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台灣華語のスラング(その一)

台湾で生活している中で、辞書には出てこない、面白い使い方のヴォキャブラリーに出会すことがよくあります。そうした言葉にぶつかると、最近はネットで検索して、実際の用法を確認してから意味を特定するということをしています。
今後、ある程度たまった毎に紹介していこうと思います。今回は、第一弾。

【街友】

街の友達、この漢字のニュアンスから何か肯定的なニュアンスの言葉なのだろうと感じます。しかし、この言葉が使われていたのは、クレジットカードを使った犯罪のドキュメンタリーフィルムの中でした。
台湾の犯罪者が、偽のクレジットカードを作り、それでキャッシュを引き出し踏み倒す。その様な犯罪の一環として、街の浮浪者を捕まえて、仮の仕事をさせます。その仕事の実績をもって正規のクレジットカードを作らせる。そして、作った途端にまとまったお金を引き出してしまうわけです。そして、それはそのまま踏み倒される。
その浮浪者は、ある部屋に何人も閉じ込められ、残飯を与えられながら生ける屍となっていく。そんな犯罪の紹介をしていました。事件の舞台は淡水だったので、我々の生活しているすぐ近くでその様な犯罪が犯されていたと戦慄しました。
その浮浪者のことを街友と呼んでいるのですね。優しい言葉のイメージとは裏腹な、浮浪者或いはホームレスと言った意味の言葉になります。

【糞飯】

これは、日本語で言うと猫飯ですね。人間が食べるに値しない食べ物という意味で、糞飯と呼ぶ様です。しかし、実際この言葉を使われたのは、同僚に自助餐を食べる事を言った時のことです。
ある種の台湾人にとっては、自助餐は貧乏な学生が食べる代物で、ただただ空腹が満たせれば良い。食事としては、最下等のもの。そんな意味合いで使っていた様に思います。
僕は台湾の自助餐はとても美味しいし、おかずのバリエーションも豊富なのでよく利用しており、そんな言葉で表現されるものではないと思っています。しかし、中国の社員食堂で食べる食事、あれは美味しくないし今ひとつ。糞飯と言っても良いのではないかと思います。

【大咖】、【小咖】、【咖司】

これは、音楽の仲間がよく使っていた言葉です。大咖ビッグネーム有名どころ小咖がそれに比べると無名のミュージシャンと言ったニュアンスで使われていました。ただ、が何なのか分からなかった。
しばらくして、これを咖司と熟語として使っている用例を発見して、調べたところ、謎が解けました。これは、castの外来語表現だったんです。日本語のキャストよりも広い意味で、俳優やミュージシャンに対しても使うようですね。それで、それに大/小を加えて使っています。

【搖滾區】

搖滾は音楽のジャンルでロックのことです。しかし、区を加えてロックエリアというのは、何ぞや?初めて聞いた時はピンときませんでした。具体的には、観客席の最前列、ライブでミュージシャンのすぐ前の席のことをこの搖滾區という言葉で表現しています。かぶりつきの席ですね。
僕は専らジャズのライブに行くので、ロックの様な熱狂的なことにはならないので、毎回、違和感を持って聞いています。ジャズを搖滾區で聴くとは、これ如何に?

【C位】

これは、両手に花状態の写真を撮ってもらったときに、僕がC位にいると使われていました。真ん中に写っているのでcenter positionのことかなと思って調べてみたら、違っていました。
このCは本来はcarryなのだそうです。なのでC位はcarry positionになります。これはどうも、的を当てる時の目標を意味している様子。少し物騒な表現ですね。

【社牛】

この言葉は、人間関係を表現する話題の時に使われていました。普通の人間は対人関係に悩み、恐れを抱くものだと。その場合は"社交恐懼症"と表現していました。略して"社恐"。これは言葉を聞くとなんとなく想像できました。
これに対し、人間関係にとてもおおらかで、何の悩みもない人間を"社交牛逼症"と呼ぶのだそうです。これが略されて"社牛"。これは聞いても分からなかった。
何故牛が使われるのか、"牛逼"の正確なニュアンスまでは捉えられていません。どうも、ネット上のスラングとしてよく使われている様です。

【顏值】

これは文字として理解出来れば想像できますね。"顔値高"と、通常褒め言葉で使われます。女性に対して美人だとか、ルックスが良いという意味になります。男性に対して使った例は見たことはありませんが、理論上は使える様に思います。男性の場合""でハンサムの意とすることが多いですね。

【CP值】

これもよく使われます。"コストパフォーマンス"、"コスパ"の意味です。"CP値高"で、"コスパが高い"という使われ方になります。

【賽道】

これは、職業の選び方を話していた時に使われた言葉です。「找對賽道,真的好重要」こう言われたので、人の選ばないニッチな仕事のことかと初め考えました。しかし、これは投資の世界で用いられる有望株のことの様です。
塞道の原義はレーシングコース、レースを行う道路の意味です。そこから考えると上の言葉は、「コースを正確に選ぶことが大切だ」と訳せるかもしれません。
下は調べた中で出てきた説明文です。やはり投資関係の説明に使われていました。
「赛道是细分行业或者行业的一个细节分支,这个分支它可能会范围很广,也有可能会非常窄」
「"賽道"とは職業、あるいは仕事の一部を細分化した部分のことです。この様に細分化された賽道は、範囲の広いこともありますが、とても狭い場合もあります」
この様なニュアンスであれば、ルートと訳した方が良いかもしれません「(仕事を選ぶのには)正しいルートを選ぶことが大切です。」

台湾の方、或いは中国の方。もし、これらの解釈に間違いがあったり、もっと良い訳語があったら教えてください。

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