見出し画像

カナダと台湾の似ているところ

2024年のGW、家内と2人でカナダのバンクーバーに遊びに行ってきました。日本で知り合った2組の夫婦がバンクーバーに移民として移っており、彼らを訪ねていこうという旅行でした。
そこで個人的にカナダと台湾には似ているところがたくさんあると感じたので、そのことを書いてみます。

街の発展状況

バンクーバーは、ダウンタウンの発展も進んでいますが、今はそこから郊外への電車が複数伸びており、そこが新しい居住地として発展していました。構造の新しいマンションが林立し、鉄道駅を中心に商業施設もオープンしています。

この郊外への発展段階という状況は、台湾における台北と新北の関係に似ています。台湾北部におけるMRTの計画は今は台北ではひと段落していて、新北市の各地において発展しています。そして、新しい郊外の住宅地がMRTによって勢いづいており、台北を追い越す人口をもって発展しています。

この様な発展しつつあるメガロポリスという印象がよく似ています。
下の動画は、バンクーバーからCoquitlumに延びる電車Milenium Lineの様子です。バンクーバーの郊外には、この様な高層マンションが林立している住宅街が、いくつも成立しています。

ビルの階段計画

台湾の建築計画をみると、日本人的にはどうかなと思うことがよくあります。それは、日本では、二方向避難の原則として、2つの階段はできるだけ離して対角線上に設けるのがセオリーであるのに、台湾では中央に集中して設けることがとても多いからです。シーザー(ハサミ)階段などと言って、2つの階段を背中合わせに配置することもあります。この様な階段の計画は、日本ではとても珍しいです。

しかし、バンクーバーで泊まったホテルはこのシーザー階段を使っていました。この様な階段の設計の仕方は何も台湾の専売特許ではなく、カナダでも使われる手法だったのです。ですので、これは日本で見ないからといって否定するべきものではなく、日本以外の国では、頻繁に採用される計画手法かもしれないと思いました。

シーザー階段の平断面図

避難扉の規格

台湾でよく見る防火扉は、日本で見るものとは異なります。ドアノブを使わなくとも、バーを押すだけで開けることができる仕様になっています。台湾の防火扉には、国により定められた規格があり、各扉メーカーはそれに準じて防火扉を制作し認可を受けないといけません。そのため、このタイプの防火扉を頻繁に見ます。

このタイプの防火扉は日本ではあまり見ないのですが、カナダでは同じものをよく見ました。ですので、台湾とカナダは同じ建築思想に基づいていることが分かります。そして、その思想はアメリカの影響を受けたものに違いないと考えています。

水平バー式の防火扉。

シェアバイク

台湾では街中にたくさんのシェアバイク、Youbikeを見ます。現在は台北での普及はひと段落し、それ以外の地方都市に拡がっています。
台北のYoubikeは黄色ですが、バンクーバーでは赤いシェアバイクをたくさん見ました。街中で見かける頻度からすると、台北と同じ様な規模になっていると思われます。

バンクーバーのシェアバイク。

ノンジェンダートイレ

最近台北のあちこちの公共施設で見る、性別不問で使用できるノンジェンダートイレですが、グランヴィルアイランドのマーケットで見ました。男性用の小便器がなく、全てが大便器のブース式になっており、洗面は共用というスタイルです。
洗面台を男女共用というのはやはり何か不自然な感じがあり慣れませんが、現地の女性は何も気にせずにそこで化粧直しをしていました。

原住民に対する態度

バンクーバー博物館に行って、どんな展示をしているのか見学したところ、カナダの先住民イヌイットに関するとても広範な説明をしていました。カナダの土地は彼ら先住民のものであったという過去、現在用いられている様々なイヌイット起源の地名などです。

カナダの文化のルーツを彼ら先住民族イヌイットに求めるというこの態度は、現在の台湾が原住民の文化を重視して、漢民族が台湾に移住してくる17世紀よりも以前の歴史を掘り起こし、台湾島の原住民として尊厳ある民族集団と見ているのと繋がっている様に感じました。
この台湾の原住民族に対する態度は、中国大陸と同じ、中華民族に対する少数民族の存在、中華民族を中心とし、それにまつろわぬ周辺の諸民族を夷狄として見るのとは少し違うのではと考えていたのですが、このカナダの先住民に対する態度を見て、どうもこちらの思想に近いのではと感じました。

バンクーバーの友人によると、この先住民に対する態度は非常に政治的なもので、国の仕事をする時には、常に原住民の言葉を使って、何やら宣言しなくてはいけないそうです。彼らの土地を使わせてもらってありがとう。感謝しますと常に唱えていないといけない。それがカナダのPolitical Collectnessだと言っていました。
台湾ではそれほど政治的な問題であるとは感じられませんが、文化的歴史的に重要な意味を持っている様に思います。

多言語政策

このバンクーバー博物館での先住民に関する展示では、アルファベット以外の文字を大量に使っていました。見たところ、言語学の発音記号を用いて先住民の言葉を表現している様子でした。
カナダにおける先住民族の人口比率は、2%ほどなのだそうです。この人口は、例えば19世紀以降の移民である華僑などと比べても相当に低いです。しかし、それにもかかわらずこの先住民の言語を尊重し、彼らの言葉に相応しい表現を模索している。この多言語を積極的に推進している態度が台湾に近いと思いました。

台湾では多様な言語を尊重するというポリシーがあります。中華系の言葉だけで、中国語、台湾語、客家語を用い、それ以外に原住民の言葉を16種族42種類をも認めています。そして、映画でもドラマでも、この様な言語の多様性を積極的に表現しています。この様な文化的な態度は日本にはほとんど見られないもので、台湾のこの考え方はどこから来たのか昔から不思議に思っていたのですが、もしかするとこれは、アメリカ/カナダの影響下もしれないと感じました。

国の歴史

カナダの歴史は17世紀にフランス人が植民を始めた頃から、記録に残る様になっています。その後イギリス領となり、先住民とフランス人を含み込んだ英国領となり発展を始めます。アメリカや台湾と比べてもとても歴史の新しい国だと感じました。

また、カナダの独立というのは、イギリスから自治権を獲得する歴史だということも教えてもらいました。現在は首相をカナダ国民から自ら選ぶことのできる、憲法を自主的に制定そして改訂する権利も有しています。
ただし、カナダは日本と同じ様に立憲君主制をとっており、その君主はイギリス国王なのだそうです。
そして、カナダ国民は今の状態、実質的に独立の果実を得ており、名目は君主としてイギリス国王をいただいている状態に満足しているのだそうです。
一方で、この様な形でイギリスとの関係を維持していることに反対している政治勢力もいるそうです。目的にせよイギリス国王を君主に頂いているのはおかしいと考える人もいるわけですね。

台湾の場合は実質独立しているが、それを国際的に宣言しても中国に反対されているわけですが、この植民地の状態から独立を勝ち取っていく過程にあるというのも、ある意味台湾に似ていると思いました。

アメリカを兄貴とした子分達

この様に、台湾に生活して日本と違うと感じていた様々なことが、カナダにおいて同じ様に見れることにとても驚きました。なぜこの様なことになっているのかを考えると、キーとなっているのはやはりアメリカの文化だと考えています。

カナダは北アメリカ大陸におけるアメリカの隣人として、アメリカの大きな影響下に置かれています。一方台湾は、日本が太平洋戦争の後に退場した後、これもやはりアメリカの影響下に置かれ、様々な産業活動、文化活動を展開しています。そのために台湾とカナダが多くの側面を共有しているのではないか。国の規模も地政学的環境も全く異なっている両国ですが、この様なシンクロニシティーを持っているというのがとても興味深いことでした。

今度は、このことをアメリカに行って確かめないといけませんね。これらの出来事がアメリカ由来であったら、アメリカにそのルーツがあるはずです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?