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ホテルに籠もったとき

昨年の今頃はマニラに行ったり、そこから帰ったらシベリアに行ったりと慌ただしかったのに今年の長閑さはなんだろう。一日が、一週間が長いんですね。

長閑という表現は適切じゃないのかもしれないが、部屋から見える川のゆったりした流れを見ながら感じる時間の流れは長閑そのもの。旅行で忙しいと言っていた頃がもう2年も3年も昔のように感じる。

テレビのニュースでは3月の訪日外国人旅行者 93%減らしい。旅行者、とりわけトランクをゴロゴロ転がしている人を全く見かけないので、逆に7%もおるんやという感じすらする。昨年3月の外国人旅行者は276万人だから19万人。多くはビジネスマンや中国とか韓国の留学生などが入国制限前に母国から慌てて戻ったりした人の数なんかも含んでいると思うけれど、もしかしたら観光客がいるのかもしれない。この状況だから観光地でお店はやっていないだろうし、怖くてホテルから出る気になれないだろう。

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その昔、バングラデシュのチッタゴンを訪れた時、街はホッタールというゼネストの真っ只中だった。交通機関が全面的にストップしてし、いたるところで小規模のデモが散発していた。当時、写真を撮っていたものだから、調子に乗ってカメラを持って街を歩いていたらだろうか、何人から石を投げられた。幸い怪我はなかったけど、ひとつ背中に石があたって痛かった。

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これまでもマニラ郊外のパサイで夜中に一人で歩いていたら強盗に襲われたり、川にかかる橋を撮っていたら解放軍から銃口を向けられたりとか、怖い思いはそれなりにしているが、多くは偶発的なもので自分に「非」がある場合がほとんど。しかしあの投石だけは、なんでされたのか理由がよくわからない。デモやゼネストで興奮していたとは思うけど、その時は街の総意として石を投げるという選択をしたような気がして、それ以降は怖くてホテルに籠もってしまった。首都のダッカでは旅行客として思い切り歓迎されて楽しい思いしかなかったからなおのことだったのだろう。

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窓のなくて照明を消すと真っ暗な部屋で二日間、何をしていたかは定かじゃないけど、やたらと長く感じたことは覚えている。ホテルの1階が食堂になっていて、ダッカで味をしめた鯉のカレーをよく食べていた。そこから見る景色が、チッタゴンと私を結びつける風景だった。

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海外への渡航自粛の要請が外務省から出ると、多くのフライトが欠航になったと聞く。余儀なく日本に滞在している観光客の1日は、今日を過ごした私以上に長い日を過ごしているのだろうな。早く落ち着いてほしいものですね。

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