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ライティングのコツ|「長文」編|7

前回の記事「ライティングのコツ|「長文」編|6」では、「構成力」についてお話しました。今回は例題をみながら、より構成力を高めるコツをお話したいと思います。

● 3)「構成力」を身につけよう|続編

まずは以下の文章を一度読んでみていただけますか?少々長くて恐縮ですが、いつもの例文のように、さほど読みづらくは書いてませんので…。

<例文>
今回は駅から徒歩5分程の地にあるパン屋「JAMSTORE」を紹介します。このお店は去年の秋にできたばかりで、まだ開店から一年経っていないのですが、とても盛況です。
店主の松本ひろしさん(44歳)は、元銀行員という異色の経歴。パン屋さんを開業することは長年の夢だったので、このお店をオープンさせるため、銀行員時代からいろんなお店を何年もかけて食べ歩き、試作や準備をかさねていたのだそうです。
実は昨年、息子さんが産まれたばかりの新米パパ。目の中に入れても痛くないという程、溺愛されていて、「早く僕の作った美味しいパンを食べて欲しいな」が最近の口癖です。

店内には20種類ものパンが並んでいますが、どれも即日完売。特に人気をよんでいるのは、水を一切使わずに、小麦粉とミルク、卵だけで仕上げた食パンです。この食パン目当てに朝の開店前から、列を作って並ぶお客様もいるほど。優しくて濃厚な味わいが人気の秘密です。その他にも米粉パン、塩パン、コーンパンなど、もちもち&ふわふわな食感のパンがたくさんラインナップ。老若男女問わず、たくさんのお客様がお店に足を運んでいます。

開業間もないにも関わらず、人気のパンを次々と生み出す店主の松本さん。一日4時間程度しか睡眠を取らず、パンの研究開発、製造に没頭しているのだとか。そこまでして、彼をパン作りに駆り立てる理由とはいったい何なのでしょう?

聞けば銀行員時代に知り合った、あるお客様の存在が彼を突き動かすといいます。そのお客様は、長年続いた老舗のパン屋さんでした。松本さんがまだ銀行員一年生の頃から銀行を辞めるまで、ずっと融資を担当した思い出深いお客様です。

老店主は長年、夫婦ふたりきりで店を切り盛りしてきましたが、ついには一昨年の夏、ご主人がもうパンを作れない身体になってしまったそうです。仕方なく閉店を決めた老店主。ただ残念なことに夫婦には、跡継ぎだけがいませんでした。「美味しいパンは作れたけど、跡継ぎは作れなかったよ」そう言って哀しそうな微笑みを浮かべた老店主のことが、松本さんはずっと頭から離れなかったといいます。「彼の意志を継ぎたい。」いつしか老店主の夢は、松本さんの夢へと変わっていったのです。

…はい、ここまで。冒頭からお疲れさまでした…。当然このお話はフィクションです(笑。
そもそもひとりの銀行マンが、一社の融資を長期間担当することって、あんまりないんじゃないだろうか?とか、夫婦二人だけの個人店舗に銀行からの融資なんてそんなにいるんだっけ?とか、そのあたりも含め。ちなみに私、マツモトヒロミはパン好きの44歳ではあります。

そんなことはさておき。ここで前回の記事でお伝えしたとおり、カテゴリー別にざっくり分けてみますね

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●「店の情報」…このお店のスペックです。業種、営業年数、店主のプロフィール、商品情報などですね。

●「繁盛の背景」…美味しいパンを作れている背景には何があるのか?なぜ繁盛店を作れたのか、など。店主がどんな風に努力してきたか。いまはどんな努力を続けているのか、などの情報です。

●「ハートフルな情報」
…店主と、ある老夫婦が長年コツコツ築き上げた信頼関係。その結果生まれた店主の印象的な言葉など、ですね。

ほかにもいろんな分け方があると思うんですが、いったんこの3つに情報を分けてみました。

さて、次は構成のStep1「誰に伝えるか」の作業です。(今回は先にStep2をやっちゃった格好になりますが…。)

例えば、独立を考えているサラリーマンに向けて。
彼らが読みそうな、ビジネス雑誌に投稿するコラム
と仮定して、この店の紹介文を書いてみましょうか。
条件は見出し30文字以内+本文400文字以内、としてみましょう。

<<開業1年足らずで繁盛店をつくった、デキる男の秘密とは?>>


昨秋オープンしたベーカリーショップ「JAMSTORE」は、開業から1年経っていないにも関わらず、とても盛況だ。店主の松本ひろしさん(43歳)は、元銀行員という異色の経歴。まったく違う畑へ転職した彼は、どのようにしてこの短期間で、繁盛店をつくりあげたのだろうか?
実は彼にとって、ベーカリーショップを開業することは長年の夢だったという。それゆえ開業前の銀行員時代から何年もかけて、日本全国さまざまな店のパンを食べ歩き、試作や準備をかさねてきた
開業したいまも尚、その努力に終わりはなく、一日4時間程度しか睡眠を取らずに、パンの研究開発・製造に没頭しているのだ。店内に並ぶ20種類ものパンはどれも即日完売。特に人気をよんでいるのが水を一切使わず、小麦粉とミルク、卵だけで仕上げた食パンだ。この食パン目当てに朝の開店前には、長蛇の列が出来るほど。やはりこれだけの繁盛店がうまれたその陰には並々ならぬ努力と、起業へのアツい情熱があった。

こんな感じでまとめてみました。ビジネス雑誌なので文体も少々固めに。
構成のStep3)「一番伝えたいこと」を決める、の作業をした上で書いた文章です。

ここで一番伝えたいのはやっぱり「繁盛の背景」ですよね。独立を考える読者にとって、やはり興味があるのは成功者がなにをしたのか、また今なおしているのか、です。

●見出し
一番伝えたいこと「繁盛の背景」を、デキる男の秘密、という表現でいれました。開業一年足らず、というネタも強い情報なので合わせて反映しました。

導入は「店の情報」を。
…「開業から1年未満で、人気店を作った人の話だよー」って先に伝えると、興味をもって読み進んでもらえるかしら、と考えました。

●メインに一番伝えたいことである、「繁盛の背景」を
…読者は見出しを見て『成功の秘訣はナニ??』と、興味を持って本文に進んでもらってるワケです。その期待には応えたいので、具体的に松本さんの行動を伝えました。
もっと文字数が許すなら、老夫婦との話を続けて書いたほうがいいんですけどね…。そのほうがより、記事のタイトルにある“秘密感”が増しますし。ただ今回は悩んだ結果、優先順位としては下げました。(入れたらダメ、という意味ではないです。)

ーーー

続いて、もうひとつ。
今度は、感動ストーリーが好きな女性に向けて。Facebookとかで以前よくあった「1分間のいい話」的な、投稿記事を書いてみました。
今回も条件は、見出し30文字以内+本文400文字以内、としてみましょう。

<<ある老人の願いを叶えた、優しいパン職人のお話>>

まだ開店から一年経っていないにも関わらず、とても人気のベーカリーショップ「JAMSTORE」。店主の松本さんは、元銀行員という異色の経歴です。聞けば一日4時間程しか睡眠を取らず、パンの研究開発・製造に没頭しているのだとか!ここまでパン作りに没頭する背景には、一人の年老いたパン職人との出会いがあったのです。

そのパン職人は、長年続いた老舗パン屋の店主でした。松本さんが銀行員時代、ずっと融資を担当した思い出深いお客様です。長年夫婦で店を切り盛りしてきた老店主。しかし遂には一昨年の夏、もうパンが作れない身体になってしまったそうです。閉店を決めた老店主。しかし夫婦には跡継ぎがいませんでした。

「美味しいパンは作れたけど、跡継ぎは作れなかったよ」

そう言って哀しい微笑みを浮かべた老店主のことが、忘れられなかった松本さん。「彼の意志を継ぎたい。」いつしか老店主の夢は、松本さんの夢へと変わっていったのです。

と、こんな感じです。
構成のStep3)「一番伝えたいこと」を決める、の作業で、選んだのは「ハートフルな情報」です。

店の情報も、繁盛の背景もいれてはいますが、最初の記事よりもサラッと書いてます。やはり見せ場は、老人の哀しい微笑みとともに呟いた一言なので。そこに至るまでに、老夫婦が長年頑張ってきたことや、跡継ぎがいない切ない事実をきちんと伝えておきたいですよね。

もう少し文字数をもらえるなら、こんな風にも続けたかったな、と思っています。

実は昨年、息子さんが産まれたばかりの新米パパ・松本さん。目の中に入れても痛くない程に溺愛中で、「早く僕のつくったパンを食べて欲しいな」が最近の口癖だとか。老夫婦が大切に守り続けたパンへの愛情は、次の世代へ確実に受け継がれていくことでしょう。

老夫婦から松本さんへ、松本さんからその子どもたちへ…。老夫婦が紡ぎたかったパンの歴史が、新しい世代に受け継がれていく様が表現出来るとよりいいなと思ったのです。
が、120文字オーバー。力及ばず、文字数制限内に収められなかったデス…。でも長文を書く上で結構大事なのが、このチカラだったりもします。

情報を削るチカラ

長文って毎回、「文字数」との戦いです。制限内でどこまで書けるか、何をいうか、そして何を削るか。

削ることで言いたいことが際立つことって多々あるし、むしろ削らないと言いたいことが埋もれてしまうことも多々ある。

今一度、元々の文章を読み直してみてください。ほぼふれてない話もありますよね?“その他にも米粉パン、塩パン、コーンパンなど”という、商品ラインナップの話とか。
最初の例題で入れることも考えたのですが、今回の記事で優先順位は低い、と考えました。文字数制限があったのも理由のひとつですが、他の店でもよく聞く情報なので珍しさはないかと。


と、いうワケで。

今回は例文を見ていただきながら、構成について考えてみました。
次回は、構成をする上で欠かせないもうひとつの要素についてお話ししますね。


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