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台湾人の家族関係

僕は3人の男兄弟の長男です。うちの家庭では、両親はどの様な進路に進めということは一切言わず、常に自分の好きな仕事をやれと教育してきました。結果僕は建築、上の弟はグラフィックデザイナー、下の弟は機械関係の仕事を選んでいます。父親は自分で電気関係の会社を立ち上げ、長い間経営してきたので、本音を言うと男兄弟3人の誰かがこの仕事を継いでくれればと期待していたのかもしれません。しかし,3人が3人ともそれぞれ異なった仕事を選んでいます。

そんな風に育ててこられたので、仕事というものは自分のやりたいこと、得意なことをやるものだと思っていたのですが、どうも世の中はその様ではなかった様です。
それでも日本では、比較的親は子供の自主性を尊重して、子供のやりたいことをやらせてくれるように思います。しかし台湾では、親は子供に強制的に親がやるべしと決めたものをやらせる傾向が強い様に思います。

音楽の好きなジャズミュージシャン

台湾のジャズミュージシャンは、これは誰もがみんな自分の好きな音楽をやっています。それは、僕が彼らを好きな理由の一つです。

台湾ではジャズはお金の稼げない音楽なので、彼らがジャズをやっている動機は、絶対にお金稼ぎのためではありません。台湾のトップクラスのジャズミュージシャンでもそうです。台湾では日本と比べてジャズのマーケットがとても小さいので、音楽産業として成り立たないので仕方がありません。
また、多くの音楽大学でもクラシックの音楽を主に教えており、ジャズは教えていません。それだけならまだしも、先生によってはジャズは教える価値のない、生徒には触れて欲しくない音楽とさえみなされている様子です。

ですので、台湾のジャズミュージシャンは誰もが皆、この音楽が好きで演奏しています。演奏活動だけでは食べていけないと、先生をやったり、他に職業を持ちながら、それでもこの音楽をやることが大好きでやっている。そういう人たちばかりです。

音楽の嫌いなクラシックミュージシャン

この好きなことをやっているというのが、台湾のクラシック音楽の世界ではどうも違うらしいのです。クラシック音楽をやっている若者の中には、もちろんこの音楽が好きで自主的にこの音楽を学ぶことを選び、音楽大学に進んでいる人達もいると思います。しかし、中にはこの音楽は好きでも何でもないのに、とにかく親からやれと言われてやっているという人も少なくないらしい。

台湾では、日本と比べると音楽をやるというのは特別なことの様に思われている気配があります。日本では学校のクラブ活動で音楽をやるというのは普通の風景です。それが、台湾の小学校・中学校でのクラブ活動というのは、授業料の他にクラブ活動費用というのを納めて、学校の教員の他にクラブ活動のための先生を雇って行うものなのだそうです。そしてその費用も決して安いものではない。そうなると家計的に余裕があり、音楽を学ぶことをよしとする両親のもとでないと音楽のクラブに入ることはできません。
そして、その様な親のもとで、強制的に音楽の勉強をさせられているという学生が少なからずいるのだそうです。ですので、親の意向でこの様にお金をかけて音楽を勉強させられて、そのまま音楽大学に入り卒業した様な人は、必ずしも音楽が好きではない。好きでもないものを、学校を出たために仕事としてやっている。そんな具合な様です。

一度、音楽の先生をやっている台湾の友人にこの事を聞いたことがあります。何故台湾のご両親は子供に音楽をやらせるのですかと。そうしたら"為了培養孩子的氣質"と言っていましたね。気品のある子供に育てたいから。
別のところではこんなことを聞いたこともあります。娘をお金持ちのところに嫁にやらせる。そのために音楽を学ばせる。これは実例を見たことがあります。台湾に留学中に、家内が著名なフルート奏者のファンだったのですが、その人をある企業グループの董事長夫人として見ました。彼女はもう音楽はやっておらず、お金持ちの奥様として振る舞っていました。

子供の進路に関して親の意向が強い台湾人

台湾では、みずからの進路を決める際に、親がかなり強く意向を示す様です。親が医者をやっていると子供も医者にというのは、日本でもよく聞きます。そうでなくても、子供には将来性のある進路をと、子供の適正に関わらず勉強させることがよくあるそうです。例えば今の時代ではコンピュータープログラマーであるとか、親の家業を継ぐとかですね。それで、不適応を起こした子供の例は枚挙に暇がありません。

結婚の相手を選ぶにおいても、両親の意向は大きく影響しているように思います。僕の知り合いの中でも、親の反対のために国際結婚を許されなかったとか、母親の意向に合うように配偶者を選んだとかいう話を聞いたことがあります。
結婚してから両親と一緒に住むことになり、旦那さんが母親の言いなりになっていて、どうにも慣れないという日本人の奥さんの話もよくあります。

台湾のテレビドラマを見て思うのは、ドラマのストーリーに親子の葛藤というテーマがほぼ必ず盛り込まれていることです。日本では例えばラブストーリーを作る際に、主な登場人物は主人公の友人や会社関係の人物で、両親が出てくるとしても、ストーリーに深くかかわってくることはあまりありません。これが台湾のドラマでは子供の恋愛に両親の意向が深く関わってきます。そもそも、それがドラマの中心をなすことも多い。このドラマの作られ方の傾向は、ある程度実社会の在り方を反映しているのだろうと考えています

家族を重んじる台湾の社会

日本の社会は核家族化が進み、新しい家族に子供ができたときには基本的に夫婦二人で子供を育て、お祖父さんお祖母さんには面倒を見てもらわないという形が基本の形だと思います。これが、台湾の場合、子供を両親に預けて若夫婦は共働きというケースが非常に多い。この様な場合、お祖父さんお祖母さんは家族の一員として若夫婦の手助けをしてくれます。

しかし、この様な三世帯の家族になると一面、お祖父さんお祖母さんの意向を若夫婦は聞かなくてはいけなくなるケースも出てきます。その影響は多方面に渡り、それは日本の感覚とは大分異なるように思います。

例えばこんな例があります。

社員旅行というのは、今の台湾の会社ではよく行われています。その際に社員が同伴できるのは配偶者とは限りません。両親を連れてくる場合もあります。男性社員が母親を連れて社員旅行に現れたときには、思わずクエスチョンマークが出ました。母親と息子でホテルの一室に泊まるのだろうか?しかし、台湾ではこれは不自然ではないようです。

台湾では母の日(母親節)のディナーは、クリスマスディナーよりも豪勢です。これは母の日の食事会は家族そろっての大所帯になるので、レストランとしてもかき入れ時になるのでしょう。台湾の5月はどこのレストランに行ってもこのは母の日セットメニューになっていて、普通の料理は予約のできないこともあります。
そして、母の日は一年で最大の家族のイベントになっており、それは恋人同士のそれよりも盛大になります。これは父の日よりも、華やかに行われる様です。

この様な、核家族ではなく、もう少し大きなお祖父さんお祖母さんを中心としたファミリーを以って行うというのが、台湾人の生活スタイルという様に思います。
僕は台北に住んでおり、年に数回家内の実家、屏東に遊びに行くのですが、その際は必ず兄弟姉妹揃って、お母さんも含めた食事会になり、この単位で遊びに出かけます。これは恒例行事ですね。日本とは大きく異なる家族関係です。

写真は、毎年シーズンになると屏東から送られてくる果物です。蓮霧、棗子、荔枝などがたくさん届きます。

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