーニの主題」をモチーフにした変奏曲でクラシックな変奏と一部ジャズのような変奏も入ったとても面白い曲で、舞台上の演奏者も楽しんでいたようだった。

まとめ

夏のクラシック屋外コンサートという気持ちのいい空間は日本ではなかなかない楽しみ方だったのでとても新鮮だったし、なんといっても藤田真央さんの演奏が素晴らしく、思い出に残る演奏会だった。クリーブランド管弦楽団はチュービストの杉山康人さんが所属しているよう(今回は出られていなかった)ことも知ったので、新シーズンの本拠地での演奏にも行ってみたい。

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