見出し画像

空虚と描写 03

 なにやら得体の知れない英語のような記号の連なりが、白いスプレー塗料を用いて大きく書かれている、粗末な素材でできた青い壁の、その下に拡がる地面には、細い茎を持つ短い雑草がびっしりと生え、また張られた細いチェーンで仕切られている、道路に面した敷地との境界の、その両端には葉の大きな草も生えていて、つまり敷地の一面全体は柔らかな緑で覆われているから、そこには豊かな自然の生命力を感じ取れると言っていいのかもしれないが、しかしでもその敷地の真ん中あたりなどが、灰色と黒色の地面が剥き出しになって、露呈しているから、生命力の枯れた荒地に近づいているという印象も与えるようであり、その印象は、青い壁のその左上部の背後で、人間の身長を優に追い越すほどの高さにまで成長して垂れ下がってきていている植物や、また壁の背後にその姿を覗かせている立派な石垣なとどの対比によって、コンクリートの壁を持つ建物と、薄いクリーム色の壁にちょこんと銀色の換気扇が突き出している建物に挟まれた、このささやかな土地に注がれる視線が、もとより僅かでしかないであろうにもかかわらず、より貧相なものとして際立つように、思うものもあるだろうから、従ってその青い壁に書かれた文字が何を意味するのか、読み解こうと試みるものはいないに等しいと言っていいほどだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?