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【台湾建築雑観】台湾人が日本のマンションを見て考えること

僕は日本のディベロッパーのコンサルタントとして、日本の住宅の考え方を台湾に導入するのをお手伝いしています。日本の住宅のこんなところは便利だということを、台湾のマーケットに提示して、それを競争力のある商品として売っていこうというわけです。しかしこれはなかなか上手くいきません。台湾人の好む住み慣れた住宅の在り方が、大きく日本人の設計する住宅と異なるからです。

 ここでは、逆に台湾人が日本の住宅を見て問題だと考えることを説明してみます。仕事上いろいろな日本の住宅のプランニングを提案したこともありますし、台湾人の友人が日本の家を購入したいというので、その相談にのったこともあります。そんな中で気がついたことを書いてみます。 

1)     室内の間仕切りの遮音性能が低い

日本の石膏ボード一枚貼の間仕切り壁は、ペラペラで遮音性能がないと思われています。台湾の室内の間仕切りはデフォルトでレンガ積み、最近はセメント板の中に軽量コンクリートを詰める工法が用いられていますので遮音性が高いです。手で触った時の固さがないということもあると思います。 

2)     主寝室専用のトイレとシャワーがない

一つの住戸に2つのトイレとシャワーのセットが欲しい。台湾のマンションは大体主寝室には専用のバスとトイレがついています。ないなら追加して欲しいとお願いしても、それはほぼ100%拒否されてしまいます。

3)     設計変更が困難

オーナーリクエストによる変更プランを受け付けてくれない。台湾ではディベロッパーは顧客の要求に合わせて様々な対応をしてくれますが、日本では大幅な変更は受け付けてもらえません。台湾では竣工時スケルトン渡し、その後にオーナーによるインテリア工事を別途発注ということが日常茶飯事です。また、そのようにした場合にはインテリア工事の差額を値段を下げることを要望されます。

4)     床がタイルにできない

台湾の生活習慣ではタイルで硬い床がデフォルトなんですが、日本でマンションに住むと二重床でフローリング又は塩ビシートが標準です。タイルは工法的に使えないし、無理して使おうとしても、床で音が響くので下からクレームが来ます。大体マンションの管理基準でNGです。 

5)     マンション内で楽器の演奏ができない

これは恐らく日本のマンションでの騒音に対する許容度が非常に低いんですね。バイオリンとチェロをやっている夫婦が、家で練習できないとこぼしているんですが、日本ではそれが常識です。台湾では、僕はTiny Apartment Concertなんていうマンション内でのジャズライブに参加したことがあります。ドラム付きのトリオです。そんなことは日本ではまず不可能です。台湾では、住居専用地域というような土地区分をせず、どこに行っても低層部に商業施設があります。そんな環境なので、騒音に対しては許容度が相対的に高いのだと思います。 

6)     室内に柱や梁がある

最近の台湾の建物では柱や梁は外壁側にあることが多く、余り室内に現れません。建築計画をする際のデフォルトが、そうなっているのですね。柱と梁が外観に現れるデザインになっていて、外壁に面しない場合に室内に柱や梁が現れます。特にインテリアデザインをする際にこの梁の位置はベッドの枕の位置に来ないように配慮します。 

7)     天井が低い

これは階高設定がそもそも違うんですね。日本は3.0m以下のことが多い。2.8mぐらいが標準でしょう。台湾は法律で3.6m以下と決まっていて、大体3.2m以上で設計することが多いです。

8)     バスとトイレが分かれていて狭い

トイレとシャワー室が一体という台湾式の生活様式に慣れているので、日本のトイレに入ると圧迫感があるらしいです。一体となった空間でおおらかにシャワーとトイレをすますというのが台湾人のデフォルトです。 

9)     廊下の面積が多い

廊下が長くて無駄に感じられるようです。台湾人のプランニングは玄関に入るとすぐリビング、その奥に個室群が配置されるので、廊下がミニマムになります。彼らはそこにこだわる。廊下のスペースは無駄だと考えます。日本でそんな平面はなかなかない。だいたい廊下の奥に日当たりの良い部屋があってそれがリビングです。 

10) バストイレが外壁に面していない

バストイレが外壁に接していない。これも生活習慣ですね。恐らく設備計画に問題が多いので、窓があって直接換気できるプランニングを好みます。

日本人の建築設計者が台湾に来て、日本の進んでいる設計内容を台湾に持ち込もうと考えますが、上記の様な理由でなかなかうまくいきません。これはどちらが優れているというものではなく、生活習慣の違いからくる計画内容の違いと考えた方が妥当なのでしょう。

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