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VOCAWORLD - 08参加報告

5/18 台北・花博公園-爭艷館で開催された即売会イベント「VOCAWORLD - 08」のサークル参加報告です。

VOCAWORLDとは

台湾で行われている合成音声キャラクターに関連する同人作品の即売会です。2012年からスタートし、今回で8回目を迎えます。「Imagination Field 創集繪」(略称「IF創集繪」)内の1イベントとして開催されています。

日本でも名前の知られている同人イベントとしては他に「C.W.T」(「Comic World Taiwan」、サークル数3000前後、来場者数15万人)があります。C.W.Tがコミケに近い立ち位置なのに対し、IF創集繪(サークル数500前後)は例えるならVOCALOID STREETを開催している「京都合同」や名古屋の「ソウサクサミット」などのイベントを大規模にした印象を受けます。

参加にあたり

Youはなぜ海外の即売会へ?

台湾にも同人即売会があるのは以前より情報としては知っていました。そんな中でVOCAWORLDの存在を知ったのは昨年5月。それ以降、このイベントに参加できないかどうか、検討を重ねてきました。

普段僕がメインで活動している場所は、即売会はボーマス、動画サイトならニコニコ動画です。

ニコニコ動画は「どんな『好き』も存在を許される場所」ですが、(個人的な印象ですが)悪く言えば「究極の内輪受けサイト」の一面もあります。投稿した作品がそこに関わる声の大きな人、例えばインフルエンサー的なリスナーの興味を惹かない限りは、話題に乗ることはない印象を受けます(これは無名ボカロPとしての「みるくかふぇの単なる僻み」と笑ってください)。

またボーマスはボカロP/ボカロ2次創作者が主役のイベントですが、近年は「リスト買い」などが増え、来場者が知っているサークル以外に立ち寄り・目にした作品に触れる機会がどんどん減ってきている印象を受けます。

そうした中で、「ニコニコ/ボカコレでウケなかった終わり」「ボーマスで目に留まらなかったら終わり」という自分の心の中で発生しかねない閉塞感を打破するためにも、従来より「ニコニコやボーマス以外の選択肢・可能性」も並行して模索していました。その一つが海外です。例えば香港・中国本土に向けて展開している動画サイト「bilibili」に、2017年から定期的に作品を投稿をしています。

台湾は韓国と並び、日本から気軽に行けるご近所さんです。流石に新幹線に乗れば行ける場所と同じだけの気軽さはありませんが、(移動にLCCなどを使えば)旅費だけは東京から九州に行くのとそれほど変わりはありません。

また台湾の人々と日本の文化の親和性も高く、他の外国と比較してもチャレンジにあたっての敷居は高くないと感じています。

そういった考察も踏まえ、今年・台北とソウルで開催されるボカロ同人イベントへの参加を計画しました。今回はその第1弾として、台北の「VOCAWORLD」へのサークル参加となりました。

中国語・台湾語を話せない、どうするの?

この課題に関しては、数年前からだいぶ良い対処法が増えてきました。

翻訳サイトの翻訳精度が上がるとともに、AI技術の普及によってスマホアプリで翻訳を活用する対象が大きく広がったとも言えます。たとえば、画像翻訳や音声翻訳といった技術です。これによって、リアルタイムでのコミュニケーションの敷居もだいぶ低くなったと言えます。

宣伝

とはいえ、手ぶらで参加しても何も得ることができないことは当然予想されます。今回は、IF創集繪への日本サークル参加をサポートするボカロファングループが声をかけてくれたこともあり、事前の宣伝活動などにご協力いただきました。このグループは、C.W.Tでも日本から参加したボカロPサークル達のヘルプを行なっている実績があります。

今回、日本からIF創集繪に参加したのは6サークル。ファングループのアカウントにて、台湾のボカロファンに向けて日本のボカロP参加について発信を行うとともに、VOCAWORLD公式側でもリツイートをしてくれるなどのヘルプを得ることができました。

彼らとしても、今後日本のボカロサークルの参加イベントの一つとして台湾の即売会を検討して欲しいと願っているようです(8月下旬に韓国で開催される「VOCASTAR」への参加状況も気になっているようでした)。

並行して、個人での発信も進めました。基本的には繁体字によるお品書きの作成と、頒布品の宣伝動画のツイートです。

この2つの告知を5月中旬に入ってから定期的にリツイートすることで、台湾のボカロファンへの周知を実施していきました。

ブースの準備

お品書きを始めとするポップ類は、繁体字で作成しました。そのほか筆談の準備、またお釣りが出ないように配慮する習慣がないとのことで、100元札での支払いを歓迎する旨の張り紙も用意。試聴を勧めるポップも用意してブースに配置しました。

正直、どれだけ準備しても「まだできることがあるのではないか?」と出発前日の晩まで考え込んでいたくらいです。それだけ未知の場所でのチャレンジに対する意気が高かったのかもしれません。

また、昨年秋のボーマスではほぼ無視されて落ち込んだサークル通信にも再チャレンジしました。

なんだかんだ言って無名のボカロPです。立場は活動開始から11年経った現在でも未だに挑戦者です。名前を知ってもらわないことには何も始まりません。これは「知ってもらう・情報を届けられる距離にまで来てもらう」という目標に向けた取り組みです。

こうして通信には、「みるくかふぇ」の活動内容や聴いてほしい曲などの情報を盛り込みました。

成果・反省点

会場の雰囲気

来場者の密度は、秋のボーマスと変わらないレベルの混み具合でした。「人の流れが凄い」というひと言に尽きます。会場規模が大きいため、来場者数で見れば、ボーマスとM3の中間くらいの印象を受けました。

会場内でのVOCAWORLDのエリアは、ボカロPのグループと、2次創作のグループと分かれています。日本のサークルは一ヶ所に集められました。

VOCAWORLDでは100元の買い物につきシール1つを渡すというスタンプラリーも実施されることになったため、その対応も必要となりました。これは購入の促進につながっているかもしれません。

ブースにやってきた方は、どなたも熱心に試聴をしてくれました。「試聴して、気に入ったものを買う」という古の即売会のスタイルが今も残っている、という印象です。今の効率重視な日本の即売会に慣れてしまっていたので、これは良い意味での驚きでした。その分、購入までブースの滞在時間は長くなりがちで、列ができかけることも何度かありましたが、しっかり聴いた上で作品の感想も貰えたりと、嬉しいことも多かったです。

また、購入物にサインをお願いするという文化もあるようです。購入した方の8割くらいからサインを求められました。「本人から購入した記念」という意味合いもあるのでしょうか。国内の即売会では海外から来た方からくらいしか求められた経験がなかったので、海外特有の文化なの……かな?(単に僕が国内で人気がないだけかも💧)

台湾語を話せない件ですが、ブースに来てくれた方の半分くらいは簡単なコミュニケーションができる程度の日本語会話が可能でした。もう半分は、英語やボディランゲージで対応した感じです。1名だけうまくコミュニケーションがとれない方がいたので、その方だけは通訳をお願いして対応を済ませました。

また差し入れしてくれる方、僕の作品を知っている方も多く、気遣いに感謝する機会もたくさんありました。当日朝には、オンラインでF.A.のプレゼントも。

僕の作品を知らなそうでかつお品書きをチラチラ眺めてた方も随分いらっしゃいました。そうした方を見かけたら、こちらから自発的にサークル通信を渡すなどして認知に努めました。サークル通信にはニコニコのQRコードを載せていたこともあり、後からブースに買いに戻ってきてくれる方も何名かいらっしゃいました。

結果的には、日本から持っていたCDは1枚を残して完売。過去一番売れた即売会になりました。これに関しては、日本のボカロPが珍しかったこと、日本のサークルが多数参加するという情報が事前に流れていたという点に尽きるかもしれません。

また、「作品を聴いてさえもらえれば、なんとかなる」という過去の即売会でも実証されていた強みが、ここでは最大限に発揮されたように思えます。

渡航代や滞在費を含めれれば、費用を回収できているわけではないのですが、海外遠征はいわば未来へと繋ぐ種蒔きだと思います。実際に異国の地で多くの人にみるくかふぇを知ってもらうことができ、またこの地にも僕の作品を楽しんでくれている人たちがいる事実を知ることができました。僕は今も長い長い種蒔きの時期を続けていますが、いつか来る収穫の時を目指して気長に活動を続けていくつもりです。

ボカクライベント

東アジア各地域のボカロ文化を繋ぐ

同日夜に隣接する会場でボカクライベントが開催されました。マカオ出身のDJの方が主催となり、以前より香港や台湾・日本のDJやボカロP達と一緒に開催しているようです。

ファングループの方から、主催の方を紹介していただきました。その際に告げられたのは「香港やマカオといった地域のボカロ活動者と他の地域の活動者を繋げ、ボカロ文化を連携させていきたい」というお話でした。また「可能ならば香港やマカオでもボカロイベントを開けるようになったら……」といったことも。

海外ボカロ勢も個々に活躍はしていますが、ニコニコ動画など日本から見える活躍の数はまだまだ少数です。こうした海外のボカロ勢の姿もどんどん見えてくるくらいに、距離が近づいていくといいなと感じています。

音楽的な話

その他ボカロP的には、ボカクラでDJが既存曲をどのように料理するのかも大変に興味深いところでした。DJの場合、ミキサーを使って音響的な効果とともにリミックスしたり、リズムマシーン(もしくはパッド)を使って効果音を盛り込んだりといった、ライブ感漂うリミックス/編曲が見所となります。

現代のJ-POPはクラブ文化やヒップホップなどの影響を強く受けています。直接的なアレンジのジャンルとして採用されていなくても、音作りや曲の構成など「切って繋げる・混ぜる」といった手法は今や当たり前のように使用され、メタル・ロック畑の僕からすれば想像のつかない場所にまでJ-POPは連れて行かれてしまいました。

こうした場に向く「素材としての音楽」「素材としての二次利用に耐えうる音楽」を作るにも、どんどん目を向けて行ったほうがいいのだろうな、と感じています。「僕の曲のSTEMを渡した場合、僕の曲はバスドラの4つ打ちリズムに耐え得るものなのだろうか?」なんて素朴な疑問も湧いたりしています。

無論、本来はその場でそんな難しいことは考えず、単純にビートを楽しむのが一番なんですけどね。

この先の即売会予定(申込中含む)

  • 6/9 「ついなちゃんドゥルル祭」 川越キャラクターベース9(埼玉県川越市) ⭐︎GUMI & ついなちゃん 歌唱のポップロック新譜リリース予定

  • 7/21 「THE VOC@LOiD M@STER 56」(ボーマス) 大田区産業プラザPiO(東京)

  • 8/4 「ガタケット178」 新潟市産業振興センター(新潟市)

  • 8/24〜8/25 「VOCASTAR」 ソウルSETEC(韓国・ソウル市) ⭐︎flower歌唱のメタル&ロック 新譜リリース検討中

執筆者プロフィール

メタル&ロック系ボカロ曲制作者。人の内なる成長や希望を、メタルやロックをベースとした音楽で表現することを目指しています。
2013年活動開始、年10回前後の合成音声系即売会へ参加、10枚のアルバムをリリース。


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