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競合優位性の高いイノベーションは「コンセプト」が誘発する

ホテルではなく”自分の家”として過ごしてほしい

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企業のアイデンティティを言語化することが、提供価値の言語化につながる

競争が激しい市場であればあるほど、成功するためには自社のアイデンティティ、つまり「何屋さんなのか」を明確にすることが大切だ。

ドーミーインは、このアイデンティティを明確にすることで大きな成功を収めている。「ホテル」と一言でいってもその中には多様な形態やコンセプトが存在するが、その中で彼らは自らを単なる「ビジネスホテル」とは定義していない。

一夜の宿泊場所にとどまらないために、その価値を「ホテルではなく”自分の家”としての体験」と再定義した。それによって、客室から備品、スタッフの接客まで一貫して、自宅にいるかのような安心感と居心地の良さという体験価値を提供することができている。

企業のアイデンティティ(価値観、哲学)が、サービスのエッジの隅々まで行き届いているからこそ、圧倒的な提供価値となるのだ。

コンセプトの徹底がアーリーアダプターをエヴァンジェリスト・カスタマーへと押し上げる

ドーミーインのような成功を収めるためには、そのコンセプトをきちんと言語化し、組織全体に浸透させる必要がある。この「言語化」は、ただのスローガンやキャッチフレーズに留めてはいけない。

組織の行動や判断の基準となり、日々の業務の中で体現されるべきものまで徹底しなければならない。言語化されたコンセプトは、スタッフ一人一人が自らの行動やサービスを通して表現し、結果として顧客に伝わっていくのだから。

市場は必ず、新しい価値観やサービスを早く受け入れる性質を持っているアーリーアダプターが、「ジブンゴト」としてそのコンセプトを受け入れて動き出す。そのときこのアーリーアダプターを圧倒的に満足させられるかどうかが、市場のマジョリティーを獲得できるかどうかにかかっている。

アーリーアダプターが圧倒的に満足し、彼らがエヴァンジェリスト・カスタマーになったとき、「ナカマゴト」で動くアーリーマジョリティー、「ヨノナカゴト」で動くレイトマジョリティーが順番にドミノ倒しのように動いていく。そうしてムーブメントが世の中に広まっていくのだ。

コンセプトは競合優位性そのものだ

コンセプトは、まさに企業の競合優位性を定義するものであり、経営の中核をなすものだ。

大手企業ほど、このコンセプトの重要性を見落としがちである。多くの企業は、具体的な利益や数値目標に囚われ、抽象度の高いコンセプトの創出を避ける。そもそも会議で議論すらしない。しかし真の競合優位性や企業の未来は、この「無駄」に見える部分から生まれる。

未来を切り拓くためには、日常の業務や短期的な利益追求から一歩引いて、企業のコンセプトやアイデンティティに真摯に向き合う必要がある。ドーミーインの成功は、その最たる例である。

抽象的なコンセプトが定義されると自ずと、具体的で競合優位性のある価値が見えてくる。そしてそれを組織全体で体現することが、未来のイノベーションを築く鍵となる。


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