アパレル環境問題に中指を立てる(ために服をつくってみた)
Fxxk fast fashion
昔から物持ちが良い子供だった。
価格など関係なく、自分の中で価値を感じたものは大切にしている。
例えば友達が描いてくれたドローイングやいただいたデモテープやミックスCD。
そういった『自分にとって大切なもの』の中に当然服もたくさんある。ボディの品質は驚くほど悪いけれど思い入れのあるバンドのTシャツや、今後いつ着るかわからないけれど学生時代に少ないバイト代を貯めて背伸びして買ったブランドの服や靴などだ。
なかなか出番のないやつらは、なるべく必要とする人に譲るようにしているけれど物は増える一方。
だから服を買うときには『それらがデザイン・製造された背景も含めて本当に欲しいもの、品質も自分で納得できるもの』を買うようになった。
その結果自分のワードローブは永く着れるもの、飽きのこないものが増え、副産物的に自分が本当に好きなファッションの審美眼が養われた。
一方で、ライブハウスやクラブ、フェスに遊びに行ったり自分自身でも演奏する自分の場合、アクティブに動く予定のある外出の際は、素材や作りの耐久性的に「これは現場には着ていけないな。。」と思う服の割合が増えてきていた。
スポーツウェアはあまり着ることはないし、ファストな服を使い捨てのように着て廃棄することは避けたい。
「〇〇(ファストファッションの会社名)で定番っぽいアイテムを買って半年から1年くらいで捨ててまた新しいの買うのが合理的でスマートだよね。」
すみませんその価値観、自分は共感できません。
結果、自分で服を作ってみようという結論に至りました。
現在のファッションの最大の問題である大量生産、大量廃棄、労働搾取
様々なメディアで語られていることなのでこのnoteで詳細に書くことについては控えますが、アパレル製品に限らず物を作る上で同じものを大量に作れば作るほどひとつ当たりの製造原価は安くなります。
結果的に何の特徴もない服が人件費の安い国で大量に製造されて多額の広告費とともに『ベーシックなデザイン』的な冠が付けられて市場に出る。
ベーシックなデザインとは何を基準に決めたのだろう?
環境負荷を無視した安価な素材の選定、セール価格になることを見越しての大量生産、その先にある大量廃棄。
大小問わずアパレルブランドも営利企業なので損益分岐点を考えて製造数を決めています。「結局同じ金額を掛けて服を作るのであれば廃棄される可能性が高いけれど多めに作っておくか」という考え方は理に適っているとも思います。
「合理的なのは理解できるんですけど、それってクリエイティブなんですかね?ファッション業界ってそんな感じなんですかね?」と周囲のアパレル産業に携わる知人には事あるごとに聞いていました。
返ってくる返答は、会社を続けるためには金銭的な利益が最大化される選択を取らざるを得ないといった旨の回答でした。
これは理解できます。でも、大量生産、大量廃棄が前提になっているビジネスモデルってそもそも詰みゲーなのでは?と考え、自分で服を作る場合には下記のルールを設定しました。
服をつくる上での5つのルール
①既存のメンズ/ウィメンズ、サイズ展開の仕切りがないアイテムをつくる
②環境負荷の低い素材(オーガニックコットンや植物由来の再生レザー)でアイテムをつくる
③生産背景を明確にすること(今回は全て東京の職人さんに量産のお願いをしています)
④新品の製品と併せて不要になった古着を再構築したアイテムもつくる
⑤既存のファッションシーンの発表サイクル(SS/AWの年2回)に無理に合わせず、大量生産・大量廃棄のゲームには乗らない
昨今サスティナブルを打ち出したファッションブランドが増えていますが、デザインやパターンが均一的な特徴のないものが多く、自分で着たいと思うものが無かったことも、自分達で服を作ろうと思った大きなきっかけです。
自分がこれまで通過してきたカルチャーを咀嚼して、クラバーやパンクスが着れるようなパターンワークをしています。
特にこう着て欲しいというスタイルサンプルもありません。
『自分が着たいと思った物を共犯者にお裾分けする』くらいのテンションで作りました。
今回つくったもののように、基本的にはロゴなどの無い匿名性の高いアイテムを製造しますが、グラフィックアーティストや写真家とコラボしたアイテムも企画しています。
アーティストと、製品を量産してくれる職人さんにしっかりとフィーを払える座組みを作ります。
自分たちの着たいものをつくってシェアできる状態を継続できる状態を構築できればOKなスタンスなので、一般的に市場に出ている服より製造原価は高いです。全アイテム50%以上の製造原価で作りました。流通費用や広告費用を抜いてです。
アパレルでメシを食ってる人からしたらふざけんなと言われそうなバグり設定ですが、既存のゲームには乗らないと決めたので許してください。
僕は自分がリスペクトするデザイナー、アーティストと職人さんたちにクリエイションの対価が支払われればそれでミッションクリアなので。
今回つくった服の紹介
yr(ユル)という名前をつけました。ルーン文字のᛇに由来する名前で再生・再構築といった意味があります。
試作を重ねて仕上げた製品版は自分もdownyのライブで何回も着てみたり、普段使いの服としても毎日ガシガシ着ているのですか、全てのアイテムが素材に高級感があって着心地が良いです。
ハリのある素材感なのですが、着倒してヘタらせてもいい感じのシルエットになると思います。経年劣化させて育てたいです。
カットソーの量産は墨田区の斉利株式会社さんにお願いしました。(紹介したかったけどホームページの類が無かった。)
後継者が居ないようで、あと10年もしたら無くなってしまいそうな工房だけど、とりあえず職人のおっちゃんが生きてる間はずっと仕事をお願いできたらいいな。
細かい微調整に付き合っていただけて感謝しかないでです。
科学的原産地証明を可能としているニュージーランドのORITAIN社と紡績のイタリアALBINI社がパートナーシップを組み生産しているUSAオーガニックコットンを使用しました。
引き揃えて編まれた生地なので適度なハリがあり、肌に貼りつかず快適に着用できます。程よい肉感で洗濯してもへたりにくい素材です。
こちらのノースリーブシャツもSS Tシャツと同様の素材で仕上げました。
Tシャツと比較すると細身のシルエットでシャープな印象のアイテム。
MOCKNECK LS T-SHIRT | モックネック LS Tシャツ
GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)認証のインド産オーガニックコットンを使用。ハイゲージで編み立て、しなやかで上品な風合いながら度詰めにすることでタフさもあり、肌にまとわりつかず快適に着用いただけます。
緩みのあるモックネックデザインの長袖トップス。肌寒い日や日焼けを気にする日に活躍するアイテムです。前・後身頃と袖にカットソーアイテムではめずらしくダーツを取ることで、抜け感のあるシルエットになっています。
SWEAT LS T-SHIRT | ライトスウェット LS Tシャツ
裏のループが繊細な薄手のミニ裏毛素材を使用。環境配慮型の液体アンモニア加工を施すことにより、膨らみとストレッチ性があり綿100%ながらしっかりとしたキックバックが特徴の素材になっています。
柔らかくサラッとした素材なので、肌寒い日や日焼けを気にする日にも活躍するアイテムです。前・後身頃と袖にカットソーアイテムではめずらしくダーツを取ることで、抜け感を出しました。
あえて着丈を短めにしたので、太めのパンツともコーディネートしやすく、レイヤードしてもバランスが取りやすいアイテムです。
VEGAN LEATHER NECK STRAP | ヴィーガンレザー ネックストラップ
これは個人的に服以外で欲しいと思っていたものを作りました。
墨田区の革職人、Detour m-2の岡安さんにお願いして量産しました。
USBやライター、印鑑、リップスティックなど細長い形状の小物が収納出来るポーチが付いたネックストラップ。ストラップ部分は2段階の長さ調節が出来ます。
動物愛護だけではなく、プラスチック削減や化学薬品排除、畜産による温室効果ガス排出の低減などサスティナブルの観点でも注目を集めるヴィーガンレザーの中でも、耐久性に優れなめらかな質感が特徴のサボテンレザーを使用。ロゴ刻印部分のみ、職人さんのアトリエ内で出た破材をアップサイクルし使用しています。
メタルパーツはマットな質感が特徴のダールブラックでメッキがけを施しました。使い込むことで少しずつアタリが出るため、表情変化していく仕様です。
今後も随時ECサイトには自分が着たいものを更新していくので、是非チェックして欲しいです。
とはいえ結構お金使ったので
こんな感じでたくさんの人に協力いただきながら、自分が着たい服をつくる土台や環境をつくり始めました。
まだスタートではなく、この動きをずっと続けていこうと思っています。
次は古着を再構築した一点物のアイテムと、自分が好きなグラフィックアーティストとコラボしたアイテムを作ろうと思っています。
安価でしっかりと作られたものが巷にたくさんある中で、敢えて尖ったプロダクトを制作することで消費に 対する選択肢を増やすこと、国内での生産に対応してくださる職人さんやコラボレートするアーティスト へのフィーをしっかりとお支払いすることで、現在のアパレル産業の最大の問題である搾取の構造の解 消を目指しています。
とは言いつつ、尖りきった動きをしたのでガソリン(お金)結構使ってしまいました。全てのアイテムにこだわりを持って作ったので、是非チェックして買ってもらえると嬉しいです。
売上をガソリンにしてまた面白い動きができたら良いなと思います。
yrはスタイルサンプルも決まった着方もありません。
みなさんが好きなように着て、長く使ってもらえたら嬉しいです。
お問い合わせはInstagramでDMしていただければ返信しますので、気になることがあればなんでもメッセージください!!
ルックの撮影に協力してくれたカメラマンのマツモトダイスケ、モデルをやってくれたMars89とSAGOありがとう。
最高のミュージシャン,DJ,カメラマンと仕事できて幸せです。
最後に
このnoteに書いたことは主にファッションのことだけど、ファッションだけに留まらず全ての生活において『普通』とか『当たり前』みたいな価値観に縛られずに価値観をアップデートして、みんなで文化をつくっていきましょう。