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「ライカには空気が写る」と聞いたのでポートレートを撮ってみた件 -木村伊兵衛氏に捧ぐ-

こんにちは、あなたのココロのスキマ♡ライカでお埋めします、hirotographerです。新年最初のライカノートとなりますが、みなさまにおかれましてはお年玉なぞもマップカメラにブチ込んで素敵なフォトライフをお過ごしのこととお察しいたします。

「ライカには空気が写る」

さて年末から年明けにかけては冷え込みも続き、スッと身が引き締まるような空気に包まれておりましたが、「ライカには空気が写る」と最初に評したのは木村伊兵衛(きむらいへい)氏と記憶しております。
もちろんお名前や功績、写真は存じ上げておりますが、少し気になってインターネットの海に潜ってみた次第です。Let's エンタングル!
氏の言うライカが写す空気とはなんなのか?一体どうやったら写るのか?どんな映り方をするものなかのか?まずはみんなの外部拡張大脳皮質ことWikipediaをチェックです。

例の木村氏、失礼ながら顔写真を見ると気の抜けたポパイみたいな顔をしています。ほうれん草で元気になるタイプと言うか、むしろこの時期(冬)旬のちぢみほうれん草みたいなヘアスタイルをしています(甘みが最高に美味しい)。歯ごたえはありそうですし、これからの季節一層美味しくなる分期待が持てますね!

参考:ちぢみほうれん草

そして読み進めるとこんなエピソードがありました。


ニコンFの発表会に招かれての挨拶でも
「私はライカがあればそれで充分です」
と言って笑ったという(wikipedia:木村伊兵衛)

どうやら空気は写せるけど、空気は読めない(読まない)というスタンスの写真家のようです。特に女性ポートレートが得意だったとも書いてあるので、もしかするとそこに空気を写すヒントがもしかしたらあるのかもしれません。

というわけで、ライカでポートレートを撮ったら本当に空気が写るのか?
その謎を解明すべく、我々はアマゾンの奥地へ向かったのでその記録を残しておくことに決めました!!(唐突

ライカで空気を写すためのレシピ

ポートレートにモデルさんが必須、というのは思い込みでしかありませんが、ライカを持ったおっさんの鏡越しのセルフポートレートなんぞ誰もみたくないので公共の福祉に殉ずる形で私財を投げ打ち今回はモデルさんをお呼びしました。

モデルはロシア出身のアナスタシアさん、ワークショップやアパレルでも活躍中で、本人も写真を撮られるフォトグラファーでもあります。


これで美しく撮れなかったら国交問題になること間違いなし。熱々のボルシチを耳穴に注がれて、揚げたてのピロシキで左のほほを打たれたとしても右の頬を差し出してしまうほど、文句が言えない状況です。

さてちゃんとした検証となりますのでそのレシピも明記しておきましょう

カメラ: Leica M10-P(ドイツ製・ローン残あり)
レンズ:Summicron 50mm F2(ドイツ製・辛うじて一括購入)
SDカード:SanDisk 64GB SDXC Class10 Extreme(中国製・無期限保証)
モデル:アナスタシアさん(ロシア製)
撮影者:hirotographer(日本製)

カメラはLeica  M10-P、ご存知M型の最新鋭機。発売から2年以上経つとはいえ、フィルムライカの写した空気に挑むのであれば、これ以上ない選択でしょう。

レンズはSummicron 50mm F2。木村伊兵衛氏は50mmのSummilux一本、ということなので同じ画角を用意しました。予算の関係でSummiluxは用意できませんでしたので、F値1段分の差で空気が写る・写らないの違いが出てしまう可能性がありますが、伊兵衛氏は「ライカには」と言っているものの「Summiluxには」とは言っていないので全く問題ありません(断言。
中国製のメディアについては無期限保証がついているのでなんとかなるとして、撮影者に若干の不安を残す展開です。オラワクワクしてきたぞ。

新宿の空は青いか?

空気を写すとなれば、どこで撮るかも肝要です。検討に検討を重ねた結果、オフィスや都庁など都市機能を象徴する側面と歌舞伎町や横丁など怪しげな雰囲気の入り混じる混沌都市、新宿こそがこの空気を写す舞台にふさわしいと考えました(この間2秒)。
さあ空気を映すぞ!という意気込みで新宿を練り歩きながら撮影を続ける我々。果たして空気は写っているのか?撮影しては確認、を繰り返しますが、私のライカ M10-Pの背面液晶(3インチ103.68万ドット)では力不足なのか、チェック程度の目視ではちょっと確認できません。ただ、このときまでは私もこの感じで撮影を続けていけば光でも影でもなく、もしかしたら空気が写るのではないか?と心のどこかで思っていたことを覚えています。空気を映し出すためなら、Raw現像時に露出を4.0ポイントくらい持ち上げることだって厭わない、それくらいの意気込みです。

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その刹那、僕の刹那


シャッターを切るほどに募る不安と戦いながら、撮影も終盤に差し掛かったころです。次のスポットを探して二人で歩いていると、ふらふらと横を通り過ぎていくおじさんがいます。酒でも飲んでいるのか、それとも体調でも悪いのか気になって様子をうかがっていいたのですが、これぞまさに新宿っぽい状況です。
もしかして空気が映るのか?緊張感が高まります。

その刹那、そのおっさんが突如として立ち止まり、絶対にこちらには目線を合わせないまま、





ぶうぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーうーーーーーーーうぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーうーーーーーーーーーーーーーーーーーぅぅぅううゔゔゔゔーーーーーーーーーーーーーーッ



と体感5秒はあろうかというオナラを放ったのです。5秒はいいすぎじゃないか?と思われるでしょうが、間違いなく今まで聞いたことがないくらい長い長い・・・それは永遠に続くとすら思えた壮大なオナラ・テロでした。

「さすがに終わるだろ?」という脳内の疑問符すら吹き飛ばしながら最長不倒距離を更新し、K点を超えてもまだなお勢いを弱めることなく続くその放屁はジョン・コルトレーンのサックスの最初の音出しのようでありましたし、その後半にかけてのクレッシェンド(注※だんだん大きくの意)はさながらあの名作映画「2001年宇宙の旅」のオープニング曲の一節のようでもありました。
歴史に残るスペース・オペラ
オナラ。人類の創世の歴史が走馬灯のように巡る中、神は死にました。

この「いともたやすく行われるえげつない行為」に対して、私とアナスタシアさんは口をあんぐり開け(ただし、吸い込まないように細心の注意を払って)、眉間を歪ませたままお互いの顔を見合わせることしかできず、ただただ茫然と立ち尽くしていました。撮影の空気感が完全に壊れた瞬間です。
目の前でモーセが海を割ったらこんな感じになるんじゃないかと思うので読者のみなさまに置かれましてはなんとか想像を膨らましてもらい理解に努めていただきたいところです。

なお、過去には撮影中に鳥の糞がズボンを直撃し、さらに数年後にiPhoneの機能で追い打ちリマインドされるなどのハプニング↓はありましたが、さすがにここまで凍りつくような事態は初めてです。クリスマスイブ、の表示が泣けます。こんなプレゼントってある?ゲームボーイをサンタにお願いして、ボードゲームが朝枕元にあったことはありますが、それ以上の仕打ちです。

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果たして・・・

悲しきカメラマンの性-saga-でしょうか。おじさんが立ち去った後をすぐさまノーファインダーでシャッターを切ってみました。※正直に告白するとミラーのないライカのファインダー越しにみたら目にオナラが入ってきそうな気がして嫌だったのです。

しかしながら、どんなにRaw現像でハイライトを抑えても、シャドウを持ち上げてもそこに確かにモデルさんの姿はあれど、件のおじさんのオナラは写っていませんでした。

無論このような悲惨な状況で結果的に「ライカは空気感や湿度まで映し出す」という木村氏の言説が否定されることになろうとは私自身大変複雑な気持ちです。
「写真に写らなくてよかった」という安堵感を感じる反面、もしオナラが映し出せる世界線があるのであれば、あの時に戻ってF16に絞り、ND16のフィルターをつけて5秒間の長秒露光をちょっとだけ試すことを許してほしい・・・それくらいに複雑な気持ちです。エル・プサイ・コングルゥ!

ただ一つ、たとえ歴史にもWikipediaにも残ることはなくてもそこまでの執念でこの事実を検証・確認しようとしたたった一人の男がいたことを忘れないでいただけたらと切に願うばかりです。

結論:ライカに空気は写らない Q.E.D.ー証明終了ー


写る、写らないの話で言えば、デジタルになってから世に出回る写真が増えていくのと反比例して、心霊写真の類は大幅に減ってしまったようです。もちろん、本当に写っていたのかどうか、そもそも幽霊は映えない、などと多様な意見はあるとしてもはそういったカメラやレンズに、そしてフィルムに込められていた神秘性というものがデジタル化によって失われゆくことは少し寂しい気がします。スマホのカメラで撮られた写真が毎日大量のデータとなって飛び交うことで、写真が決して特別ではなく、ありふれたものになってしまったこともその一因でしょう。

「ライカには空気が写る」それはきっと、かつてカメラが神器であり、撮影が神話だった頃、カメラ・オブ・スクラという可能性に溢れたパンドラの箱に希望が宿っていた頃の物語だったのです。

ついに写真界の大御所も敵に回してしまいましたが、少しでもココロのスキマ♡埋まったな♡→❤️、と思ったら、フォロー、いいねして頂けると嬉しいです。Twitter(@hirotographer)も愉快にやっておりますのでそちらもぜひ。

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