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ボカロメタル投稿祭を振り返って

2022年11月27日に、ニコニコ動画にてボカロメタル投稿祭を主催しました。
その振り返り記事です。


ボカロメタル投稿祭とは

ボカロ音楽のジャンルに「ボカロメタル」と呼ばれるものがあります。合成音声キャラクターが歌うヘヴィメタル、ハードロックなどを総称するジャンルです。

今回、僕が主催となってニコニコ動画へのボカロメタル曲の同日投稿を呼びかけたのがこのイベントです。

参加条件

  • 合成音声キャラクターがメインで歌うボカロメタル曲であること(オリジナル・カバー問わず)

  • ニコニコ動画に投稿する際に「ボカロメタル投稿祭」タグをタグロックして付けること

参加条件についてはかなり緩くしました。合成音声キャラクターメインとする代わりに、グロウルや掛け声、デュエット、ポエム詠唱などのサブパートを人間が担当することを可としました。

また、オリジナル・カバー問わずとしたことで、普段オリジナル曲制作を行っていないボカロPやバンドマンなどのプレイヤーの参加を意図しています。なお、プレイヤーについては、他にTwitter上で「ボカロメタルタッグ」タグによるボカロPとプレイヤーの相互募集も試みましたが、こちらはあまり活用されなかったようです。告知が不十分だった可能性があります。

告知・宣伝

告知をTwiplaとニコニコに公開した告知動画で行い、宣伝は主にTwitterでの広報活動が中心になりました。幸い、長年のM3やボーマス等のイベント参加などでメタル好きのフォロワーさんも多く、拡散はすんなり行えました。特にボカコレが終了した10月中旬からは参加表明が加速しました。最終的に「参加表明」が100名強、「興味あり」が50名ほどになりました。

11月に入ってからの動きで面白かったのが、参加者が自主的に「ボカロメタル投稿祭小出し情報」タグを作り、製作中のwip動画の告知を行い始めました。皆がそれに相乗りする形で製作中の曲の広報等を行い、結果的に投稿祭自体が拡散していったようです。タグは運営側で用意したものではなかったので、自然発生的な動きに救われ、驚いています。

他には即売会などで遠征に出かけた街の楽器屋さんに掛け合い、お店の掲示板にマテリアルを貼らせていただくなどの活動もしましたが、こちら経由の効果は計測できていません。

参加傾向

集計詳細はGoogleスプレッドシートをご参照ください。

また全投稿曲をレビュー付きで、ニコニコ動画のマイリストにてご紹介しています。

投稿作品の内訳

当日は150名以上の参加、合計169曲の投稿がありました。内訳はオリジナル曲143、カバー曲26です。

ジャンルはかなり大雑把に分けさせていただきました。
複数のメタルサブジャンルのミックス曲も多く、また普段ロックやポップス、エレクトリックなどを主力にしている方のクロスオーバー作品の区分も「あくまで既存のメタルに当てはめると」という観点で分類しています。
メタルだがどれにも属さない系統や他ジャンルの色が強く判別の難しいものはオルタナとして区分しました。

ジャンル割合

目立つのはジャーマンメタルから派生したスピード感のあるジャンル、次点でエクストリーム系。
そのジャンルガチの作品が多かったのはスピード系/ヨーロッパ一般/ハードロックに集中しており、他は半数くらいがクロスオーバー作品です。

参加者の属性

参加者の投稿歴の比率ですが、初投稿から2年以内のルーキーが55%、3〜9年の中堅が32%、10年以上のベテランが12%でした。

投稿歴

ボカコレが始まって以来、ルーキー枠のボカロPの増加が目に見えて増えています。また各参加者の過去投稿一覧も確認しましたが、年10曲以上の数で投稿をする熱心に活動をしている方がかなりの割合で存在しています。今回が初投稿という方も若干名います。

一方で10年前後のボカロPとなると数百作品の投稿をしている方も目につきました。
この機会に数年ぶりにボカロ曲を投稿した復帰組も一定数いました。

投稿やランキングに関して

投稿時刻は開始直後に集中しました。一方で時間ギリギリまで間に合わせようと頑張ってくれた方も多く、皆の意欲の高さに感謝しています。

時間帯

デイリーランキングは参加者の90%以上に数字がついており、ラング外の人はほぼニコニコの音楽カテゴリに登録していないもしくは「VOCALOID」タグがついていないのが原因でした。次回はその辺も告知に注意点として書かないとダメですね。
なお、当日は巡回しながら「VOCALOID新曲リンク」を付け足しながら観ていました。結構、このタグを使うことを知らない方も多いのですね。

ランキング最高順位

デイリーランキングではTOP20までに入った作品数が23と多く、11月27日当日は24時間の間、入れ替わり立ち替わりでボカロメタル曲がランキング最上位を占めていた傾向が伺えます。TOP100までを含めると3割もの参加者がランキング上位を経験したことになります。

また、当日は多くの方がTwitterに自主的にレビューを投稿し、ボカロP本人、リスナー共々、相互に評価しリスペクトする動きが見られました。これがTwitterを見ている方の興味を惹いた部分も大きく、ボカロP同士の交流が進むきっかけにもなりました。
今回は特に記載しなかったのですが、次回開催するならTwitterでの「ぼかれびゅ」タグの使用を積極的に勧めてもいいかもしれませんね。

運営としての想い

楽しむこと・つながること

企画に際して一番大きかった想いは「楽しむ」ことでした。ボカコレのような賞レースの場合、知名度の向上が期待できる半面・素直に楽しめない一面もあります。この投稿祭は「メタル好きのボカロPが一堂に会する場」であり、広義のメタルを楽しむ機会として企画しています。

また、「ボカロメタル」というジャンル自体マイナーで、一般リスナーの反応も思わしくない傾向があります。
ボカロP側にボカロメタル作品を作ることに躊躇する気持ちや、活動に対する孤独感を感じたりしていないだろうか、といった疑問が常々自分の中にありました。
今回、これだけの同志がいたことがわかり、心強い気持ちになった人がいればいいなぁと思っています。

多様さや可能性を知る

もう一つは多様さや可能性を知るきっかけ作り。
人は自分が触れたことのないものを、想像したり共感したり共鳴することは難しいものです。
メタルというジャンルと向き合った時の他者の発想や表現と出会うことも、「次」を生み出す小さな一歩になる気がしていました。
メタル側の人がメタル以外のボカロPのメタル作品を触れた時、メタル以外のボカロPがメタル側のボカロPのメタル作品に触れたことで、今後起きることが非常に楽しみです。

今回のイベントは、「お祭り」にかこつけた遊び心を集めた小さなきっかけ。一夜にして世界を塗り替える革命の火には至らないものかもしれません。
それでもこの出来事が、僕らの創作を楽しむ心の中に豊かな実りをもたらす種を蒔いてくれていることを期待して止みません。
これは何かを生み出す側の人間なら、理解してもらえる感覚ではないだろうかと思っています。

作る側と受け取る側の存在

また、ボカロという文化の上でメタルを聴きに集ってくれた方々、ありがとうございました。
作る側と受け取る側の両者が揃って初めて創作は成り立ちます。
皆さんの好意のもと、ニコニコのランキングを派手に荒らすことができたこと、感謝しています。

最後に

以上、長くなりました。
今回、興味を持ってくださった方、応援してくださった方、この日のために投稿作品を用意してくださった方、大変にお世話になりました。大きな問題もなく終わらすことができ、また皆さんが楽しんでくれたことでホッとしています。

また、このように皆で楽しむ機会があればよろしくお願いします。

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