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日本のスタートアップ村からは、ユニコーンは産まれない

設立の経緯はなかなかユニークだ。
セルはイーロン・マスクの買収で「ツイッターが失ったチャンス」について、思うところを立て続けにツイートし、これがT2誕生のきっかけとなった。
一連のツイートは、やがて逆境をチャンスに変える内容の意思表示(これもツイート)に発展。
この意思表示が「ときの声」となって、セルは昨年11月にT2を立ち上げた。
その後、サンフランシスコのベイエリアに拠点を構え、初期段階のα版を限定公開した。7人のスタッフを採用し、中にはセルのような元ツイッター組もいる。

今年1月、T2は17人のエンジェル投資家から支援を取り付け、初の資金調達ラウンドを完了した。17人の顔ぶれを見れば、セルの実績は明らかだ。
ブラッドリー・ホロウィッツ、リッチ・マイナー、ウィキペディアのCEOを務めたキャサリン・メイハー…。

SNSのニューフェイス、T2(仮)って何?

日本のスタートアップ村からは、ユニコーンは産まれない

日本のスタートアップ・エコシステムをしっかり構築して、ユニコーンが産まれる環境を作ろうと頑張っている人たちがいることも知っている。その流れが「スタートアップ庁」創設へと繋がり、いい潮流ができていることも知っている。

しかしそこには根本的な課題がある。それは「株式マーケットのサイズ」だ。日本の上場企業の時価総額は740兆円。それに対して、アメリカは5,300兆円、中国は1,500兆円と、大きな開きがある。株式マーケットのサイズに開きがあるということは、EXITの際の株価にもそれだけ影響するわけで、スタートアップが受ける投資の可能性にも大きな影響を及ぼす。

簡単にいえば、アメリカのスタートアップが数十億円、数百億円の投資を受けているタイミングで、日本のスタートアップは数億円で四苦八苦するという状況が起こっている。株式のマーケットサイズの違いがゆえ、そもそも日本でスタートアップを起こした時点でユニコーンなど望むべくもないのだ。(日本人がアメリカで起業するのであれば可能性は十分にあるだろうが、ここでは「日本において」ということが論点だ)

もちろんそこからでも頑張ってユニコーンを作ろうとする努力を否定するものではないし、ユニコーンが生まれ続ける環境を作るためにスタートアップ庁を作ったわけで、まだまだそこに至る過程の一歩目を踏み出した状況であることは理解している。しかし現状において日本からユニコーンが生まれる可能性がほとんどないことは事実なのだ。

ましてやプロダクトもないアイデアに大きな投資をして育てていこうなどということは、まだまだ日本のスタートアップ・エコシステムで実現することは難しい

日本からユニコーンを産むなら、大企業が覚悟を持つ方が早い

一方でユニコーンをうみだすことができる環境を今すぐ整備することができる場所がある。それは「大企業」だ。

既存事業の売上が数兆円で、利益が数百億円〜数千億円も出ている企業であれば、数百万や数千万をアイデアに投資することなど、特段大きな意思決定ではないはずだ。アメリカにも負けないスピードで、シードフェーズを駆け抜けることができるだけの資金やリソースはかき集められる

まさに高度経済成長はそれによって成し遂げられたわけで、大企業の中にはユニコーンクラスの事業がすでにゴロゴロあるのだ。すでに生んできた歴史があるのだ。しかし成熟期が長く、失われた30年を経た結果、多くの大企業の人たちはそのことを忘れてしまっている。そして先細る既存事業にしがみついているのだ。

もちろんアイデアがどうなるかなんて誰にも予測することはできない。不確実性の高い現代にはその予測精度を高める方法は誰にもわからない。だからこそ、どんどんチャレンジさせていけばよいのだ。既存事業の叩き出す売上・利益からみれば誤差でしかない金額なら、評価も判断もせずにどんどんベットすればよいのだ。

どのみち、その積み重ねで得られたインサイトと育成された人材がなければ、未来を創る大きなイノベーションなど実現できないのだから。ケチケチせずどんどん新領域に投資をしよう。

本稿は、もちろんスタートアップ村を離れ、大企業に深く根付こうとしている身としてのポジショントークである部分は否めない。しかしこのことに目を瞑ってスタートアップ信仰をしていては、日本の先行きは明るくならないことは確かだ。今一度、日本という現在のマーケットにおいて、マーケットを成長させるためにすべきことを明確にすべきだ。スタートアップ側においても、大企業側においても。



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