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漢字の勘違い

中国語と日本語で、異なった漢字を使う表現をピックアップしてみました。何故こんなことになったのか考えるのも一興です。

卓と桌

日本語では"卓球"と書きますが、中国語では"桌球"になります。中国語のこの""の文字は日本語の当用漢字にはないので使えないのでしょう。しかし、中国語でテーブルは"桌子"なので、""の文字を使うのが本来なら正しいはずです。日本語では"食卓"も、"卓"の字を使ってますね。

"の文字は"卓越"などという用法があるように、"他より優れている"とか、"高い"という意味になるので、table tennisの訳語としては、卓球は不適切です。笑

珈琲と咖啡

コーヒー"を表す漢字は、中国語と日本語では異なります。旁は同じなのですが、偏が異なります。中国語は"口偏"、日本語は"王偏"です。素直に考えると、飲み物を表す言葉なので旁は口偏であるのが自然です。日本語では、何かの理由があって王偏になっていると考えられます。

この疑問については、とても詳しい論文があったので、下記にリンクを貼っておきます。かいつまんで結論を説明すると、この二つの表記はいずれも中国起源のもので、それが中国では"咖啡"に日本では"珈琲"に収斂していった、というものです。日本では、貿易の実務で使われていた漢字が"珈琲"であったことからこの表記が普及していった。一方中国では、珈琲の表記が普及せず、咖啡の文字に収斂していった。この様な説明でした。

この論文の論拠は凄いですね。

https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/81237/hnk33_033.pdf

聞と聴

日本語で"きく"という言葉の表現は一種類ですが、英語では、"listen"と"hear"の二種類があります。"listen"は注意深く集中して聞く。例えば音楽を聞くのは、listen the musicとなります。"hear"はそれほど集中せずに聞くイメージですね。hear nature sound、自然の音を聞くなどとなります。

この"きく"という日本語の動詞は、中国語では普通""という漢字を使います。"聽音樂"、"聽人家說話"など。"聞"と言う漢字は使いません。""は匂いを嗅ぐ時の嗅ぐという動詞や、新聞の聞として使われます。

一方日本語では"聞く"と"聴く"の両方とも使うことができまずが、上記の"listen"と"hear"の様な厳密な使い分けはされていない様です。"視聴覚"であるとか"聴力"という言葉からは、""はlistenに近いニュアンスを持っていると思われますが、印象でしかありません。

記念と紀年

日本語で誰かの出来事を顕彰する様な建物の場合、"記念館"という言葉を使います。"記念する"という動詞があり"記念館"という言葉も普通に出てきます。
下記に全国の記念館リストというホームページのリンクを貼っておきます。日本語では"記念館"という使い方が一般的です。

しかし、台湾では"記念館"という言葉をあまり使いません。"紀年館"という言葉が一般的に使われています。例えば、"中正紀念堂"、"國父紀念館"などです。中国語では何故糸偏の"紀"が使われているのでしょう?まだ、理由をはっきりと理解できていません。

炭と碳

日本語では、木からできる""も元素記号の"炭素"も、どちらも同じ""の文字を使います。

これが、中国語の場合炭素は""の文字一文字で表します。中国語では、元素については一つ一つ独自の漢字を使っていますね。

中国語の元素の表現

上の元素記号表を見ると、日本語の"ケイ素"は大陸の"硅"で同じものですが、台湾では""になっていますね。発音はxiでシーと台湾のものは英語の"silicon"からの外来語表現なのでしょう。

建築建材で"ケイ酸カルシウム板"というものがありますが、台湾ではこれは"矽酸鈣板"と呼ばれています。

硝子と玻璃

ガラスの漢字の表現は、日本語"硝子"、中国語"玻璃"と異なります。
この"玻璃"という言葉は、戦前は日本語でも使われていたものが、戦後はほとんど使われなくなり"硝子"に収斂されていったのだそうです。一方中国語で"硝子"という漢字は使われません。
ある説明には、明治時代に"硝子"という文字を使った会社がガラスの製造に成功して以来、会社名に用いた"硝子"という表現が普及していったのだとありました。

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