D2C/DNVBの階梯 vol.2
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✔︎ 製品とブランド
✔︎ アルコール飲料とD2C
✔︎ D2Cとオムニチャネル
✔︎ D2Cとコミュニティ
✔︎ ゆうこすとInstagram
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「軍資金を持っている企業は、売上を増加させることだけを重視している。なぜなら、巨額の投資を受けているからだ。そのような企業はこの資金を利用して売上を増加させたいと考えている」
「これは、それらの企業が持続可能なビジネスモデルを持っているということを意味するわけではない」
巨大複合企業に買収されることを狙っているのではなく、すべての可能性のあるものに対して門扉を開いておくブランド戦略を練っている
「私たちは長い時間をかけて規模を拡大できるブランドを作りたいと考えており、ベンチャーキャピタル業界も規模を拡大できるブランドに非常に関心がある。しかし、そのようなベンチャーキャピタルが私たちにとって救世主というわけではない。私たちは自社の力で成長し、自社への請求は自社で支払い、自力で進む選択肢が欲しい」
「ある規模に達したという評価を嫌がる提携先もある。そのため、健全で良好な指標を持ち、空の彼方に消えてしまうことのない企業を作るつもりだ。自社のビジネスは自分たちで構築したいと考えている」
ヒーロー製品の取り扱いをやめるのではなく、「ヒーロー感覚」を持たない企業を作る
このアプローチを採用し、製品ではなく自社ブランドをもとに基礎を築いたため、ブランドを希薄化することなく、将来的に装身具以外の別のカテゴリに進出する準備ができたと考えている
D2Cは「コミュニケーションセールス」である。流通・販路を通らずに、顧客に直接製品を届けることで、顧客と直接のコミュニケーションをとることができる。
だからこそ、顧客のロイヤリティを高めるための施策を、コントローラブルに実現できる。
しかしながら、それを「製品」ばかりに向けてはならない。「ブランド」に向け、ブランドへのロイヤリティを高めることを意識せねばならない。
理由は2つ。製品は必ずコモディティ化し、類似製品が巷に溢れ、広告宣伝費の高騰と価格競争というレッドオーシャンに飲み込まれること。D2Cの利益の源泉は、顧客獲得後のアップセル/クロスセルであり、それは製品ではなくブランドによって為されること。
ブランドとは利益だ。利益の絶対額であり、利益の持続可能性でもある。
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(米国で)「スピリッツのD2C販売を認めているのはわずか5州であり、これを利用できる市民は米全人口の5%に過ぎない。酒類販売に関する法令がきわめて複雑であると同時に、スピリッツの市場規模が非常に小さいため、蒸留所にD2C販売を認めている州においてでさえ、主な配送業者はスピリッツを扱おうとしない」
「アルコール業界は時代遅れも甚だしいと思っていたし、スタートアップ創業者が次々に新商品を生み出し、新たな流通経路を考案し、ブランディング戦略を刷新する姿を目の当たりにしているうちに、その思いはますます強くなった。根強く残る規制のせいで、アルコール業界には思い切った革新の余地がほとんどない」
同社が狙うのは、仕事とプライベートを厳密には分けない、そして、酒は飲みたいが、ひどい二日酔いは避けたい、という姿勢の人々だ。
共通項はデモフラフィックス(人口統計学的特性)よりもむしろサイコグラフィックス(心理学的特徴)だ
既存の流通モデルは不十分であり、これからはブランドが自ら、商品をバーやレストランに個別に「アウトバウンド」していく必要がある、とも指摘する。「弊社の商品は、弊社の顧客がいるところに置きたい。たとえば、コワーキングスペース、ホテルチェーン、テックオフィスなど、ミレニアル世代が自宅以外で、泥酔することなく他者とつながれる場所を考えている」
同社はハウス(Haus)の原材料とお勧めのレシピを、注文方法と併せてWebサイトに掲載している。また、外部パートナーについても、ドリンクの出し方に関する同社のルールを守れる者としか提携するつもりはない
「まずは、フィードバック(顧客の生の声)が欲しい。弊社なら、顧客と直接的な関係が築けるし、アルコール飲料メーカーはまだどこもそういうことをしてない。我々には、たとえば新しいレシピも9時間あれば作れるし、イテレート(刷新)もすぐにできる。柔軟だからこそ、商品の発送もきわめて迅速に行なえる」
「これまでエンドコンシューマーを知る機会がなかった業界の一員として、こんなにもわくわくさせてくれることはない」
D2Cは、サイコグラフィックスを捉え、その顧客にダイレクトにECで、もしくはダイレクトに届く場所に限定して、そのサイコグラフィクスにマッチした製品を届けることだ。
アルコール飲料もその例外とはならない。もちろん国によってアルコールは規制があるし、飲酒文化も地域によって異なるため、一概に他国・他文化での成功事例の導入ができるわけではない。
しかし今後、サイコグラフィックスの細分化が避けられない昨今において、アルコールD2Cは必ず盛り上がりをみせるだろう。
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マーケティングについて私がはじめて学んだとき、我々が生活のなかで接点を持ち、我々に影響を与え、そして我々が影響を与えることができる人間は2000人だと言われた。いま、朝に2000人のフォロワーを得たとしても、彼らは、あなたのアイデアに耳を傾ける本当のフォロワーではない。我々は、彼らの体験や我々の製品について本当のストーリーを語ってくれる現実の人々を探している。
私は『本物の(Authentic)』という言葉が大嫌いだ。何かが本物であることを証明しなければならないことを暗にほのめかしているからだ。問題は、製品を買ってくれたら我々がすることを、顧客のところに出向いて伝えたくないことだ。我々が行ってきたことについて話す、顧客とサービスについてのコミュニティが本当に欲しい。それが一番難しい点だ。
製品メーカーとしても小売業者としても、成功したいなら、人々が欲しがるブランドを擁し、人々が買いたいと思う製品を至るところに置かなければならない。
我々はどこにでもあるわけではないが、オムニチャネルではある。つまり、各チャネルをある種限定的に独占しているという意味だ。デパートから大型小売店、家具屋、寝具店まで、すべてを含む。それらを一つひとつを見て回ることはないだろうが、我々自身の店舗も含め、ほとんどのチャネルで我々の製品を見ることになる
顧客はデジタルの世界だけで生きているわけではないが、デジタルマーケティングを生業とする人たちは時々そのことを忘れる。顧客はアナログの補完としてデジタルを使う。つまり主体はアナログなわけだ。
だから、オムニチャネルは欠かせないが、必要なのは「オムニチャネル」だ。とどのつまりどこにでもおけばいいというわけではない。ターゲットとするピンホールするペルソナがいるところにはどこにでもおかなければならない。それがマーケティングで販売することから先の、ブランド化に通ずる道を作る構成要素にもなる。
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D2Cは小売店を挟まずメーカーが顧客に対し直接売買できるため、顧客の声を取り込みやすいという利点がある
まずはコミュニティーを形成し、アンケートを重ねてユーザーの要望を収集。そこで得たインサイトを基にコスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP」を立ち上げ、第一弾としてまつげ美容液を開発した。
コミュニティー形成を先行させ、集まったユーザーの要望をベースに商品開発を行う流れは、これまでの手法とは真逆の発想だ。
(DINETTE 代表取締役CEO 尾崎美紀氏)
メンズスキンケアブランド「BULK HOMME」を開発・販売するバルクオム代表取締役CEOの野口卓也氏は「ターゲットは決めず、自分たちが良いと信じる商品を作ること」を信条にしている
女性向けと異なり男性向け化粧品市場はまだまだ新しい。比較検討で競争にさらされることが少ないなど、環境的に恵まれている部分はあるが、マーケティングをおろそかにするということはない。特に新規顧客獲得については「できることは全てやった」と野口氏は話す。
(バルクオム 代表取締役CEO 野口卓也氏)
初期段階のファン獲得施策は実施しませんでしたが、継続利用していただいているお客さま限定のイベントを定期開催しています。パーソナライズできる製品だからこそ、お客さまの要望をどれだけ製品に反映できるかが継続率に直結します。あらゆる方面からお客さまとコミュニケーションを取り、フィードバックを受けられるような環境を構築しています
(Sparty CMO 横塚まよ氏)
大手企業は莫大な投資で最先端の技術を極め、それを注ぎ込んで高機能化粧品を開発する。一方で、D2Cスタートアップはユーザーに寄り添い、彼らが望むものを開発する。プロダクトアウトとマーケットインのどちらを選択するかという話ではあるが、D2Cの場合はユーザーと距離が近い分、マーケットインに振り切った方が勝てる可能性は高くなるだろう。
3社に共通していたのは「自社の掲げる世界観に共感してもらえる顧客を獲得したい」という点だった。世界観に共感するユーザーは自然とLTVが高くなると期待できるからだ。消耗品でかつコモディティ化しがちな化粧品業界において、顧客をつなぎとめるための「世界観の提示」は必須だ。
ブランドとは世界観そのものだ。世界観を伝えるためには、D2Cが向いている。
リアルなモノを直接届けるので、ECでの購入体験から始まり、パッケージデザインや梱包から開封の儀を演出できる。同梱ツールで世界観をしっかり伝えた後、メルマガやLINEなどでそのフォローアップをし、また次回に届く製品および同梱ツールで、その世界観をしっかり定着させ、継続へ向かわせることができる。
さらには、リアルイベントでリアルにコミュニケーションをとることで、それが促進される。マス向けのメーカーとは違い、中の人の顔が表に出てくることからそのコミュニケーションが成立する。
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中間業者を介さないD2Cには、商品をいち早く提供できるメリットがある。また、余分なコストが載ってこないため高い収益率が期待できる。顧客の側から見ても、コモディティとは異なる特別なものを作り手との直接的なコミュニケーションを通じて入手できるという魅力がある。「この商品のここが好き」「こういうものがほしい」といった声をブランドに直接届けることもできる。そして、その声は商品の改善や新商品の開発にスピーディーに生かされる。
SNSでは共感と拡散が直結する。ニッチな世界であればあるほど、分母が少なければ少ないほどファンの熱量は上がり、拡散してくれる可能性が高くなる。1つの投稿で飛躍的に「バズる」ということはほとんどなかったが、共感の和は次第に広がっていった。
「instagramを軸とした販売でよかったのはコメントやDM、ライブ配信を通じてお客さまの声がより近いところで聞けること。ライブ配信で(購入を迷っている人の)背中を押すこともできます」
購入の障壁となる事情は個別に異なる。商品について疑問のある人もいれば、購入の仕方が分からない人もいる。FAQは用意していても、それで全てが自己解決できるわけではない。ライブ配信で聞きたいことをコメント欄に書き込んでもらえればリアルタイムに解決できる。
ゆうこすさんはブランド運営で心掛けていることとして、以下の3つを挙げた。
1. ブランドはファングッズではない
2. ライブ配信で商品情報を一方的に垂れ流さない
3. コメントしたくなるようなコミュニケーション
ハッシュタグ検索を通じてファンを獲得し、フィードやストーリーズ投稿、ライブ配信でブランドへの関心を高め、ファン化した後にはIDTVでブランドへの理解をより深める。獲得においてはInstagram広告、さらにはショッピング機能で購入への動線を作ることもできる――。
InstagramとD2Cは切っても切れない関係だ。Instagramの画像や動画を中心としたコミュニケーションは、ブランドを全面的に伝えるのに向いている。
一方だからといって、画像や動画を投稿だけしていればブランドが形成されるわけではない。SNSだからコンテキストに沿ったコミュニケーションが重要だ。