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D2Cブランドの成長は終焉を迎える?

「盛り上がりのあとには一匙のアンチテーゼを」

自分の中ではこれがひとつのルールになっていて、そこから見えてくる本質を抽出して、ほかに応用していく。これが自分の思考パターンのひとつ。

とはいえ、あくまでネット上に散らばる情報を独自にキュレーションしているにすぎず、そこにプロの視点が介在しているわけではないので、これからこの記事を読む方にはそのあたりをご考慮いただきたい次第^^;

今日は、昨今の盛り上がりを見せていた「D2Cブーム」の陰りの部分に注目していきたいと思う。

D2Cは実のところ新しくはない

引用は下記の記事です。

要約すると、

D2Cの特徴①
中間を抜いて、高品質なものを割安で
→それって「SPA」と同じですよね?

1社で企画・製造から販売までを行う直接販売(specialty store retailer of private label apparel)によって、ニトリやGAP、JINS、ユニクロ、H&M、ZARAなどが存在している。

特に日本では「安くて高品質」はすでに当たり前なため、D2Cだからどうこうということはあまりないのでは、という指摘です。

D2Cの特徴②
SNSによるコミュニティ形成
→過去に古着屋業界ではポピュラーだった手法だといいます。個店ベースでショップを中心にコミュニティが形成され、口コミでショップの情報が回ることもよくありました、とのこと。

D2Cの特徴③
データドリブン
→店長が顧客の嗜好を理解して提案をするということははるか以前からオフラインではあるが行われていた、とあります。

ここまでの3つのポイントをまとめてみると、どれもすでにオフラインでは存在していたアプローチが「オンライン」というIT化によってアップデートされただけ、という趣旨なのかなと思いました。

おそらく言い分がわかれるとしたら、過去にオフラインで当たり前だったことがデジタルに置き換わったという部分に新しさ、アップデートの価値がある、と感じるか感じないか、なのかなと感じるところです。

引き続きまいりましょう。

ブランドのメディア化も新しくはない

ブランドのメディア化というのは、「ブランドが独自コンセプトの元、Webメディアを運用したり自社で雑誌を制作・出版し、ブランドの世界観を伝える役割を持たせている」ことを指しているという定義なのですが、これもかつてあったものがデジタルに置き換わったこと、

いわゆる『オウンドメディア』などを展開することと言えばひとまずわかりやすいのかなと思います。

先の記事の中でも、

ルイ・ヴィトンでは100年以上前にトランクに関するエッセイが出版されており、現在でもトラベルブックが刊行されています。

コム・デ・ギャルソンでは「Six」という自前のメディア(オリジナルカタログ)を1975~87年まで発行していました。

とありますし、究極のところ自前で発行している店舗の小冊子やフリーペーパーのようなものもすべてオウンドメディアです。

これらが、Podcastなどの音声サービスやWordPressや独自ドメインで運用するオウンドメディアに置き換わっただけ、という話にやはり落ち着きます。

その中で敷いて言及するのであれば、下記のnote にある「語るべきブランド」に対して変化が生まれている気はします。

もっとストーリーを語って欲しい。僕たちはストーリーを纏いたいんだ」という視点があれば、

背景とか意味とか、ちょっとシンドイこともある」という意見も一方であります。

その中で筆者の江森義信さんは、若かりし頃に初めて訪れたイタリアで、

街を歩く人達を眺めながら、そのカッコよさにあこがれ頭の中で音楽が流れ出して映画のワンシーンのように時間が止まっていたような感覚でした。

とあるように、目に焼きついた情景や空気感に圧倒され、そこに馴染める自分になるように、その世界観に溶け込める自分になるように服やアクセサリーを現地で購入したといいます。

その上で次のように語ります。

私も含めたつくり手側は、ブランドのストーリーやプロダクトのこだわりを語り過ぎず、説明しすぎないように我慢することで、ユーザーに想像してもらいワクワクしてもらえるような余白を残すことができるような発信をしていかなければならないと考えています。

この「余白」の設定こそがストーリーの醍醐味なのかもしれません。

そういった意味では、D2Cブランドのメディア化というのは、「北欧、暮らしの道具店」のように世界観、ライフスタイルを提案する語り口になっているという点では新しかったのかもしれません。

ただ現状、消費者たちはメーカーやブランド側の「つくられた世界観」に対して次にどのようなことを思うのか、が興味深いところです。

UGCなど、顧客との共創された世界観の創造…も行われていますし、でもだからといってそれが本当に「ストーリー」として最適なものなのかというと少しギモンです。

私たちは少なくとも、小説や映画のように「誰かの人生」を追体験することで、人生100年時代の中で何回も生きて生まれ変わります。

そこの創造主に自分が加わってしまったら、それはもう「誰かの人生」ではなく、「自分の人生」そのものであり、拡張された人生とは言えない気がしています。

そしてもうひとつ。

私は「aeruブランド」がすごく好きなのですが、一つひとつの商品に紐づけられた想いや背景、裏側を知りたいなって思うんです。

でもそれというのはもしかすると、株式会社和えるの矢島里佳社長やスタッフの方々が見ているものと「同じ景色」を見たいからにほかならないのかもしれません。

そして私は、このaeruブランドを最初は書籍で知り、そのあとにTEDなどの動画、そして各種インタビュー記事というように追っていきました。

「その人の(またはその人の思考や嗜好)に対してのファンだからこそ、同じ景色を見たいと思うし、ゆえにストーリーが知りたい」

もしかすると、こういった文脈がそこにはあるのかもしれません。

さて、最後にいよいよ、D2Cブランドの本当のイノベーションについて書いていきたいと思います。

売らない店舗、体験させる店舗の出現

深地雅也さんは自身のnote で次のように語っています。

D2Cの肝はブランドストーリーだとか、コミュニティ形成だとか、データドリブンだとか、そんなものでは一切無い。それらは以前から当然のようにあったし、Webによってわかりやすく可視化されたに過ぎない。D2C以降で一番変化が起こったと思われるのは「店舗の役割」ではないだろうか。

売るこをいちばんの目的としない店舗のあり方、ECありきの実店舗の設計について言及しています。

ポイントとしては、

・マネジメントコストが格段に下がった
・多店舗展開がもたらした弊害に対する一筋の光

と説明します。

売上アップのために店舗を増やすけれども、そこで実際に売上をあがるだけの力がある店長を育てるためのマネジメントコストが膨大で、そこに対して販売はECと割り切ることで、店舗の役割を「体験」と割り切ることができたのは大きい、というニュアンスです。

これまでは商品を「発見」→「体験」→「購入」の三段階を店舗で行っていたのを、「発見」「購入」はECサイトに任せ、「体験」のみを実店舗で行うという考え方かもしれない。

実際に海外での「体験店舗」の様子については下記のnote が参考になりそうです。

そして、「店舗メディア」という枠組みにおいては最所あさみさんがその分野のプロフェッショナルなのでnote に注目しておくのをお勧めします。

米国のD2Cブームに陰り?

アメリカのD2Cバブルに終焉に向かっているという話も引き続き引用したいなと思います。

下記の記事をご覧ください。

一方で、バブルやブームは終焉するものの、この流れは止められないという見方を取り入れておくのもひとつ。

ここで言われている「流れ」というのは、「何を買うかではなく、誰から買うか(from who)」を指しているように思えます。

こうした流れから、ブランドにそもそも「急成長は必要なのか?」という視点も重要な見方だなと感じさせられました。

下記、おなじみ最所あさみさんのnote からの引用です。

ここまでまとめてみた感想

そもそもなぜこの記事をnote に書こうかと思ったのか?

その理由は「テキストのこれからの役割」を発見するためでした。

音声、動画、デジタルテキスト、そして写真や画像。これらのメディアが相互補完されていく時代に、果たして自分が得意とする「テキスト」はどこまで貢献できるだろうか?

というのをD2Cの世界に見たかったのだと思います。

基本的には「長尺」でリニアな世界がこれからの私たちに豊かさをもたらすのではと考えているのですが、その「長尺」に耐えうることはそう簡単なことでありません。

特に長編になりそうな「動画」「音声」は、ファンであればコンテンツをクリックするものの、そうでなければ非常にハードルが高いものです。

そこに対して不可を少なめにしたテキストや、プチファンに対して届ける「長尺のテキスト」は、ストーリー世界にはまだまだ必要だと思います。

D2Cブランドの分野でもその役割を「雑誌」に持たせていますが、それはデジタルの場合だと簡単に離脱できてしまうからだと思います。

言い換えると、デジタルテキストには世界観を堪能させるまでの機能はもはやないのかもしれません。

そこを見極めあきらめるのか、それとも新たな第3の道をみつけるのか。

もう少しだけ探究の日々は続きそうですが、それでもここまで3,500文字以上からなるこの記事を読んでくださった読者の方に対しては、一筋の希望を感じています。

長尺コンテンツの重要性については下記の記事でまとめていますので、引き続きご覧いただければと思います。


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