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自社の理解と越境した交流がイノベーションを産む 〜0→1という言葉は解像度を下げる

「カギは顧客とのコミュニケーションだ」と大橋氏は言う。
「顧客が『これが欲しい』と言ってきたとき、すぐ対応できるように準備しておく必要がある」

味の素の「非食品ビジネス」がすごすぎた

0→1という言葉が世の中に溢れているが、本質的には0→1など存在し得ない。それをきちんと理解して使っているのかは甚だ疑問な者ばかりだ。なぜならば、イノベーションはゼロからは生まれることはないからだ。

人類は叡智を積み重ねて、集合知として知識を遺伝させ、イノベーションを積み重ね、社会をより良くしてきた。災害もパンデミックも無知によるジェノサイドも、テクノロジーの進化によって乗り越え、より良い未来を作ってきた。

そのすべてのイノベーションはゼロから急に発現したものではない。誰かの探求と誰かの探求がぶつかり出会ったその瞬間に、イノベーションの閃きが起こる

イノベーションを起こすプロセスは科学(再現性のある仕組み)に出来ても、イノベーションの起点は運と閃きによって起きるものだ。科学できるのは、その運と閃きのためにどのような準備をするかだけ。

イノベーションに挑むならまず自社の徹底的な理解をすべきだ。イノベーターを志すならばこそ、自社の強み、アセット、技術を誰よりも知る人になるべきだ。

そして次に越境した交流に挑む。薄っぺらい異業種交流や浅い知識しかない意識高い系ではなく、異分野で深く深くコトを追求している人たちと。

自らのパーパスと深い知識と、異分野のそれらにぶつかりあったとき始めて、Connecting the Dotsしてインベンション(発明)が生まれ、イノベーション(革新)へと繋がる

ある意味で、調味料も半導体材料も化合物のビジネスだ。

そして、「味の素」の主成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)の製造工程と、ABFの製造工程が、たまたま重なっていた。

1990年代にコンピューター市場が拡大しはじめたとき、ある電子機器メーカーから回路基板用にフィルム状絶縁材料がほしいという依頼を受けたと、味の素アミノサイエンス事業本部の押村英子氏は語る。

それまでチップの絶縁材には特殊なインクが使われていたが、インクを平らに塗布するのは工程数が多く時間がかかる。

フィルムならその時間を短縮して、高速チップの需要急増に対応することができる。そこでイテレーションにより多くのハードルをクリアした結果、ついに1999年にABFが完成した。



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