新型コロナ肺炎の各国死亡率を俯瞰して見えた日本の異常な優秀さと今後の展望


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こんにちは医師・医療経済ジャーナリストの森田です。

新型コロナ肺炎で世界中が大騒ぎの中、日本でも安倍首相が緊急事態宣言を発表しましたね。

…そんななかですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今日は、「緊急事態宣言・ロックダウンは効果ない!?〜世界の統計グラフから見える新型コロナ肺炎対策〜」と題して、統計データを見ていきたいと思います。

注:僕個人は感染症の専門でも統計学の専門でもなんでもない、経済学を少しかじった一介の地方在住プライマリ・ケア/総合診療医(簡単に言うと地方の町医者)ですので、間違いや思い込みなどが多々あるであろうことを、事前に高らかに宣言させていただきます。

まず、簡単にコロナ感染の全体像を統計グラフで見ていきます。




まず、新型コロナ感染が収束した国ってあるの?



新型コロナ感染が収束した国?

あります。

統計データを見てみましょう。

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(グラフ出典:人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移(国別)/札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html

Data Source:COVID-19 dashboard in ECDC, Coronavirus Source Data in Our World in Data, WHO situation reports, UN population data
これ以下のグラフもすべて同じ)


これは、人口100万人あたりのコロナウイルス感染死亡者数(死亡率・縦軸は対数表示)の推移です。

(なお、本記事ではすべて「死亡者数」をもとに議論します。もう一つの指標である「感染者数」は、軽症症例への検査に積極的な国とそうでない国とで誤差が生じやすくなるためです。)

この国、3月はじめからずっとほぼ横ばいで死亡率が増えていないですね。

さて、どこの国でしょう?

…答えは「中国」です。

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グラフから単純に「死亡者総数が横ばいになってすでに久しい」、ということが読み取れます。

仮に「単純な幾何学的な曲線での推移が変わらない」ということを前提とするならば、中国はすでに新型コロナ肺炎の感染は収束に向かって居ると判断して良いと思います。

ここで、「単純な幾何学的な曲線での推移が変わらない」を前提としてよいのか?と言うところが問題になりますが、世界的に見てそれは可能だと思います。


というのも、下のグラフで分かるように、実は世界のほぼ全ての国の死亡者数が「単純な幾何学的な曲線での推移」で動いていて、急に上昇したり、急に平坦になったり、ということは観察されていませんので。(人口の少ない小国だと階段状になったりはしていますが。)

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そういう意味では、中国もこのあと急に再上昇したりする可能性はかなり低いのではないかと思います(もちろんゼロではないですが)。

ちなみに中国10億人の4月6日のコロナ死者数は6人でした。かなり少ないですね。
だって、日本のインフルエンザの死者数は1日50~100人(冬期シーズン中)。年間だと3000人〜10000人(インフルエンザから肺炎になったなどのインフルエンザ関連死含む)。グラフのような100万人あたりだと30~100人くらいです。

ためしに例年の日本のインフルエンザの死亡率をここに重ねてみるとこうなります。

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もちろん武漢単体で見れば死亡率はぐっと上がるのでしょう(それでももう死亡例はほぼないでしょうが)。でも国全体で見れば、「中国はインフルエンザ未満で新型コロナ肺炎を収束させた」と言ってもいいのではないでしょうか。

実際、中国は4月8日に武漢の都市封鎖を解除したとのこと。


では、他に収束に向かっている国はあるのでしょうか?

あります。韓国です。


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韓国もインフルエンザゾーンの下で収まりそうに見えますね。100万人あたり4〜5人で収束しそうな感じです。

イタリアも天井が見えてるかな?

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イタリアはインフルエンザゾーンの3〜4倍くらいの死亡率で落ち着くかな?と言うところでしょうか(縦軸が対数表示ですので、ちょっと上…くらいに見えますが実は3〜4倍となります)。

ちなみに、この傾向はヨーロッパ主要国全体で大体同じ感じです。

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スタートの差こそあれ、曲線の傾きとカーブの具合はヨーロッパ諸国で大体類似しているのではないかと思います。

イタリアだけスタートが早かった分、天井が見えるのが早かったのかもしれません。

北米のアメリカとカナダはこちら。

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まだちょっと天井が見えてないかな?
イタリアと同じくらいの300~400あたりで収まってくれると、嬉しいんですが…。



日本の死亡率は?


そう、肝心な我らが日本の新型コロナ肺炎の人口あたり死亡率はどんなふうに推移しているのでしょう?

イタリアやアメリカのようにドーッと上がってるのかな?中国や韓国のようにインフルゾーンの下で収まりそうなのかな?


それがこちら。

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中国や韓国よりスタートが遅かったということもありますが、それでもインフルエンザゾーンよりだいぶ下にいます。

天井はこのあたりに来そうでしょうか?

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この予想通りに行けば、日本の新型コロナ肺炎による総死者数は100〜150人くらいで収束に向かうのでは?

と推定することが出来ると思います。

もちろん、この曲線通り行けば、ですけど。

(でも、繰り返しますがこれまでのところほぼすべての国がきれいに曲線を描いてますので、それもあながち的外れではないかもしれないですね)

主要先進国をまとめて表示するとこんな感じ。

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緊急事態宣言・ロックダウンの効果は?


さて,懸案の「緊急事態宣言」やロックダウンの効果のお話に入りましょう。

今まで見たとおり、こうして新型コロナ肺炎の死亡率のトレンドを目で追えるということは、ロックダウンした都市のその後の死亡率抑制効果も見られるかもしれませんよね。
ということで、アメリカ・イギリス・スペイン・イタリア、このロックダウンを実施した4カ国について死亡率の推移を見てみました。

(中国の武漢封鎖は1月23日と非常に早期で、死亡率がほぼゼロの状態での封鎖だったため前後の変化がわからず割愛しました。)

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ロックダウンの日はそれぞれ、

イタリア 3月12日
アメリカ 3月22日
スペイン 3月14日
イギリス 3月23日

とのこと。

ロックダウンの効果は開始後10〜14日くらいで現れる?と考えると、アメリカ、イギリスはこれから効果が出るのかも。イタリアとスペインはもう効果がでていても良さそうですが…。

あまり他のヨーロッパの国々とトレンドは変わっていないようにも見えますね。。。

 再掲

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もう一つロックダウンの効果を見るのに適した例があります。

それは、3月11日に国全体をロックダウンして国境も封鎖しているデンマークと、そのお隣でロックダウンもせず「日常をできるだけ維持」と宣言し、小中学校も休校していないスウェーデン。

地理的も文化的も高齢化率などの社会状況も類似したこの2国の新型コロナ肺炎の死亡率の推移を比較してみましょう。

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もう一ヶ月近くたつのでそろそろ効果が現れてもいい頃ですが、、、この通り、抜いたり抜かれたりです。

スウェーデンの方がここ1週間ほどは死亡率が上回っていますので、これがロックダウンの効果なのか…全体としてはほぼ同じトレンドのようにも見えますが。

今後の推移にもしっかり注目していきたいですね。

ロックダウンもやりっぱなしではなく、事後の効果測定と評価が重要だと思いますので。


東アジアはなぜ死亡率が低い?


こうしてみると、東アジアの死亡率が圧倒的に低いことがわかります。

以下、中国・韓国・日本・台湾です。


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こちらが東アジア以外の主要先進国の推移。

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動画にするとこんな感じです。


欧米などの先進国と比較して東アジア各国が圧倒的に死亡率が低く、また欧米より早く収束を迎えそうであることがわかります。

その要因として個人的に考えているのは、以下の2つです。

(これ以下の話は統計データなどで確立したものではありません。)



BCGの効果?


実は、東アジアやアフリカの国々はBCGの接種を現在も続けている一方で、ヨーロッパ諸国はBCGの接種を近年中止しているんです。

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このBCG仮説は、この短期間ですでに論文が2つも書かれれています。(通常論文は査読という第3者のチェックや審査があって学術誌に掲載されるまで何ヶ月もかかるのが通常です。こちらの論文は学術誌掲載前のプレプリントですが、コロナ肺炎という性質上迅速性が求められるため、未査読ですが紹介しております)

「BCGワクチン接種方針とCOVID-19の罹患率および死亡率の低下との相関」
Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study
Aaron Miller, Mac Josh Reandelar, Kimberly Fasciglione, Violeta Roumenova, Yan Li, Gonzalo H Otazu
doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.24.20042937
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.24.20042937v1

「COVID-19に起因する死亡率とBCGワクチンの差」

Differential COVID-19-attributable mortality and BCG vaccine use in countries
View ORCID ProfileAnita Shet, Debashree Ray, Neelika Malavige, Mathuram Santosham, Naor Bar-Zeev
doi: https://doi.org/10.1101/2020.04.01.20049478
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.01.20049478v1


また、これは僕が作った動く棒グラフですが、これを見てもワクチンの接種国、非接種国で差がついているように思えます。


詳細はこちら↓

新型コロナ肺炎の死亡率とBCGワクチン接種政策の関連/OECD加盟国 COVID19 Mortality Rates (LOG) and BCG Vaccination Policies / OECD countries



すでに抗体があった?


ここから先は本当に個人的な妄想レベルで確たるもののかけらもない仮説なのですが…

もしかしたら東アジア地域では「新型コロナ」は以前から少しずつ存在していて、東アジアの人たちには抗体ができていた(免疫がついていた)?

もしくは、新型コロナに類似のウイルスがすでに流行していて、その抗体を持っていた?

というものです。

そもそも世の中に存在するウイルスって、常に変異を繰り返しているので、全てが同定されているなんて言うのは幻想。すべてのウイルスが見つかっているわけじゃないんですよね。

また、日本で毎年10万人程亡くなっている肺炎患者さん、特に90代など超高齢の方々の肺炎に対して僕ら臨床の医師がすべての原因検索を行っているわけではありません。現場で求められる医療は検査や治療ばかりではなく、その人らしく生活を維持しながら体に負担のかかる検査・治療せずに自宅などで迎える終末を希望されるケースも非常に多いものです。


そう考えると…もしかしたら、東アジアだけには土着のウイルスとして「新型コロナウイルス」ちょっと前からちょっとずつ存在していたのかも…。

だから東アジアだけこんなに死亡率が低い?


ま、最後の話は仮説以上の何者でもない単なる妄想でしかありませんが。

以上、「緊急事態宣言・ロックダウンは効果ない!?〜世界の統計グラフから見える新型コロナ肺炎対策〜」でした。


補足

前回のBCGワクチンのときもそうだったのですが、こういう新型コロナ肺炎の安心材料的な記事を書くとかなりの確率で、

「今は非常事態!そんなこと言ったらみんな安心して飲み会とか行っちゃう、お医者さんがそんなこと言わないで!」


と言うようなご意見をいただきます。

ただ、これは裏返すと「お医者さんは不安に思うような情報しか国民に提供しないで!」と言う情報統制を促す意見でもあり、それはそれで非常に危険な発想にも思えます。

少なくとも科学的・統計的な数字に基づく議論は、誰にも遠慮せずに堂々と発信していきたいと思っています。
(最後の妄想的な仮説は別ですが^_^;)


とは言え、科学的・統計的なデータはあくまでも過去データであって、今後の展開については予想でしかありません。けっして確実なものではないのです。日本の感染拡大が東アジアの範囲を大きく飛び越える可能性もゼロではありません。

今後は日本の日常風景でもクラスター感染も確実にあるでしょう。コロナだろうがインフルエンザだろうが、かからないほうがいいに決まっています。ですので、ボク個人も2月の旅行や3月のイベント出席もキャンセルしています。

そして多分誰よりも手洗いをしております。日々高齢者を中心に診療していますので。

データはデータとして頭に入れつつ、個人個人で最悪の事態も想定しての行動をおすすめします。

**

なお、今回ご紹介したグラフはすべて札幌医科大学のHPよりお借りしています。


人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移(国別)/札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html


こちらのサイトは、いろいろな国の死亡率・感染率・日本の都道府県別感染率などが分かる超優良サイトです。ボタンを押すと、国を出せたり消したり出来るので、本当に便利です。

毎日すべてボランティアで運営されているとのことですので、是非寄付をお願いします。僕も寄付の申請出しました!


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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)