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空虚と描写 04

 これは、ひとつの敷地である。
 アスファルトで舗装されたこの敷地は、四角形に区切られ、外の土地と隔てられている。表面は、濃い黒の部分と、白っぽくなっている部分と、色彩に濃淡がある。
 手前の歩道とは、縁石によって、僅かな高低差を設けられて、区切られている。縁石沿いには、薄黄色の穂のついた雑草が、ところどころ生えている。縁石の下部に、僅かに生えている部分もあれば、上部に、かなり生い茂っている部分もある。雑草は、縁石の線上だけではなく、敷地を取り囲む境界線に生えている。そうでない部分もある。歩道の近くの一部分には、葉の細く長い雑草が、アスファルトから割れ目を作って突き破り、密集して生えている。
 正面の奥には、形の異なる窓を3つ持ち、クリーム色で塗装された壁の、小さな家屋が建っている。右手には、かなり低い縁石が敷いてあるのみだが、左手には、コンクリートブロックが詰まれた、高い塀がある。その塀には、いずれも薄茶色のシートを持つ、自転車が3台、立て掛けられていた。塀の向こう側には、木材や鉄パイプや梯子が集積されている。
 集められた資材置き場と、小屋のあいだからは、雲がわずかに浮かんだ青空が覗いている。空の下には、幾つかのビルと、樹々が見える。
 正面奥の小屋の屋根は、その隙間の空が見える左側の方へわずかに傾いている。屋根の上には、樹々の葉が覆いかぶさっていた。小屋の出入り口は、3つの窓のある壁側ではなく、屋根の傾斜とは反対の側面に、設けられている。出入口になっているドアの上部には、ささやかな庇がついている。そのドアの、アスファルトで舗装された敷地ではない方の側部には、また別のドアがあった。それは白色で、しかし辺りは鬱蒼した緑の林に囲まれているため、なんのためのドアなのか、にわかにはよくわからない。
 壁には、近隣の家の影になっている部分は除き、左上部周辺を中心に、強い陽の光が当たっている。

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