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イノベーターは「自分が無能である」という前提にたって、チームアップしなければならない

様々な経営危機を乗り越えて次のステージに進むには、素晴らしいビジネスモデルや画期的な技術力だけでは事足りません。

なぜ「優秀な創業者が率いる絶好調なスタートアップ」が、突然急減速するのか?

イノベーターとは総合格闘技だ。事業ステージに応じて、リーダーに求められる能力は大きく異なる。しかしながら、世の中にその全てがスペシャリストとして実行できる傑出した人物は存在しない

その中でイノベーションにおける経営者には、まさにジェネラリスト的に全方位を見渡す知識と経験が求められる。それに基づいてそれぞれの領域を専門的に実行できるスペシャリストに業務を割り振ったり、責任を持って任せ背中を預けたりする。

つまりイノベーションにおける経営、特にCEOの仕事には、常に体制・役割と人員を戦略的ににらめっこしながら、逐次人員を補充するような、プロデューサー的センスが求められる

スタートアップの経営者をキラキラとうつしだすメディアが多いため、まるで彼らはそれができていて、大企業の人材ではそれができていないかのように見えることもあるが、そんなことはほとんどのケースにおいてない。

若くして優秀な起業家はいても、若くして優秀な経営者はいない」という。スタートアップの経営者も、起業家としては優秀であっても、経営者としてジェネラリストとして活躍している人はほとんどいないのだ。

スタートアップの成長は大抵の場合、創業者のセンスと市場環境とビジネスモデル(他にもチーム構成、資金調達など)が、運良くマッチしたときに起きる。これが「若くして優秀な起業家はいても、若くして優秀な経営者はいない」という状態が頻繁に起こる理由だ。経営者としての成長よりも先んじて事業が成長してしまうから。

そして多くのスタートアップ経営者がここでドツボにハマるのが、それを運のおかげだと考えず、自分が優秀であるからと考えてしまうこと。いずれ時間が経てば、必ず市場トレンドと創業者の感覚が合わなくなるタイミングが訪れる。創業者が自身の成長に対しての努力を怠ると、スタートアップの没落が始まるのだ。

大企業新規事業の場合、多くは「ビジネスコンテスト通過」というタイミングで勘違いが起こる。スタートアップにしてみればエンジェル投資を得ただけの段階で、ビジネスとしての成長性は1ミリたりとも証明されてないわけだが、なぜだが多くのサラリーマンたちは自分達のアイデアは優秀なんだ!という考えに侵されていく。

そして自分が苦手だがとらなければならないアクションを避け、自分ができることだけに取り組み始め、本来やらなければならない仮説検証やピボットがおざなりになり、検証結果も出ず、経営層への説明も不十分で、早々におとりつぶしの憂き目にあう。そして、新橋のガード下で「社長は分かってない」という愚痴をこぼすのだ。

スタートアップにしろ大企業にしろ、必ずやらなければならないのは「自分の能力の欠如の自覚」だ。確かにビジョンやミッションに対する思いは一番強いだろう。Chief Visionalist Officerとしては起案者・創業者は適切だ。しかしそれがCEOとして適切かどうかはイコールではない。

自分には何ができて何ができないのか。できないものによってはCEOを別の人に譲り渡すことも選択肢にいれなければならない。自分がトップにいることが大事なのか、事業を成長させて目の前の顧客を笑顔にすることが大事なのか。優先順位を考え、実行に移すことがイノベーターにとって最も求められる資質だ。

事業の立ち上げ期には壮大なビジョンを描くアートが強く求められます。次に事業が軌道に乗って成熟してきたら、安定して運営するためのクラフトが求められます。そして、事業が衰退期に入ってきた際には、事実にもとづいて冷徹に意思決定をするためのサイエンスが重要になります。

 なお、事業の立ち上げ期に資金繰りに詰まることがありますが、その際にはサイエンスの冷徹な目が必要になるでしょう。また、衰退してしまった事業をピボット(方向転換)するためには、アートが必要になることもあります。



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