文章が上手な人は、美しいものを美しいと表現しない
文章力をアップさせるために何をしたらいいかというテーマで、下記の記事を書きました。
結論として、アウトプットとしては「とにかく書いてフィードバックを受けろ」ということを挙げたのですが、「いやいや、それはわかるけどもう少しテクニックを教えてくれよ」という声が聞こえてきました(実際にコメントもらったり、知人から言われたりしたわけでもないので、幻聴の可能性もあります)。
実際にテクニックとしてはいろいろありまして、そういう声があるなら(幻聴の可能性もあります)、少しずつ紹介していこうかなと思います。
事実をできるだけ具体的に書く
僕が編集者になって編集・ライティングのテクニックとして最初に教えてもらったのが、「具体的に書く」ということでした。当時はガイドブックの編集をしていて、編集者でありながら原稿を書いていたので、その原稿を先輩編集者にチェックしてもらっていたのです。
そこで僕が書いた原稿は、
「~を抜けると、美しい山々が見えてくる」
といったような文章でした。その原稿チェックをした先輩が自分に教えてくれたのは、
「美しいものを美しいと書いても、読者はどう美しいのかわからないだろう。どんな山だったのかをもっと具体的に描写しろ」
ということ。
美しいというのは僕の主観です。僕が美しいと思っても、他の人が美しいと思うかはわからない。特にガイドブックのような本は、主観を入れるのではなく、客観的に書かなければならない媒体だといえます。そこで僕の主観は求められていません。必要な情報は、何という名前の山なのか、標高何メートルなのか、どのような色なのか、どの季節にどのような植物が特徴的なのか、といったことです。それらの具体的な情報を読者に提示して、美しいと思うかどうかは読者に委ねるということが大切なのです。
ただ、美しいと思うかを読者に委ねるといっても、そこは美しいと思ってもらえるような文章を作るのが編集者。どう書いたのかはもう思い出せませんが、この文章に限らず、客観的・具体的に書きつつも、実はその裏側に自分の主観があるという文章を作ってきました。
なんでもかんでも客観的、具体的に書くと情緒が薄れるという指摘があるかもしれませんが、ほとんどの文章はそんなことありません。とにかく具体的に書くということを意識して文章を書いてみてください。例えば、下記のような何かを修飾する主観的な表現が出てきたら要注意です。具体的表現の例も書いてみましたので、参考にしてみてください。
美しい → 4月中旬には山肌一面が満開の桜で彩られる
すごい → 中学生ながら150kmの速球を投げる
高い → アルコール度数9%のビール
おいしい → カラメルの甘味とローストの苦味が口の中で混じり合う
それを美しいと思うか、すごいと思うかは、これを読んだ人の判断です。でも、編集者としては美しく思ってもらえるように事実を具体的に書けるよう考えているのです。
そういった意味で、編集者やライターとそうではない人の違いのひとつは、「美しいことを美しいという言葉以外で書けるかどうか」なのではないかと思っています。文章力をアップさせたいと思うのであれば、具体的に書くということを意識してみてください。
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ということで、僕が所属しているナイル株式会社では、編集者を募集しています。弊社での編集業務の内容や働き方などについて質問があるようでしたら、僕のXアカウントにDMをいただければ回答します。ナイル株式会社の編集業務に興味のある方は、下記リンクをご覧ください。
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