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空虚と描写・05

 その空き地は、フェンスによって周りを囲まれ、仕切られている。緑色に塗られた金属製のフェンスの、その網目の隙間は粗いから、内部の様子を確認することは容易だ。 といって、その空き地の上にあるのは、とりたてて言うほどのこともない。
 空き地の中央の部分には何もない。奥の壁際には、ほとんどガラクタに近いような板が立て掛けてある。それと背が低く、横に長い、用途のよくわからないが、しかしおそらくは工事のときに、人の往来を制限するために使うような、鉄製の器具が置いてあった。それくらいのものだ。
 フェンスの手前は歩道で、その歩道の反対側は、薄汚れた壁の家などで囲まれているのがわかる。
 とても広いというわけではないが、しかし決して狭くはない。そのほとんど何もない土地は、ふだんは資材置き場などに使われてでもいるのだろうか。いまは、アスファルトによって舗装された黒い表面が、ただ拡がっているだけだった。

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